久しぶりにホンダが凄いバイクを出しました。

その名もHAWK11。(→こちらスペシャルサイトです)

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(オッサン専用機とホンダが言い切るHAWK11。写真は全てホンダのスペシャルサイトから転載。)

最初に言っておきます。私はHAWK11メチャクチャいいと思う。現状ではデザインしかわかりませんが特にシルバー×ブラックは「私を殺しに来てるんじゃないか?」とすら感じる。

とにかく、このバイクにはビックリしました。だって大企業のホンダが「ロケットカウル専用設計」かつ「上がりかけたオッサン専用機体」という変態バイクを作ったんだから。「こんなバイクを出してくるとは、この海のリハクをもってしても・・・」って感じですよ。「ホンダ大丈夫か?」とか「ホンダは狂ったのか?」なんていう意見もありますけど、大丈夫です。だってこのバイクは

「ハナっから変態にしか売る気がない。」

このバイクにはスズキのような「売れると思ってフルスイングした結果、豪快に空振りしてしまった」系の香ばしさはありません。初手から非常に狭い変態層向けに企画した理詰めの変態バイクだから、開発陣は普通のライダーから何言われても痛くも痒くもない。これは

「皆でマ・クベの同人誌を作ろう!」

みたいな企画で、コンセプトが初手から斜め上なんですね。そりゃあ日本でしか売れないでしょうし、「壁サークルに俺はなる!」という野望もない。世界のマスマーケットで商売する大企業ホンダでこんな企画が通るのか?普通はまずOKが出ないはずなんです。

マクベ
(度々ブログでも出てくるのでおわかりかと思いますが、実は私はマ・クベ様の大ファン。マイナーメカを愛し、権謀術数に秀でる壺マニア。私の脳内では「キシリアドズルマ・クベ」でドロンボーbyジオンが結成されてるんですね。)

だからメディアや市場がどのような否定的見解を出そうとも、ホンダの開発陣はどこ吹く風。まさに暖簾に腕押し、糠に釘。こんな変態バイクを市販車として発売までこぎ着けた時点で開発陣は「勝った」と思っているでしょうから、既に勝利の余韻に浸ってますよ。

ちまたのバイク好きは、「おいぃぃいい!トンデモないもの出しやがって!正気か!!」という非常に常識的なコメントを寄せてるわけですが、売る側は「マ・クベ少佐がお好きな方の本でございます。刺さる人だけどうぞ」って言ってるわけです。だから全然噛み合わない。ただね。批判する人の気持ちは痛いほどわかるんですよ。だってほとんどの人が、「せっかくニューモデル出すんなら、もっと俺たちに刺さるバイクを出してくれ!俺たちの方を見てくれよ!!」って思うはずで、これは消費者として当然の心理でありましょう。

企業側も商品コケると誰かが責任取らなきゃならないから、普通は大衆ウケするコンサバティブなものしか作れないし、作らない。でもHAWK11は完全にこの常識の埒外にいます。え?売れなかったときの責任は誰が取るのかって?誰も取りませんよ。だって「最高責任者の後藤LPLはもう定年でいなくなってる」じゃないですか。そもそも発売日前に責任者が定年してるってなんなの?発表会で「責任者を出せ!!」っていわれても「責任者はぁ、もういまてんっ(幼児言葉)ってボケ倒すことができちゃうんです。

若手の開発者達に好き勝手にバイクを作らせ、市場の評価が出る頃には退職金もらって消えている。鮮やかすぎてぐうの音も出ない。発表会で「このバイクは神のように全権を掌握した後藤LPLの強権体制の下で作りました!」って吉田代行が言ってたようだけど、裏を返せば「自分たちは後藤LPLに従っただけです!何言ってもこの人は耳貸さなかったんです!だから責任は全部この人にあるんです!!」ってことですよね。もしそうなら数字が出れば、残った開発陣の手柄だし、数字が出なくてもそれはLPLの責任で、現開発陣のキャリアはまったく痛まない。この仕込みをして定年退職した後藤LPLを私は心の底から尊敬する。正体パトレイバーの後藤隊長なんじゃないの?

