今回はうちのきんつば嬢のリコールのお話です。3週間ほど前、ホンダドリームさんからお手紙が届いたんです。お手紙の内容はゴールドウィングのリコール。対象はマニュアルミッション車だけ。

Screenshot_20220717-163950(こちらがホンダホームページの不具合の内容とリコール対象範囲です。ウチのきんつば嬢は、まさに対象ど真ん中。)

で、ホームページでリコールの案内見たんですけど、これマニュアルミッションの販売最終年度だった2020年モデルが対象のようなんですね。で、台数がなんと、パンパカパーン62台!!

「少ねぇぇぇぇえええええええ!!」

ツアーと無印の合計数でこれですよ。2020年の日本の割り当て総数は500台くらいだったはずだから、マニュアルの比率は1割ちょっとしかない。どんだけマニュアル不人気なんじゃあ(笑)ホンダぁ!!ドリーム各店舗に押し込み販売してもっと売っとけよ(笑)。それにしてもMTがいかに忌み嫌われてるのかわかりますな。

これじゃMTモデルがこの年で廃止になったのもむべなるかな。「こんな少数派の変態達のためにリコールなんてどうもすいません。」となぜかこっちが謝ってしまいそうになります。

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(こちらがドリームから送られてきた通知。プログラム書き換えはバイク持ち込みで40分くらいかかるとのこと。)

それにしても、このリコールの中身がなんかよくわかんないですよね。「え?クラッチを切る?握り幅、小って?それって半クラじゃね?アクセル全閉にして半クラ当てたら、そりゃ場合によってはエンジンストールするでしょ?これがリコール?ワケわかんないんだけど・・!?」って感じですよ。

で、ドリームの店長に「あの、このリコールってどういう意味なの??」って聞いたんですよ。そしたら「あー・・ゴールドウィングってアクセル全閉でもエンジン回転が上がるアシストみたいなのがあるじゃないですか。あれがあるからアクセル全閉のままで発進したり、コントロールする人がいて、それでエンストするらしいです。その対策みたいですよ。」って返事でした。

確かにレギュラー入れてたときは、ニュートラルから1速入れるとこのアシストが入って「ブゥゥウウン」って回転が上がり、すっごく苦々しい思いしてたんですよね。私はクラッチ繋ぐときのアクセルに対する応答遅れが気になってハイオク入れるようになり、それ以降、この回転上昇も随分控えめになったんで、あまり気にならなくなりましたが、アシストが完全になくなったわけではありませんでした。(以前のブログではアシストが消えたって書いてましたが、ハイオク仕様にしても、まだ回転が上がることがあって、完全になくなってないことが後日確認できてます。)

関連ブログはこちら→「新型ゴールドウィングのお手軽スーパードーピング」

そもそも400㎏近い重量車であえてマニュアルを選ぶ変態層にはこんな回転アシストいりませんし、アシストが必要なビギナーこそ「正しい発進方法を覚えなきゃならない」ってのに・・・こんな機能におんぶに抱っこしてたらアシストないバイクに乗ったときに苦労することになりますよ。

アクセルが安心して繋げる回転域って排気量やバイクによっても様々だから、長年バイクに乗ってきた人は、エンジントルクの出を探りながらクラッチ繋ぐってことを無意識にやってる。じゃないと、バイク変わる度にエンストこくってことになっちゃいますから。マニュアル乗りとして経験を積みたければ、アシスト発進なんて邪魔なだけなんですね。

しかも、アシスト入れたら入れたで今度はエンストおこしてリコールって・・・。完全な裏目じゃないですか。ビギナーのためにアシスト入れて、ベテラン層に不興を買って、最後はリコール。そして、顧客呼びつけて時間も使うと。「ホントもう余計なことしないで!できるだけ素で提供して!!」っていいたい。

ドリーム店さんには、「自分の乗り方だと特に関係ないんで、このままでもいいです。重要保安部品のリコールでもないし、バイク持ち込むの面倒臭いんで」って伝えたんだけど、「リコールですからそういうわけにも・・」ってことでした。

