ナイトスター乗ってきました。そろそろいろんな試乗報告が出てきてると思いますが、ほとんどがハーレーに忖度したあたりの良い評価記事なんでしょうから、プラスの評価はそちらを見て頂くとして、このブログはナイトスターに少々ネガティブな意見を書いたものになってます。そういうのあまり見たくないなぁという人は右上のバツマークをクリックでお願いします。ちなみに今回のブログは8000字超え。「長いブログはイヤなのじゃあ!」という人も即座にバツマークをクリックして下さい。

以下いろんなことがグダグダ書かれていますが、私はナイトスターというバイク自体を否定してるわけではありません。こういっちゃなんだけど、ナイトスターを試乗した印象はとても良かったんですよ。スポSに比べると「エントリーモデルらしく万人受けする乗り味になってるな~」って感じたし、なにより回してもスポSほど危なくない。「これから免許を取って大型バイクの世界に入ってくるビギナーに最適ではないか?」と思いました。

スポSって最初に出てきたから、あれが「スポーツスターの後継だ」なんて思ってる人もいるかもしれないけど、従来のスポーツスターとはとても比較できるようなシロモノじゃありません。だってガバッと開けると昔私の愛車だったVーMAXを彷彿とさせるような加速するんですよ。あのポジションのバイクとしては、超弩級レベルの加速性能といっても良いと思うんです。

旧スポスタは非常に平和で大型バイクへのエントリーとして最適でしたが、新型スポSはその逆でバイク経験の浅い人がいきなり乗るバイクとしてはあまりにも速すぎます。シャーシもハーレー風味というか「乗り手に迎合しない」ところがあるから、ある程度ライディングの基本ができてて、危機管理ができる人じゃないと私はおすすめしたくない。楽しいですけどね。

それに比べて、ナイトスターのエンジンは、回せばそれなりに速いけど、スピード的には妥当な範囲に収まってます。回り方にもかっちりした剛性感があって造りの良さは「さすが高いだけある」って感じさせるし、フロント19インチの採用で乗り味は素直。水冷になってハーレーのややこしい価値観ともおさらばしてるから、ガチの信者から一歩離れ、もっと気軽な感覚で「ハーレーとのスタイリッシュな日常を過ごしたい」って人には凄く良いと思うんですよね。ハーレー風味をより広く万人に提供していくってことを考えると、ナイトスターはとても良い按配の味付けになってると思うんですよ。

でも私は性能評価でバイクを語るテスターではなく、身銭を切ってバイクを買う消費者ですから。今回はハーレーを購入する側の一般消費者として、あえて厳しいことを書かせて貰います。結論を最初に申し上げますと、このナイトスターのプライスタグは188万円。しかし、

「この価格はハッキリいって高すぎる。」

そう、このナイトスターの最大の問題は価格。新発売のナイトスターは同じ水冷エンジンのスポSと比較すると異様に高い価格設定になってるんですよ。これはスポSとナイトスターを並べてスペックや装備品を比較してみれば、すぐに明らかになります。

スポーツスターS 
価格194万8100円


エンジン   
レボリューションMAX 1250T 
121馬力 最大トルク 125Nm 吸排気共に可変バルタイ機構あり

フロントサス 
43㎜倒立フォーク 
プリロード調整&減衰調整機構あり

リアサス   
リンクマウント式ピギーバックモノショック 
プリロード調整&減衰調整機構あり

装備     
クルーズコントロールあり



ナイトスター 
価格188万8700円


エンジン 
レボリューションMAX 975T 
89馬力、最大トルク96Nm、吸気側のみ可変バルタイ機構あり。

フロントサス 
41㎜正立フォーク プリロード調整、減衰調整機構共になし。

リアサス    
エマルジョン式ツインショック、プリロード調整のみ。

装備     
クルーズコントロールなし

どうですか?これで価格差僅か6万円ですよ。クルーズコントロールのあるなしを差額分と評価すればナイトスターの本体はスポースターSとほぼ同額ってことになる。エンジンの仕立や、取り付けられたパーツのグレードを見る限り、ハーレーがどのように取り繕おうが、誰が見ても「ナイトスターはスポーツスターSの下位モデル」ですよ。なのにほぼ同額ってどういうことよ??ちなみにストリートトリプルにもRSとSがあって、まさに今回と同様の手法で上位モデルと下位モデルに差がつけられてました。で、こちらは143万円と99万円でしたからね。その差額実に44万円。いかにナイトスターの価格がおかしいかわかるでしょ?

