今回はSC79ゴールドウィングのスポーツモードのお話です。SC79にはモードセレクトで、レイン、エコノ、ツアー、スポーツと4つのモードが入ってるんですが、現状私はエコノとツアーしか使ってません。一人乗りの時は7割エコノで3割ツアー、ツアーは一人乗りの時は実質スポーツモードとして使用し、聖帝(←妻のことです)様をお乗せするときには、バカトルクで荷馬車用途として選択してる。スポーツとレインってほとんど使ってないし、私は過去のインプレでこのスポーツモードをクソミソにけなしちゃってるんですよね。

なんでかっていうと、ぶっちゃけアクセル開度に対するパワーの出方がおかしいから。市販バイクに電制スロットルが採用されたあたりから、出力特性に違和感を感じるバイクがちょくちょく報告されるようになってる気がする。

ちなみに私のドンツキの定義って「自分がアクセルを空けた時に自分の感覚以上に加速をしてしまうこと」です。少ししか開けてないのに二次曲線的にグワワワって勝手にパワーが出てきたり、丁寧に開けてるのに、それでも意味不明にドンと出たりするとか、そんな奴。たまにカミソリレスポンスのことをドンツキっていう人もいるようだけど、これは私にとってドンツキではありません。開けた時に出すぎるという状態が問題なんです。

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(今週の日曜日は快晴だったので、久しぶりに能登へ行ってきました。バイクも車もまだ少なくって、全域快走路って感じでしたね。)

で、SC79のスポーツモードって変態嗜好の私をもってしても許せないくらいの違和感だったんですよね。「こいつ俺を振り落とそうとしてんのか?」ってくらいアクセル開度と出力の間にズレがあったんです。スポーツモードだとバイクがとにかく暴れちゃうんですね。

ガバ開けはどうでもいいんですよ。ガバッと開ければガバッと出るに決まってるんだから、どう出ようとも許せるんです。でもジワッと開けた時のマナーが良くないバイクってどうにもならないんですよね。キャブの頃はアクセル開けるとワイヤーで繋がってるスロットルバルブが開いて、空気の流量が増え、それが負圧バルブを押し上げて、ガスが混ざって爆発力が上がるっていう仕組みだったんで、アクセル開けてからエンジンパワーが出てくるまでに自然の摂理があったんですよ。だから変な加速するバイクなんてほとんどなかったんです。でもインジェクションで空気の流量に関係なく強制的にガスが吹けるようになり、電スロでスロットルバルブの開度もコンピューター制御できるようになってきて、出力特性をメーカー側が自由に味付けできる時代になった頃からおかしくなってきた。

電スロを鳴り物入りで導入した以上メーカー側も「これが電制スロットルを採用したバイクなのよ!」っていうインパクトが欲しい。そのためこの手の最新技術の導入当初は過剰演出が多くなるってのは、販売上のお約束でもあるんです。

その一方で、トラコンもABSもない頃からカックンブレーキのハイパワーバイク乗って、公道でなんとか生きのびてきた私のような古くさいバイク乗りは、どんなにパニックになっても初期入力だけは絶対に乱暴にやらない。だってこれがコケるモトだから。

ビギナーの頃は危険が迫ってパニックになるとガツンとブレーキかけちゃう。困ったことに反射神経良い人ほど体がそう反応するんですよね。で、昔のカックンブレーキでこれやるとステーンと握りゴケするんですよ。握りゴケの「ロックした瞬間に訳もわからずコケる」感覚は切ないですよー。滑りゴケと違って走馬灯がよぎる暇もないですから。五体投地しながら、バイクのカウルが割れる音を聞き、「んにゃああああ!理不尽ーー!!」って心で泣くだけ。私はそれを繰り返してブレーキのかけ方を覚えましたです。はい。

アクセルだってウィリーコントロールがない頃のリッターバイクはパワーバンド前で乱暴に開けるとフロントが一気に上がってバックドロップになったり、フロント荷重なくなって制御不能になったあげく、流星のように突進する科学忍法火の鳥と化して惨事を巻き起こしてました。