ホント、このバイクにはいろんな点でエニグマ感があります。だからとっても面白い。出てきた経緯が良くわからないんですよ。ホンダの社内でも賛否両論というか否定的な意見が多かったようですけど、普通社内で否定意見が多けりゃそんな商品出てこないでしょ。これ「ホンダの非主流派が上層部の弱み握って押し切ったバイクなんじゃないの?」なんて勘ぐっちゃう。

現在までの情報から、このバイクの特徴を並べてみましたけど、なかなかに凄い。

ロケットカウル専用デザイン

中身まるっとNT1100(基本アフリカツイン)

MTミッションオンリー

ターゲットは上がりのバイクを検討してるベテラン勢

速くない、でもちょっと速い


うぉおおおお!!販売上ポジティブなワードが一つもないぜ!最初からハードルアゲアゲで、踏み絵がそこら中にちりばめられてる。そもそも「上がりバイク」なんてキラーワードを上がりかけたおじいちゃん達に向けて放ったら、一部は過敏に反応するに決まってます。でもね。もうそこで「その人の人格が試されてる」んだと思うんですよ。「お前もう上がってるだろ?」っていわれてギャーギャー反発するんじゃなく、「ははは、そうね。そうかもね。俺もそんな歳かなぁ・・」とサラリと受け流せるくらいのレベルに達してる人じゃないと「このバイクはまだ早い」って開発陣に言われてるんです。

開発陣は裏ホンダなんて言ってますが、このバイクは裏ビデオと違い「18禁」じゃありません。18禁ならワクワク感が一杯ですけど、上がりのベテランライダー対象って、これはもう「50禁か60禁」なんですよ。「オィィィィイイイイ!!性欲枯れてる人間向けにどんなマニアックなプレイぶち込んできちゃったの?」ってツッコミたくなる。「50歳以下閲覧禁止」なんていうアダルトビデオがあったらどうですか?ヤバイでしょ?中に何が撮影されてるのか・・怖すぎて再生ボタンが押せないですよ。

だいたいガッツリ前傾のスポーツバイクで上がろうなんてのがそもそもおかしい。上がるんなら殿様乗りのネイキッドかツアラーかクルーザーでしょ?上がりにスポーツバイクを選択してる時点で、まだまだ攻めっ気がありますから、上がりなんてワードはオッサンが「このバイクを飄々と乗るための言い訳」にすぎない。

そしてキャッチがこれ。「速くない、でもちょっと速い。」って・・。あのね。これ125ccじゃないよね。排気量1100ccだよね。1100ccがちょっと速いってもう何考えてんの?こんなのヘビー級プロボクサーが「俺のパンチは痛くない。ほんのちょっと痛い」っていってるようなもんですよ。その言葉を信じて小兵が向かってったらボコボコにされますよ。しかも乗ってるのは80年代~90年代の生き残りでしょ?怖い。怖すぎる。

カタログ数値から見てもHAWK11が遅いわけがない。確かに心臓はスポーツユニットではなくアドベンチャーベースのパラツインだけど、この手のエンジンは下にトルク振ってるからアベレージスピードが低い領域から本領を発揮する。で、車重214㎏で102馬力、トルクは104Nmですよ。パワーウェイトレシオは2.10。トルクウェイトレシオ2.06。こんなもんタイトな峠でシゴき入れたらクソ速いに決まってる。これで「速くない、ちょっと速い」なんて言われたら、ゴールドウィングなんて「遅い!!クッソ遅い!!死ぬほど遅い!!!」になっちゃうでしょ。これは頭のおかしな人達がおかしな基準で作ったキャッチコピーですからマトモに受け取ってはいけません。