実車でナイトスターとスポSを比べると、さらにその差をリアルに感じることになります。一々あげつらうのはイヤなんですが、この際あえて比較してみた私の印象を書いときます。

まずメーター。スポSはフルカラーTFT液晶で、ナイトスターはアナログメーター&モノクロ液晶のハイブリッド。もうイグニッションオンのセレモニーの華やかな演出からして違う。ただし、これについては、アナログメーターにもクラシカルな雰囲気あるし、私みたいに液晶メーター好きじゃないライダーもいるから、どっちがいいとの評価は避けましょう。しかし、一般的にはTFTカラー液晶が採用されてるのが上位モデルという不文律がありますし、スポSはカラー液晶部分にスマホ連携でナビも表示でき、オーディオ操作もできるらしいので、発展性が全然違うのは理解しておくべきでしょう。

そこから操作系に目を移すとスイッチボックスまわりの密度も違う。ナイトスターにはクルーズコントロールやスマホとの連携機能がないから、スイッチがその分少ないんですね。別にスイッチごちゃごちゃしてればいいってもんじゃないんだけど、ボタンが増えれば見た目情報量が豊富になって高級感は上がるんです。スポSもナイトスターもスイッチボックス自体はプラ素材でベース質感が高いわけじゃないから、情報量がないと質感がガクンと下がっちゃうんですよ。

DSC_1867(ちょっとピンボケですが、こちらがスポSの右スイッチボックス)
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(こちらがナイトスターのスイッチボックス。実にシンプル。ハザード下のスイッチには本来なんらかの役割が与えられるはずですが、ノーマル状態ではそこが埋められてないのが悲しい。そういうところの詰めの甘さも下位モデル感を出してしまってる一因ですね。)

ナイトスターはフロントカウル取り付け部分のハメ込みプラパーツが剥き出しなのも気になるし、トップブリッジもかなり質素に仕上げてある。スポーツスターSが見た目質感が低下する要素をあえて見せないような凝った組み上げやパーツ形状にしてるのに対して、ナイトスターにはそういう配慮がないんですね。トップブリッジ上のサスの締め付け部分やステムネジが丸見えなので、どうしてもそれなりのバイクに見えてしまう。スポSはフロントサスにも減衰とプリロードの調整がついているからフォークトップの情報量も多く、その分見た目質感が高くなってるからナイトスターに比べて豪華さがあるんです。

そこから下に視線を移すとタンクが目に飛び込んできますが、ナイトスターはダミータンクなのに、通常であれば給油口があるところに樹脂のダミーカバーがついてるだけだから、その部分の質感が低い。「ダミータンクなら全部塗装にしちゃえばいいのに」と思うんだけど、わざわざ質感の低いカバーパーツを取り付けてるのは「このスペースでカスタムしてくれ」ってことなんでしょうね。スポSも似たようなもんだけど、給油口がダミーじゃない分質感がある。

エンジン周りもスポSの方が凝ってます。エンジンをガンメタとアンバーの2トーンにすることによって、色的情報量を増やし、エンジンを華やかに見せる工夫をしてる。エキパイもちょっとのっぺりしたシリンダー下部のスペースを埋めるように取り回し、エンジン周りのみっしり詰まった感を演出してますよね。これに対し、ナイトスターはエンジンも素でご提供って感は否めない。スポSに取り付けられてる塗装されたアンダーカウルもなく、マフラーの取り回しもスタンダードだから、エンジンまわりの情報密度も下がってる。エンジン左側に目を移すと、スポSについているラジエター冷却フィンのカバーがナイトスターではなぜか外され、フィンや配線が丸見えでこれまた質感低下の要因となってます。

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(スポSのエンジン周り。マジ格好いいんだが。アメリカンドラッガー好きな人ってこれ絶対好きでしょう。このバイクの鬼加速はV-MAXを彷彿とさせる。しかもこっちは止まりますからねぇ。)
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(ナイトスターのエンジン周りはスタンダードな造り。これから皆さんで手を入れて下さいねってバイクが言ってるかのようです。)
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(こちら左エンジン周り。注目はスポSはラジエターファンにカバーがついているところ。パンアメリカではこのファンから送られてくる熱風で左足がフライヤー調理状態だったんで、ここにカバーがついたのはマジありがたい。)
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(ちょっと角度は違いますが、ナイトスター。冷却ファンのカバーがないのがおわかり頂けるでしょうか?なんで後発バイクなのに重要な機能パーツをここで外したし?排気量小さいから熱くないと判断したのかもしれないけど、カバーないから配線が丸見えでこれも質感低下の原因になってます。)