ちなみに私が乗ったことのある中で一番フロントが簡単に浮くバイクはカワサキのマッハⅢでしたね。マッハはいろいろと伝説があるみたいですが、交差点で発進して普通にアクセル開けるとフロントがフワワって浮いちゃうんです。2スト特有の二次曲線トルクが交差点の発進速度レベルから一気に立ち上がるとこもってきて、重心もリア寄りで、もう浮くように造ってあるとしか思えない。フロントってバイクによってはこんな簡単に上がるのね、こんなバイク売ったらダメだよね。って、悪い意味ですっごく印象に残ってます。でもバイクって優等生よりインパクトを受けたものばかり記憶に残ってるから不思議ですね。

ちなみに意図せずフロントがズバッっと上がって「うひゃあ」となってるときって、アクセル戻すって案外できないもんなんですよ。当然ながらフロントのブレーキ握ったところでまったくの無意味。ここにおいてリアブレーキ踏むクセのない人は、そのままフロント上げて突っ込んでいくという「ライダーブレイク」になるか、そのまま「ピンコ立ちしてバックドロップ」になっちゃうんですよね。

(youtubeからGSX-R750のピンコ立ち動画。豪快すぎる転倒で廃車確実ですが、ウィリーコントロールなんてついてない昔の大型バイクはアクセルを乱暴に開けると簡単にこうなったんですね。事故動画は見たくないって人はスルーして下さい。)

ちなみに「ライダーブレイク」ってのはスカイライダーの得意技。スカイライダーは仮面ライダーシリーズの中で珍しく「バイクで轢き殺す」っていう修羅道を突き進んでおりまして、多方面から「ひき逃げ実行犯」と揶揄されておりましたが、私自身は「仮面ライダーたるものバイクで轢かなくてどうする!!」と大いに盛り上がったクチです。しかし、一般ライダーが公道で炸裂させる意図せぬライダーブレイクは、エンタメ性は髙いけれども、自身を危険にさらすだけの自爆行為に他ならない。

このような惨事を防止するため、昔の大馬力バイクにおいてなによりも大事だったのは初期入力のデリケートさだったわけです。だからこそ右手をひねったときに、バイクが自分の意図せぬ動きをするのは非常に困る。

ドンツキのダメなところは単純に微妙な出力の調整がしづらいってのと、「自分が手綱を握らせてもらってない」って気がするところです。バイクの中に小人さんがいて、それが私の命令で薪をくべてる感じ。エンジンってシリンダーの中で、たき火燃やしてるみたいなもんなんですけど、昔は火力調節のキモである空気量を乗り手がスロットルバルブを開け閉めすることで直接コントロールしてたので「自分がバイクの手綱を握ってる」って感じがしたんですよ。

でも、電子制御スロットルになって、コンピューターで全てが制御されるようになって、昔だったらありえないようなスロットル特性のバイクが出てきた気がする。電スロ自体は悪いことじゃないんです。スロットルも軽くなったし、いろんなラグも排除された。でも、困ったことに、「メーカー側で変な演出を入れこむことができるようになっちゃった」んです。別に演出してもらうのはいいんだけど、演出によってスロットル特性が乗り手の感性からズレちゃうと、楽しさがスポイルされてしまうんですね。念押ししときますけど、私は「演出が悪い」といってるんじゃないですよ。演出することによって、乗り手が楽しめないほどの違和感が出ちゃうのがマズイっていってるんです。

で、私のSC79のスポーツモードはこの違和感が特に酷かったんですね。レスポンスが唐突で、なおかつ吹けすぎる。私は6気筒が好きすぎる男なので、あえてマニュアル選んだんですが、クラッチ繋ぐときって一瞬アクセル閉じて回転落とし、繋ぐ際にクッとアクセル開けて回転あわせして繋ぐじゃないですか。その数㎜の僅かな開度で「ギョワンッ」と吹けちゃって回転があわないんですよ。しょうがないから半クラ使って上がりすぎた回転拾いに行くんだけど、クラッチに無理をかけてるのがわかるから全然気持ちよくない。ストレス溜まるだけ。

