私はこれまで、このブログでストリートトリプルRS(愛称 ザラブさん)のことを絶賛してきました。ダメなところも書いてないわけじゃないけど、それは些細なことばかりで基本的にべた褒めしてきたと思ってます。

一方、ダイナやゴールドウィング(愛称 きんつばさん)に対しては、このブログで割とぶつくさ言ってるんで、「ちょっと不公平じゃないの?」と思ってる人もいるかもしれない。でもその前提条件には大きな違いがあって、絶賛してるからってザラブ嬢がダイナ嬢やきんつば嬢に比べて「バイクとして優れているのか?」っていうとそういうわけではないのです。私がヨイショばかりの記事を書いてるのにはそれなりの理由があるからなんですね。

褒めまくるってのは、裏を返せば「欠点を指摘してない」ってことなんですが、じゃあ欠点を指摘するとどうなるの?っていうと、もうどえらいことになる。だって、この手のスピードに全振りのガチ系スポーツバイクは、普段使い前提だとハナから欠点が多すぎるんです。

DSC_1782
(ストリートトリプルRSと夕日。私のホームコースは明け方には登山道に入る人や山菜採りの人がいたりするけど、日没1時間くらい前になると、人も車もいなくなり貸し切り状態になる。ガッツリ走って峠を下りる頃には沈む夕日が拝められて二度おいしい。)

ダイナやきんつばは私のバイクライフを1年通して支えることを前提に選択したバランス型の汎用バイクですから、基本的に何でもこなせるんです。荷物も運べるし、キャンプもできるし、遠出もできます。重いけど峠走れないわけじゃないし、2ケツだって快適。いろんなことをやれちゃうから、いろんなことをやらせるわけじゃないですか、でも何もかも完璧にできるバイクなんてこの世には存在しないから、不満も少しずつ出てくるわけですよね。これに対し、ザラブ嬢はガチのアスリートですから、日常用途での使い勝手なんかハナから激低なんですよ。

ダイナやきんつば嬢を前にして、ザラブ嬢でのロングツーリングを真面目にインプレしろなんて言われても、結論が明白すぎてやる意味ない。山本五十六じゃないですけど、「2時間や3時間は存分に暴れて見せましょう。しかし、5時間、6時間となるとまったく体がもちませぬ。」って回答になる。ヘタレと突っ込まれようが、それが強がることをやめたオジサンの冷静な情報分析なんです。

そもそもロンツーに行くっていったって、私がロンツーのお供にしてるガソリンストーブ使ったコーヒーセットがどこにも積めないじゃないですか。ツーリングバイクとして初手から大ゴケしてますよ。荷掛フックどころかシートカウルはつるっつるでどこにも引っかかるところがない。ふざけてんの?123馬力という過剰なパワーを持ちながら、荷物をまったく持とうとしない理不尽さよ。必然的に慢性肩こりのオッサンがコーヒーセット入りのリュックをかついで出陣するという、もの悲しい船出にならざるを得ない。

サスの突き上げは、まるで腰のストレス耐久性テストのように容赦なく、ポジションは私の弱点の首と肩をジワジワと浸食してくる。加えて足つき悪く、冷えにも弱い。つまり全般的に体に悪い。私は一度ザラブ嬢で300kmくらいの中距離ツーリングにチャレンジしたことがあるんですが、翌日は「サロンパスAのミイラ」みたいな姿となり、茶の間でツタンカーメンのように静かに横たわる羽目になりました。

走りも非常にコスト高。ワインディングの短期決戦では無敵の攻撃力をみせるスパコル様もロングツーリングでは見る影もない。このタイヤの最大の弱点は損耗の激しさですが、淡々と距離を稼ぐロングツーリングはこのスパコル様の弱点を確実に突いてくる消耗戦なんです。タイヤの本領をまったく発揮できないまま、消しゴムのように削れていく様は、バカな指揮官の下、無策で重火器の前に突撃を繰り返した旅順攻略のような空しさがある。スパコルで1日250㎞くらいツーリングしたときのタイヤコストはじくとざっと5000円。バカなの?死ぬの?ハイオク仕様で高回転型のエンジンは燃費も伸びず、ストリートトリプル乗ってると、「なぜ戦艦大和が遠洋に出撃できなかったのか」がよくわかります。

旅バイクとしてはそんなていたらくなのに、私が特に不満を述べてないのは「そういうバイクだと割り切ってる」からなんですね。これはどんなスポーツバイクでも同じで、特化型バイクってその点で評価の在り方が全然違う。SS系やガチ系スポーツバイクって、スポットライトの下でメチャクチャ輝く歌姫みたいなもんなんですよ。いうなればバイク界の「魔性の女」なんですよね。

90年代のドカなんて、その代表格みたいなもんでした。日常生活では冷却水の泡吹いたり、オーバーヒートでヘタレたり、イタリア製のポンコツ発電機(レギュレーター)がパンクしたりと、悪魔にでも憑かれてんのか?って思うほどの奇行を繰り返すわけですが、調子の良いときにワインディングに持ち込めば、日本車にはない、まばゆいばかりの輝きを放ったわけです。その輝きに魂を射貫かれると、私生活の乱れなんてどうでもよくなっちゃう。バイクにチャーム(魅了)の魔法をかけられて逆支配されてる状態になってしまうんですよ。