リアセクションはさらにコストダウンが著しく、スイングアームはなぜここまであからさまに差別化したのか?って思うほど造形に差があります。スポSはとてもコストがかかったパイプフレーム溶接式スイングアームで、非常に見応えがある。ここだけでゾクゾクします。ベルトドライブの貼り調整部分もハイエンドな作りになってるし、プリロードも調整しやすいところにダイヤルがある。スイングアームの後端から延びるナンバーステーも溶接を駆使してパイプつなぎ合わせててて、「いやこれマジ金かかってるなぁ・・」って感心しますよ。

一方のナイトスターは、スポSで「マジ金かかってる」と感心した部分が全部ない。スイングアームはうちのダイナ嬢と同じ何の芸風もない角材で、調整部分も最もシンプルでコスト安な形状になってる。この構造は50ccのモンキーと同じですからね。ナンバーもリアフェンダー直付けでハーレーお決まりの処理。特段のスペシャル感はありません。

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(スポーツスターSのスペシャルなリア周り。こんなスイングアームをハーレーが採用するとは。この無駄にコストかけたナンバーステーもこれ見ながらご飯3杯いける。
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(スポSに比べてあまりに普通なリア周り。まさにハーレー安定の日常。ハーレーのバイクとしてはこっちが普通なんだろうけど、スポSのスペシャルなリア周りと比べるとコスト差は歴然。)

あとマフラーコストもかなり違うと思う。スポーツスターSは右太もものすぐ脇をマフラーが通るんだけど、断熱を徹底しててあまり熱くないんですよ。「なにこれ、どういうこと?凄くない?」ってくらいマフラーの排熱を殺してる。足の至近距離をエキパイが通ってるのに、ジーンズでも許容できる熱さです。一方のナイトスターはスポSに比べて随分無難なエキパイの取り回ししてるはずなんだけど、それなりに足に熱を感じちゃいますからね。試乗するとスポSのマフラー断熱の徹底ぶりを改めて再認識する結果になる。

ここまででおわかり頂けたと思いますけど、スポSは上から下まで「スペシャルモデルの造り」なんですよ。安っぽい部分を見せず、金のかかってるパーツ造形を存分に見せつけることによって情報量と質感を上げ、他メーカーとは異なる個性的なスタイリングで価格なりの価値をしっかりと演出しているんです。これに対してナイトスターは純粋に「エントリーモデルの造り」です。スタンダードでコストを抑えたシンプルイズベストな造りなんですよね。

私はこの手のコストダウンがダメって言ってるわけじゃないんです。どんな派生商品にもヒエラレルキーっていうものがありますから。エントリーモデルはコストを抑えて間口を広く、スペシャルモデルにはコストふんだんにかけて大向こうを唸らせる。そういう販売上の手法は当たり前だと思う。だからコストダウン自体を否定してるわけじゃない。ナイトスターの問題はスポーツスターSと比較したときに

あからさまにコストダウンしてるのが一目瞭然なのに価格が下がっていない

ことです。

私は常に「事業者は消費者に誠実であれ」って考えているんで、事業者がやることは「常に消費者の為にならなければならない」という信念があるんですよ。常に消費者利益のために商品を作る。その信念がなければ、企業が存続する意味などどこにもありません。だからコストダウンだって本来は「顧客のためにあるべきもの」なんです。コストダウンして価格を下げ、買いやすく質の良いものを広く提供する。それがコストダウンの真の意味であるべきだと私は考えてる。でも、ナイトスターは全然そうなってないんですよ。この仕立てで価格がスポSと実質同じ?それだとコストダウンした分の利益のほとんどは企業側に入るって構図になるけど、そういう理解でいいんですか?そこのところはどのようにお考えなのでしょうか?自信を持ってデリバリーされたようなんで、この価格設定の正当性について、野田社長のご意見を是非お聞かせ願いたいものです。

ウェブや雑誌の試乗インプレってバイクの性格や乗り味をメインで評価してるから、費用対効果の目線が薄い。だから読んでるとなんとなく誤魔化されちゃうかもしれないけど、どんなに印象が良かろうと、ナイトスターとスポーツスターSの間には「バイクにかけたコストの差」という超えられない壁がある。私の分析では、スポーツスターSを194万円とするなら、ナイトスターは150万円台くらいじゃないと商品としてのツジツマが合わない。にもかかわらずプライスタグは僅か6万円落ちの188万円。まったくもって理解できません。

私はハーレーに難しいことを突きつけてるつもりはないんです。「顧客の信頼を裏切らないような値つけをしてくれ」って言ってるだけなんですよ。今回のナイトスターはショールームでスポSの真横に並ぶバイクじゃないですか。試乗では多くの人が乗り比べもするでしょう。で、この2台をある程度経験のある人が比較したら、ナイトスターがスポSと比べ「おかしな価格設定になってる」のが一瞬でわかっちゃう。価格設定に不信感がでちゃうと試乗してどんなに乗り味が良くっても、消費者目線で「買いのバイクです」なんて言えなくなる。

