先般から海外の有名ブランドのビック・アドベンチャー「ドカティ・ムルティストラーダV4S」「BMW・R1250GS」「ハーレー・パンアメリカ」という3台の乗り比べ試乗記を書いてるんですが、これらの試乗を通して、私がビックアドベンチャーというカテゴリーについて感じたことをざっくり総括したいと思います。この総括、当初はパンアメリカのブログの最後に入れるつもりだったんですが、書いてるうちにまたまた長くなっちゃったんで、三度独立させました。結局この比較試乗ブログは四部構成の大作ってことになっちゃいました。短文が推奨される情報発信の世界で、長いを通り越してトータルで卒業論文クラスってどうなのよ?という素朴な疑問もありますが、これだけ書くとテキスト廃人の私をもってしても「出し切った」という達成感があります。浣腸2本くらい刺して宿便まで出た感じですね。

振り返ってみると、試乗自体はとても楽しかった。だって「ナニコレ?」とか「乗りにくいなぁ・・」ってバイクは一台もありませんでしたから。BMWは別にして、ドカやハーレーって大概クセが強いんですよ。でも不思議なことにアドベンチャーになると、なぜか「風味は残ってるけど、エグ味がない」って状態になる。

「あれれ??コイツらこんなマトモなバイク作るメーカーだったっけ?」って頭にハテナマークが出ますよ。どいつもこいつも「見た目は巨大怪獣だけど、中身は優しい賢者様」って感じになってるんです。「アンタ達、揃いも揃っていい人感を出しちゃって・・え?一体どうなっちゃたの?」って思いますけど、多分そうしないとビックアドベンチャーって成立しないカテゴリーなんだと思う。オンロード、オフロードのトータル性能を上げていこうとすると、あるべきところにあるべきパーツを配置するしかないし、上から下までどの回転域でも使え、なおかつタフなエンジンって一定の調教が要求されてくる。いろいろな才能をバランス良く伸ばそうとすると、バカは生まれようがないんですね。だからどうしても優等生的になっていくんです。

でもそれって、まるで人間みたいじゃないですか?若い頃はいろいろと尖っていたけど、長い人生でいろいろ経験して、多くの局面に対応できるようになると、人はだんだんとカドが取れて丸くなっていく。だからライダーは大人になると自然にアドベンチャーに惹かれていくのかもしれない。

で、今回の3台の中で一番印象が良かったバイクは何か??結論から申しますと「ムルティストラーダV4S」です。理由は乗ってて一番楽しかったから。快適さでいうとGS凄いんだけど、ムルティストラーダは快適さと楽しさのバランスレベルが高いと感じてます。ビックアドベンチャーって乗り手にとってワクワクするような冒険を想起させるバイクなんですが、乗るとみんな賢くて優しいんですね。でもその中でも楽しさの面で頭一つ抜けてたのがムルティストラーダV4Sだった。

ただムルティストラーダの問題は、前車追従のクルコンとか、ブラインドスポットモニター機構とか、もろもろが電子制御サスと抱き合わせになってしまってるんで価格がメチャ高いんですよ。電サス付きのGSと50万円くらい価格差があるんで、価格を考慮するとどうなのか?ってとこもあるけど、ハーレーの転売フォーティーエイトに300万円出すんなら絶対こっちだと思う。

ドカティ4
(こちらムルティストラーダ。こいつが一番っていうのは、私の個人的な嗜好と、アドベンチャーに対する割り切った考え方ゆえだと思う。)

アドベンチャーはとにかく矛盾だらけのカテゴリーです。ムルティストラーダは170馬力というスポーツバイクも裸足で逃げ出すハイパワーエンジン積んでますが、それと同時に前車追従型のクルーズコントロールなんかもウリにしてる。アドベンチャーってサーキット走るようなバイクじゃないから、170馬力は高速道路で使うしかない。馬力的にはあの車体でも200km/h台の後半までいけるパワーがあるわけなんですけど、クルコン使っちゃうと170馬力が死ぬし、170馬力を使うような走りをするならクルコンは使いどころがないんです。じゃあ峠を本気で攻めようかっていっても、オンオフ両用のトレールタイヤに170馬力叩きつければトラコン介入しまくるのは目に見えてる。私が見る限りパワーと用途が整合してないんですよね。200馬力級SSの中には、峠でちょっとアクセル開けるとトラコン介入しまくってフルパワーが使えないものもあると思いますが、用途的に使いどころのないハイパワーもそれと同じ。盛りすぎた馬力はスペックモンスターを生むだけなんですね。