「まったくもー、しょうがないなー、半日潰れるじゃん・・」なんてブツクサ言いながら、ドリーム店にリコール対応予約してプログラム書き換えてもらったんですよ。

で、どうなったのか?結論から申し上げますと、プログラム書き換えにより、この意味不明な発進アシスト機能は綺麗さっぱりなくなりました。でも制御プログラム変更で変わったのは、実はそこだけじゃなかったんです。

店から乗り出してアクセル開けた瞬間から、「え?なにこれ?なんか濃くなってない?」って感じたんですよ。以前は排ガス規制の影響なのか、アクセル開けた時の回り方に少々希薄燃焼感がありました。ひょっとしたら、それを補うためにホンダはアシストによるトルク補助を入れていたのかもしれないけど、今回アシストをなくす代わりに、混合気を少し濃くして、それにあわせて点火時期も調整したんじゃないでしょうか。回転上昇のフィールがシットリして、トルクもリコール前よりみっちり詰まり、アクセルの微細領域のコントロール性が明らかに上がってる。一言で言うと、エンジンの反応がアクセル操作に対してより緻密でナチュラルになってたんです。

旧型のゴールドウィングって、もの凄い巨体でありながら、走り出すと全てにおいてナチュラルなところが最大の美点だったんですが、SC79はその点でF6Bの領域まで達していませんでした。それをナントカしようと私は操作系を変えてみたり、ハイオク入れてみたりして、この1年半の間ああだこうだと試行錯誤を繰り返してきたわけだけど、それでも、なお先代の心洗われるようなナチュラルフィーリングには届いていなかった。

でも、今回のリコールによるプログラム書き換えで、クラッチ切って繋ぐときの回転あわせも、回転の上昇感もトルクの出方も、アクセルワイヤー使ってた頃のF6Bと比べて遜色ないものになったんです。「・・・これはえらいことになったんじゃないか・・・?」ってドキドキしながら、いつもの峠に持ち込んでツアーモードで走ってみたんですよ。

そしたらですね。コーナーを何個かクリアしてるうちに目の前がぼやけたんです。

私、いつの間にか泣いちゃってたんですよ。気持ちいいとか、扱いやすいとか、そういうものを超えた、美しいとしかいいようがないトルクの出に無意識に涙腺が決壊してたんですね。新車で購入して1万5千㎞。決してたどり着けないと諦めていた理想郷が突然目の前にあらわれたような、そんな気持ちになったんです。

過去のブログで先代のF6Bのエンジンに対しては「美しいトルクフィール」って言葉を使ったことがあったと思いますが、現行に乗り換えてからは多分使ってなかったと思う。SC79は先代のF6Bに比べて利便性は勝っていましたが、肝心な心臓は実用型になってしまったと私は感じてました。確かに下からもの凄いトルクはありましたが、そこには先代のエンジンにあった美しいトルクの艶はなかったんです。

バイクの世界には様々なエンジンがあり、どれも皆個性的で素晴らしい。単気筒はシンプルで爽やかかつ軽やか、2気筒にはトラクション感と味があり、3気筒はトルクデリバリーの安定感に優れ、4気筒は爽快にどこまでも吹け上がる。でも6気筒のトルクの艶は6気筒でしか出ないものです。優しくも力強く、シルクのようにつややかなトルクフィールが6気筒エンジン最大の持ち味なんですが、現行モデルのSC79は実用トルク型で、私は「これが時代の流れなんだな・・」と半ば諦めていました。

でも、リコールでプログラムを書き換えたSC79のエンジンの回転感には、先代のような艶があったんです。トルクを上積みし、フリクションを徹底して排除した現行エンジンに先代のような美しいトルクの艶が戻った結果どうなったのか。

もう芸術が爆発した。

私は6気筒が大好きで、車でもバイクも、好んで6気筒エンジンに乗ってきましたが、これまで乗った全ての6気筒エンジンの中で、プログラム書き換え後のSC79のエンジンがあらゆる意味で間違いなく最高峰です。アクセルにピタリと寄り添うように、とめどなく湧き上がってくるトルクフィールの美しさ。豊潤でトゲの全くない分厚いトルクが、優しく滑らかに一直線にどこまでも伸びていくこの感じ・・・。