メカはまるっとNT1100。これを「流用じゃねーか!!」と非難する人もいるけれど、正しくは「カスタムベース車がNT1100」というべきでしょう。HAWK11はNT1100をフレームごと前傾させてキャスターを立たせ、前後サスの減衰設定とFI(フューエルインジェクション)設定と、エアクリーナー形状をイジっただけで、メカ的にはほぼ同じ。新規開発と言うには手を入れた部分が少なすぎ、あまりにもそのまんまです。ただ、これは当然で、ターゲット層が激狭なニッチコンセプトに「新規フレームとか新エンジンを用意しろ!」という方がどうかしてる。

潤沢な開発費なんてあるわけないから、開発陣は足回りの余裕度が高いNT1100をベースにして、峠仕様にメーカーチューンすることを考えたんだろうと思うんですよ。与えられた開発費をベテラン向けの乗り味の作り込みと、変態デザインに全振りしたってわけです。FRPのロケットカウルを採用したのも、裏の繊維をあえて見せてるのも「ニューモデルという名目ですが、実際はメーカーカスタムです」って言いたいんだと私は考えてる。MT一択なのも「戦いに一切の補助機能を求めないガチ古参兵向け」ってことなんでしょう。

さて、中身についてはこれくらいにして、ここからは、いよいよこのバイクの一番のトピックであるデザインに言及して参りたいと思います。これについてはもう、ちまたの意見は全無視でいいです。変態向けのロケットカウル専用マシンに常識的な意見はまったくもって意味がありません。だってロケットカウルなんて「デザインサイコー!!」って絶賛されていたとしても、実際の販売では「変態しか買わん」のですから。

近年では見事な造形だったBMWの「R nine T Racer」だって僅か2年でディスコン。量産性を上げようとロケットカウルを3分割にしたけど、それが面の平滑性と連続性を重視するロケットカウル変態に逆に刺さらなかったのかもしれない。昨年出たトライアンフのスピードトリプル1200RRも私的にはロケットカウルというより「普通のハーフカウルに丸目をつけた」って感じです。あれはおそらく確信犯で、トライアンフは「真性ロケットカウルじゃなくて、ロケットカウル風味の方が売れる」と判断したんだと思う。

ブログ用
(BMWとトライアンフのロケットカウル、古典風と現代風の対比になってますね。)

しかしこのHAWK11は違う。これは現代の技術で作られた、とてもとても見事な正統派ロケットカウルです。往年のロケットカウルのオマージュとは違い、現代造形のエッセンスも入ってるし、ヘッドライトの径とカウルの大きさのバランスも良く、FRP一体成形で切れ目のなく繋がる造形ラインはなだらかで面の平滑さも秀逸。塗装が綺麗でクリアは厚そうだし、野暮なビス穴も一切見あたらない。そしてスクリーンはコダワリの鋲留めですよ。これは素晴らしすぎるでしょう。

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(あまりにもオリジナリティにあふれる見事なロケットカウル。その美しさにはため息しか出ない。)

そんな変態ロケットカウルを愛でた後、ふと視線を移すと変な形のバックミラーが目に入る。「ミラーごときがロケットカウル様の邪魔をすることは許されぬ」とばかりにひん曲げられてますが、ステーの処理が「ポパイが鉄パイプを怪力で曲げました」みたいな強引さで笑う。オマエラどんだけロケットカウル推しなんだよ!って叫びたくなる。まさにこれは「天元突破ロケットカウル」。こんなのが発売されるなんて奇跡じゃない?これで乗り味良ければ私の中では完全無欠。優勝です。こんなマニアックな「シン・ロケットカウル」装着の1100ccバイクが139万円?私は安すぎると思うんだが・・。

多くの人はロケットカウル好きはレトロなバイクが好きなんだと思ってますよね?違いますから。少なくとも私はロケットカウルの流麗なラインと滑らかでつややかな面そのものに萌えてるんです。だからレトロとか今風とか全然関係ないんですよ。「おっぱいが好きです!」っての同じ。本能なんです。