DCTなら常時次のギアが噛み合ってるから問題ないのかもしれないけど、マニュアルだとこんなの困るわけです。私は30年近く大型バイクに乗ってきたけど、こんなメチャクチャなスロットル設定のバイク乗ったことなかったですね。

こんだけ乱暴なスロットル設定ですと、シャフトドライブにもストレスがかかる。ちょっと開けただけで、ガツンと出るから、シャフトのギアがガキッと噛み合って駆動系が「痛い!」っていってるのがわかる。これはいたたまれない。私から見ると、このスポーツモードはゴールドウィングのイメージである優雅で力強い走りにはほど遠く、どんなに丁寧に扱っても乱暴運転の初心者みたいな「ドンガチャな走り」に終始するどうにもならんモードだったわけです。

きんつば発狂8(今回は初期のSC79の各モードのイメージをイラストにしてみました。ホンダさんが笑って許してくれることを期待したい。)

一方でツアーモードやエコノモードはちゃんと作り込まれてて凄く気持ちよかったから、明らかにこの設定は「確信犯」「生煮え」のどちらかなんですよ。だから、私はほとんどスポーツモードを使ってなかったんです。でも、昨年10月に1年点検に出して、戻ってきたきんつば譲で久しぶりにスポーツモードに入れたら、以前と印象が全然違ってた。

モード切り替えてすぐ、「あれ?なんかおとなしくなってない?」って感じたんですよね。私の体感的には随分乗りやすくなってたわけですよ。オーナーの中には「あのドンツキが好きだ!」って人もいたはずだから、相変わらずドンツキは残ってて違和感が消えたわけじゃないけど、ジャジャ馬ぶりが許せる範囲に収まってきてるし、クラッチは全然ちゃんとつなげるようになった。

「ホンダさん、これコンピューターのアップデートで明らかに修正してきてない?してるよね?」

私は2020年モデルなんですが、定期メンテで最新の制御マップにアップデートされたんじゃないかと思うんですよ。もしそうなら、今後は同じSC79でもアップグレードされた個体かそうでないかによってスポーツモードの印象は全然違うってことになる。

実際私はハーレーでダイノジェットパワービジョンを導入し、ダイナのインジェクションマップを書き換えてますから、この手のアップデートは「とても容易である」ってのはわかってたはずなんです。でもバイクって昔から「アップデート=新しいの買って下さい」で、過去に販売済みの個体に対してメーカーがこういうケアをしてくるっていう発想は恥ずかしながらなかったんです。

考えてみると今のリッターバイクなんて、費用対効果を考えれば「車よりよっぽどお高い買い物」なんですから、車以上のサポート受けられても全然不思議じゃない。

ディーラーの専売制への移行は、こういうサービスを行うためなのかもしれない。確かに、この手のアップデートやろうとすると、全国全てのバイク屋にアップデートモジュールを配るなんてできないので、特定の店舗の専売制にせざるをえない。専売制は販売店が遠くなるばっかりなんで、私にとってはデメリットの方が大きいんですが、この手のサポートサービスが充実していくってのは専売制の一つのメリット、売りでもあるのかな~と考えたりする。

まぁ商売ですから、アップデートするにもしっかり点検手数料を取られるわけですけれども、こういうサービスが開始されると、これからはメーカーサポートというのが非常に大きな意味を持ってくることになりますね。

「これからのバイクを昔の感覚で語ることはできないなぁ・・」と改めて感じてしまう今日この頃なのであります。

(バックドロップ転倒動画だけでは殺伐としちゃうので、私がスマホで撮影した美しい能登の海岸線をどうぞ。うららかに晴れた日に、こういう道をぼーっと走ると「クルーザー買って良かった」ってしみじみ思います。)