6気筒以外では決して得られない、このトルクフィールを味わうために私はMTモデルを選んだわけですが、それにようやくホンダが応えてくれたんです。

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(リコール後のきんつば嬢のエンジンフィールは、私のバイクライフに差し込んだ一条の光でした。こんな感動は久しぶり。)

おそらく今回のリコールはMTモデルを購入してくれたオーナーへのホンダからの贈り物なんじゃないか?と思ってます。環境問題で多気筒エンジンが次々と消えていく今、これが私の所有する最後の6気筒エンジンになると思いますけど、それが今までで一番素晴らしいフィーリングなんて夢のよう。あーー、この喜びをどう表現したら良いのか!ちょっと言葉が見つかりません。

このプログラム書き換えによって数値的なものはまったく変わっていないはずです。でも、エンジンの感動値は、書き換え前と後ではまったくといっていいほど変わってしまった。HAWK11のキャッチコピーじゃないけど「機械のフィーリングの素晴らしさは数値とはまったく関係ない」って改めて感じる。そして公道バイクの感動は、出力ではなく最後は調律によって作られるのだということも・・。

熟成して完成度の高いものを求めるのなら末期モデルをじっくり待つのが一番いい。でもMTが途中廃番ってことになったSC79では末期モデルまで様子見することすらできませんでした。おそらく2020年にMTモデルを購入したオーナーの中には私と同じ考えで駆け込み購入した人が少なからずいたはずです。

そんな人達のためにホンダはMTモデルを2年越しで完成させてくれた。ハナからこの形でデリバリーしてくれれば何の問題もなかったんだけど、今となってはそんなことはどうでもいい。少なくとも、私はこれからこの素敵なエンジンと共に余生を送っていける。こんな殺伐とした世の中にオッサンのささやかな幸せがまた一つ増えたんです。しかもまったく予期しない形で。今はその幸せを静かに噛みしめたい。

ちなみにスポーツモードはというと、相変わらずトルクデリバリーが野生の猪みたいで、シャフトドライブという駆動系との相性がとっても悪いんで、あまり使ってません。ただ、アクセル開度が少ない領域でのコントロール性が上がったおかげで「これはこれで許せるかな・・」っていうレベルにはなってます。普通の操作を許容してくれるようになれば、スポーツモードは「ホンダと私の見解の違い」ということでまだ納得できる。以前は微細な領域でのレスポンスコントロールが乗り手の思うようにできませんでしたけど、今回のリコールで、とにもかくにも使えるようにはなりました。

エコノモードは、トルクが全体的に底上げされた結果、前よりさらに使い勝手が向上してます。ハイオクにしてから非力な感じはそもそもなかったんだけど、もう一段フレキシブルさが底上げされた感じ。もはや乗っててエコモード的な感じはまったくない。普段使いや街乗りなど、「気楽に、何も考えずに走りたい」ってときに、とりあえず入れておけばいいっていう万能感のあるモードになってます。

ツアーモードは先程述べたように、輝ける芸術作品になりました。このモードは以前は私の中で「お仕事モード」って位置づけだったんだけど、今はエンジントルクがツヤツヤと麗しく輝くモードになってますね。

いやー、それにしても今回のリコールは何気なく回した商店街の福引きで一等のグアム旅行が当たりました!くらいの大感動のサプライズでした。

リコール喰らって大喜びっていうのも、なんか変なんですけど、今回みたいに、劇的に感動値が改善するようなリコールなら私は大歓迎です。大ホンダ様がこんな場末のブログ見てるかわかんないけど、ゴールドウィングのいちオーナーとして、心から感謝したいと思います。



「ホンダさん、素敵なリコールをありがとう」





覚醒2
(結局、爺さんにとってのエンジンの素晴らしさって、パワーじゃないんですよね。絶対的なパワーには泣けないけど、パワーの出方には泣けるんです。数値ではなく、感動値を作り込むのが公道バイクの使命。そして高額のリッターバイクになればなるほど、その期待値は高くなります。メーカーにはそこらへんを理解して欲しい。)