後付けのロケットカウルやビキニカウルって「ある種の破壊衝動」に似てる。バランスのとれたデザインに圧倒的個性の造形物を取り付けて異形の存在にしたいんですね。もうね。カワサキのH2にだって「ロケットカウルつけちまえ!」ってことなんですよ。カワサキファンが「ヤメロォオオオ!やめてくれぇエェエエ!!!」って泣きわめいても関係ない。合体した姿がヘンであればあるほど「ロケットカウルが際立って最高なんじゃが~」って手を叩いて大喜びするわけですよ。でもこのバイクはロケットカウルにあわせて専用設計してるから、ロケットカウル装着のバイクとしてはとてもバランスがとれてます。

基本的に、この世ではロケットカウル専用設計のバイクを大枚はたいて選ぶのは「ロケットカウル大好き変態」以外に存在しません。だから一般人がなんと言おうと、ロケットカウルを採用するなら、この変態層に刺さらなければならない。しかし、そんな連中は当たり前なぞ望まない。こういう変態フェチ野郎は、気に食わなければ自分の美意識でパーツを勝手に替えてくから、開発陣もロケットカウルと金のかかるタンク以外は「皆さんのお好きにどうぞ」って投げっぱなしにしてきてる。このまま乗っても十分だけど、HAWK11同士でもリアカウル変更やマフラーで個性を出せるよう、後で交換しそうなところには、あえて抜きを入れてると思うんですね。





あまり長くなりすぎてもアレなんで、そろそろ結論に入ります。HAWK11とは一体いかなるものなのか?

変なお顔に、メカは汎用、古参兵向けチューニング。これはホンダが作った「ドアン・ザク」です。昔気質のLPLが、ガタガタの体になりながらも、なお走り続けようとする日本の変態古参兵のために作った優しい戦闘機。だからこそ、ロケットカウルと、MTオンリーと、日本専売を譲らなかったんだと思う。

ドアンザク
(ドアン叔父さんのザク。予算がなくて作画崩壊して鼻が長い。顔が変でも、性能は普通でも、ガタが来てても、武器がヒートホークだけでも、それは大したことじゃない。一体何のために戦い、何を守るのか。それが大切なんですね。)

私はホンダがこのバイクを長く売り続けることはないのではないか?と考えてます。このバイクはコンセプト的にビギナーを想定してないから、販売上は「このバイクを求める既存の顧客層に行き渡ったら生産終了」で差し支えないですし、生産を打ち切っても他のバイクで相当数のバックオーダー抱えてるから企業的にもまったく問題ない。そして何より、コンサバを拒絶した商品は「売れすぎないからこそ価値がある」んです。だからこれ、総販売台数が裏で決まってるバイクなんじゃないかと思うんですよ。

ちまたではいろいろ言われているようですが、私的には見た瞬間に最高で、商品企画を裏読みすると、ひと味もふた味も染みてくる素敵なバイクだと思ってます。乗り味がウリになってるから、乗ってみれば、おじいちゃんのブリーフのシミみたいに、またいろんなものが染み出してくることは間違いないと思うんだけど、それは現時点ではコメントできません。

HAWK11が小規模メーカーのバイクだったら何ら驚くことはない。しかしこのバイクはホンダから出たからこそ価値があるんです。巨大組織の中で、ニッチな主張を貫くことがいかに難しいか・・それを理解できるオジサン達には、このバイクのエニグマが割とすんなり受け入れられる気がする。

そういうところもまるっとひっくるめて、このバイク、私は凄く凄く好きなんですよね。


HAWK11-2-3+3
(相変わらず品性の欠片もないイラストで締め。ホンダさんごめんなさい(笑)HAWK11はロケットカウルと日本専用、ジジィ特化属性で、キャラが非常に濃いですね。)