ちまたのインプレでは多くの人が大メーカーであるハーレーに忖度して、この点大っぴらに指摘することなくスルーしてるのかもしれないけど、私は忖度なんてしませんよ。だから「価格に見合わないナイトスター買うんなら、スポS買っとけ」ってハッキリ言います。スポSはちょっと危ないくらい速いバイクだけど、こんだけ作りに差があるのに価格がほぼ同じってんならもうしょうがない。スポSをミッドコンにしてRAINモード入れっぱなしで「疑似ナイトスター」として乗りましょう。その名も「ナイトスポターS」。これは強い。

価格上昇4
(恐ろしすぎるカミングアウト。ちなみにゴールドウィングのカスタム費用はF6B時代もあわせて僅か7万円。ストリートトリプルRSに至っては購入後カスタムには1銭も使ってない。その一方でダイナはマフラーだけでも3回換えるという暴挙。ハーレーのカスタム沼はこれまでの費用を合計してはいけません。吐きますから。)

なお、この価格問題を除けばナイトスターはそれなりに良質なスタンダードバイクで、ハーレーのエントリーモデルとしては安心してどんな人にもお勧めできると思ってます。でも価格込みで考えたとき、ナイトスターを高く評価するわけにはいかない。この歪んだ価格を
「スポSより乗りやすいんだからいいでしょ?」ってことで曖昧にやり過ごしてしまうと、コストってなに?値付けってなに??ってことになってしまう。

これまでのハーレーは「長きにわたって守り続けてきた伝統文化のような空冷Vツイン」という定まった価値があったから、多少価格に疑問符がついても、他メーカーでは決して味わえない唯一性で押しきることができたんです。でも新生スポーツスターにはそういうものはありません。だから現代のバイクとして、他社と比べても勝負できるようなプライス設定をしなくてはならないはずです。でもナイトスターのプライスタグには「日本の消費者をナメてんのか?」っていう感想しかない。

ちなみに日本で人気があるローライダーSの281万円というプライスも大概です。今年これにフェアリングとリアのサドルバックついたローライダーSTが306万円で出て、あの装備後付けしようとすると、サドルバックで40万円、フェアリングで30万円くらいしそうだから、「僅か25万円の価格アップは明らかにバーゲンプライスだね」なんて言われてる。でもこれバーゲンでも何でもないですから。素のローライダーSが高すぎるだけですから。

利幅がよっぽどでかいのかハーレーもローライダーSをプッシュしまくってますが、これに対しては私は何も言いません。日本じゃローライダーのネームバリューで押しきることができるし、高いと思うなら買わなきゃいいだけ。その下にストリートボブっていう素敵なモデルもありますからね。

でもナイトスターは事情が違う。だってこれ、ハーレーのクルーザーのエントリーを担うモデルなんでしょ?エントリーモデルの条件はリーズナブルであることじゃないの?そんなモデルの価格設定に初手から疑問符がつくのは正直マズくない?

今後ナイトスターを購入する人は、スポーツスターSと比較したときの理解不能な装備の差分は「ハーレーのブランド代」だと思ってそれを飲み込んだ上で選択した方が良いと思います。でもねぇ。こんなのハーレーの奢りですよ。水冷エンジンにいらんブランド代乗っけて勝負できるんですか?だって、空冷エンジンの頃とは立場が逆転してるじゃないですか。水冷エンジンではハーレーは新参者で、国産メーカーの方がノウハウと歴史があるんだから。そして、ナイトスターのライバルとなる国産水冷アメリカンはヤマハのBOLTが95万円。レブル1100DCTが121万円です。

ナイトスター
(確かにナイトスターはロー&ロングで格好いいです。しかしレブル1100DCTとの価格差はなんと67万円。レブル購入してハンターカブ購入してもおつりが来ちゃう。それってどうなの?)

「古き良き秘伝の味の空冷Vツインではなく、ごく普通の水冷アメリカンにアナタは188万円が出せますか?」

「その横にほぼ同額でエンジンもサスもスペシャルで超弩級の加速性能を持つスポーツスターSが並んでますけど、そっちじゃなくていいんですか?」


それがナイトスターに対する私の正直な感想です。ハーレーにもいろいろと大人の事情があるのかもしれないけど、そんなの消費者である我々にはまったく関係ないし、私の目線は事業者に厳しく、消費者には優しくなので、このような結論にならざるをえない。対価というのは消費者である我々の血です。それを頂くためにはそれに見合う価値がなきゃいけない。ハーレージャパンさんにはそこんところ、今一度じっくり考えて頂きたいですね。