矛盾といえば、重量級のビックアドベンチャーでぬかるみが多い日本の林道に乗り入れるってのも、「勇者の大冒険みたい」なものじゃないかって気がする。私みたいな特殊な技量を持たない一般ライダーからすると、「ミューの低い路面を食いつかないタイヤ履いて車重のあるバイクで走る」ってのは、オンロードであれオフロードであれ、あまり想像したくない事態なんですよね。オフ車って軽くてブロックタイヤ履いてるからこそ、路面気にせず果敢に未知の領域に入っていけるんですけど、この手のビックアドベンチャーは軽さがないし、ハイパワーを受け止めるためオンロード寄りのトレールタイヤ履くから、コケやすく、重さ故に「コケたら終わり感」も漂う。

私も初めての道が大好きなタチですから、ダイナでたま~に未知なる舗装林道に入ったりするんです。で、途中から舗装がなくなって砂利道になり、やがてそれがぬかるみになって「ぎゃぁあああああああ!!ひいいいぃぃぃいいいいいいい!!」ってなることがあります。もうね。道全部が「バナナの皮で埋め尽くされている」ような絶望的な気分になりますよ。なんとか悪路抜けると心底ホッとして「地獄から帰還したみたいな気分」になります。

私は所詮そのレベルの腰抜けですから、ハナからオフロード走行は諦めて、オンロードメインで見ちゃってたんですよね。オンロード性能が非常に高いムルティはその点でも有利だったといえます。「アホかぁぁぁあああああ!!オフロードを走らない奴にそもそもアドベンチャーをインプレする資格ないだろ!!」ってツッコミに対しては全速力で北北西に逃げ去ることで、その回答とさせていただきたいです。

ただ矛盾や過剰感があったとはいえ、私がビック・アドベンチャーに魅力を感じなかったかというと、むしろ逆なんですよね。試乗の結果、「ド田舎に住まうバイク乗りが選択するビックバイクとして、アドベンチャーカテゴリーは最高なのでは?」って感じたんです。

今回試乗した3台はいずれもサスにストロークがあって吸収性が高く、乗り味が柔らかい。その一方で、ヤワサスのネガであるノーズダイブ問題をセミアクティブサスやテレレバーでほぼ解消してるんですよ。もうね。柔らかくて乗り心地すこぶる良いのに、いざ減速時やコーナリングでは巧みな減衰調整で、しっかりと踏ん張ってくれる。「マジかよ・・・魔法か??」って思いますよ。ネガを潰したフカフカのロングストロークサスって「これもう優勝なんだが~!」って叫びたくなるほど快適なんです。

これはね。地方に行くほど刺さりますよ。だって「地方の道路舗装は年々悪化の一途」なんですから。都市部ではそんなことないのかもしれませんが、財政が苦しい地方自治体の市道や県道は、舗装のメンテができなくて年々路面の凸凹が酷くなってきてるんですよね。雪国の人はわかると思うんですけど、大雪降って除雪車が通るとアスファルトなんて陥没しちゃってデコボコですよ。で、それを毎年自治体がシコシコと復旧していくわけですけど、これがちゃんとできてない。昔は良かったんです。自治体にもそれなりに予算があったから。でも昨今は自治体にも勝ち組、負け組が出てきていて、特に石川県は19ある市町のうち、9つが消滅可能性都市ですからね。

一昔前は路面がある程度荒れるとアスファルト剥がして綺麗に再舗装していたところも、とりあえず穴が開いたり陥没したところだけにアスファルトをスポット的に盛る簡易補修で誤魔化してる。昔ダイナで快適に走れた道も、今は、「うわ~路面悪くなったなぁ・・」ってブツクサ言うことが多くなってるんですよね。

その点、ガレ場の衝撃ですら吸収するサスストロークを持つビック・アドベンチャーは舗装路面がどんなに荒れようと、そのほとんどを吸収するはずなんですよ。オフロード走行ではネガしかない車重や大パワーもオンロードでは安定と乗り心地の良さと走りの余裕にメッチャ効くし、外付けの無骨な箱バニアに荷物も山ほど積めるし、ぬかるみは厳しいけどキャンプ場までのフラットダート程度ならモノともしないしで、私みたいにたまにソロキャンをする人間は「はわわわ・・コレ無敵・・」って感じちゃう。

GS4
(GS嬢の一枚絵。一番気合い入ってるかもしれない。やっぱり一枚絵がないと不公平ですよね。)