この魅了が完全にキマっちゃったオーナーは、どんなに酷い目に遭っても、札束握ってドカ嬢の握手会に並ぶようになるんです。私が奥多摩に通ってた頃は、事故ったり路肩に止まってる赤い大型バイクっていえば大概ドカティの900SSで、「ドカヤベェっす・・」ってイメージしかなかったけど、それでもドカ好きな人はずっとドカから離れない。

こういうバイクに魅了されちゃうと、どんだけ壊れたって「乗り手がベッタリケアして1万㎞ごとにフルメンテすれば壊れないから♡」とか、「壊れる?え?なにが悪いの?それだけ貢ぐ部分が増えるってことじゃないかぁ♡」って信じられないこと言うようになる。これって悪い女にカネ巻き上げられてる男の言動と何ら変わらないわけですよ。

でもスポーツバイクの魅力の本質が一番わかってるのは今も昔もドカティじゃないかと思う。この手のバイクにとって一番大事なこと。それは日常で手間がかからないことじゃない。大事なのは

「かけた手間や我慢に見合うだけの強烈な輝きを放ってくれるかどうか」

なんです。アニメや漫画でも普段はツンケンしてて毒舌三昧だけど、2人になると鬼デレになるヒロインの需要ってなくならないじゃないですか、SSもそれに似てますよ。

ザラブクズ5
(スポーツバイクって格好よくって色気がありますが、純度が高くなればなるほど日常生活ではダメバイクの度合いが増します。結局、この手のバイクを幸せに乗るには普段乗りの嫁バイクと2台持ちするのがベストじゃないかと思うんです。)

SSは一般道でノロノロと渋滞ハマってるときは股火鉢とキツイポジションで地獄のように厳しいけど、山奥で二人きりになって、デレまくった時の一体感と官能性は他の追従を許さない。で、高額になればなるほどその官能性は濃密になる傾向があるんですね。

私にとってこの手のバイクって、パーツの動作精度と情報密度(インフォメーション)の高さが重要なんですよ。公道の速さだけで語るなら他のカテゴリーでも十二分。だから速さだけを切り取って語り出すと、「所詮出せる速度の限界は皆変わんないんじゃね?」ってことになりかねない。でも同じ速度で走ってても、速さの質はバイクによって明確に違う。具体的には乗り手へのフィードバックのレベルにエッチの時にコンドームがあるかないか?くらいの大きな違いがあるんですよ。

私が乗り心地にぶつくさ言いつつ、寿命が短くコスト高のスパコルを選択し続けてるのは、グリップもさることながら、タイヤが路面に食いついているっていう情報の密度が高いからです。峠でそれなりに頑張って走ろうとすると、安全と危険の線引きを明確にするためにタイヤからの情報ってのは必要不可欠なものになる。その情報に濃厚さがないと私みたいなヘタレ野郎は安全マージンを削れないんですね。

初心者の頃はカタログの絶対性能を重視してバイク選びをしがちだけど、やがて公道じゃカタログスペックなんて絵に描いた餅で何の意味もないということがわかってきます。リッターバイクの能力なんて、どんなに技術があっても命削る領域に入らないと使い切れるものじゃないんですから。じゃあ高価なスポーツバイクは公道じゃ意味ないじゃん?っていうとそんなことない。機械モノはバイクに限らず機械式時計でも工具でもオーディオでもクルマでも、良いものになればなるほど感触が良くなるんです。カタログ性能は同じでも、コストバランスを重視して作った機械と、価格の高さを許容し、精密で手間とコストをかけたパーツで組んだ機械では、流してる時だって十分体感できるほど感触に差があるんですよ。そして、それはライディングの安心感や気持ちよさに直結する。どんだけ排気量がでかくても、パワーを出していたとしても、そこがしっかりしていない機械は大味な動きしかしないんですね。

スポーツ特化型のバイクはハイクォリティなパーツをこれでもかと奢り、刹那の領域での輝きを追い求める傾向にあります。その結果、ポジションがキツくなったり、経済性が最悪になったり、重度のメンテが必要になっちゃったりしても、ステージ上の魅力が突出していれば、そういう不都合を乗り手に全て押しつけることが許されているカテゴリーなんです。

私生活だらしなくて、性格キツくて、家事できなくても、「顔が良くってスタイル良くって、エッチが良ければいいじゃない!」って開き直ってるんですね。普通はそんなの「はぁ?エロい体とエッチだけ?女子力ゼロじゃん?」ってことになるんだけど、乗ってるライダー達を見回すと

「エロい体でエッチが気持ちいいなんて!もう最高なんだが!!」

って握りこぶし上下に振ってるバカばかり。彼らは推しのバイクが普段どんなにポンコツでも、街乗りでDVのような苦痛を味わおうともまったく気にしていないんです。週末のワインディングでの逢瀬のために、バイクはコストを惜しまず体を磨き、乗り手はワインディングでの一体感を純愛だと思い込む。そこにあるのは素敵な共依存。もはやつける薬はありません。だから、ガチのスポーツバイクはその強烈な輝きだけを語ればいい。わかりきった欠点をあげつらうようなインプレなんて不要なんですね(笑)