このようにセミアクティブサスをオゴったビック・アドベンチャーは、オンロードバイクとしてみれば「バイク界において最高の乗り心地を提供できるカテゴリー」なんです。だからね。乗っちゃうとすっごく欲しくなるんですよ。ストロークをたっぷりとった極上の乗り心地とセミアクティブサスをフル活用した運動性のバランスは一度味わうとちょっと離れがたい。これ車でいうとクラウン・ロイヤルサルーン爺」ですよ。普通なら「ついにお父さんもこんなの乗るようになったんだね。糖尿病だね。加齢臭だね。」って子供に言われかねないですが、アドベンチャーなら、そんな軟弱なイメージは一切もたれなくて済むんです。

「オレの中には熱き冒険心が燃えてるぜ!!」って一見若者らしい覇気を滾らせながら、実際はバイクの上で半笑いになってヨダレ垂らしてる。こんなのまるで「装甲騎兵ボトムズ」という店名を掲げた「高級ソープランドですよ。建前的にはハードボイルドメカ路線を装いつつも、乗ってる時間の9割方は快楽スケベ椅子に座ってトロけていられるんです。こんなの人気出るに決まってるでしょ。

GSはその点、まだ真面目で本物志向だけど、ムルティストラーダは、「アドベンチャーの本質はそういうものである」ってことを完全に見切ってる気がする。そういう意味ではパンアメリカともGSともちょっと違う。アドベンチャーと言いつつ、その本質は「ドカティが提供する最高級アミューズメント・バイク」なんですね。快適性、高性能、楽しさ、安全性、デザイン性、最先端の運転支援そして泥遊びまで、全部盛っちゃうとこうなりまーす!っていう実にアッケカランとしたバイクなんです。「矛盾があってもいいんです。コンセプトはトッピング全部盛りなんですから~」ってことなんですね。

でも「高額商品がどうあるべきか?」ってのを一番わかってるのはドカティなんだと思う。高額なモノって裏を返せば「貧乏くささの排除」なんですよ。ハイプライスのものを買うのなら、誰も貧乏くさい思いはしたくない。だからゴールドウィングは私の箱なしMTは全然売れず、トップグレードばかり売れるし、ハーレーのCVOみたいなハイグレードをさらに特別仕立てにしたみたいなバイクが完売する。価格と性能のバランスがとれている中価格帯までは性能勝負になるんですが、常識を越えるようなプライスの世界は、結局「顧客にその価格に見合う満足感をどう与えるの?」っていう勝負になるんですね。

そこでは公道で使い切れない馬力も豪華さを彩る要素として極めて有効なんです。どうせ使い切れないのなら、そこに整合性なんてなくていいんだから。そんな振り切った領域では、勝負はキャバのオネーチャンの化粧と同じで「盛ったもん勝ち」になるわけです。車なんて高価格帯はほとんどこれ。だから、「バイクに300万円も出してくれる人のために、盛るだけ盛っていきましょー!!」っていう考え方はある意味で非常に正しいんですよ。

アドベンチャーっていうのは実はこの全部盛り路線でブチアゲ状態なんです。なんせ素で乗り心地良いところ持ってきて、何でもアリで装備盛りまくれるんだから。既にオンオフ両用っていう矛盾を許容しちゃってるカテゴリーだから、アドベンチャーはこうじゃなきゃならないなんて難しい縛りはない。矛盾を加速させるようなハイパワー&豪華装備をぶち込んだって、もう今更。車体もコンパクトにする必要ないからスペースもある。もうね。「ええじゃないか、ええじゃないか」であれもこれも盛っていけるんです。しかもイメージはストイックなガチ路線系を維持したままで。それは例えるなら、コックピットに快楽おもてなしサービスを満載した超高級スコープドック。ツアラーやクルーザー乗りからすると「そんなのずるい~反則じゃぁ~~」って思う。

GSなんかはマニア勢が多くて、そういう安易な「ええじゃないか路線」はやりにくいんでしょうけど、ムルティはアドベンチャーの「高級バイクとしての可能性」にとっくに気づいてる。そして、その特異性をフル活用して魅力をかさ上げしてるんですね。

ということで、今回は世界3大ビック・アドベンチャーの試乗を通じて、アドベンチャーバイクの快適性と商品力をまざまざと見せつけられた感じになりました。いやーお腹いっぱいです。

次回からはダイナ、きんつば、ザラブを題材にしたフツーのブログに戻ります。皆様、長い長い試乗インプレにお付き合い頂き誠に有り難うございました。

3台の戦い4
(酒場でいがみ合う3台。今回は1ブログにイラスト3枚という大盤振る舞いでした。例年ゴールデンウィーク期間中に書きためてたブログはイラストが多めになるんですが、今回ほど豪華なのは初かもしれない。)