今回は昨年ゴールドウィングに入れたメッツラーのクルーズテックのインプレです。ネット見ても雑誌の記事以外はほとんどインプレのないこのタイヤ。これを昨年私のきんつば(SC79)に入れました。タイヤ交換後の走行距離は2000㎞くらいですが、一体どんな感じなの?ってのを今回はインプレしたいと思います。

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(新品時のクルーズテック。ご覧下さい。この黒々としたミゾを。ミゾの黒さは彫りの深さ。ダイナで1万8000㎞を踏破したマラソンULTRAと変わんないくらいの深さがある。スパコルのハイグリップコンパウンド&浅ミゾは新品入れた瞬間にもう絶望するけど、これくらいミゾがあれば心安らかになれますね。)

実はゴールドウィングユーザーのタイヤの選択って非常に悩ましくて、「面倒くさいんで純正のエグセドラ入れちゃいますた・・」って人は結構多いと思うんですよね。このブログも、そんな悩ましきタイヤ選択の一助になればいいなぁと思ってますけど、残念ながら私が書いてるものは基本ロクなもんになりません。

だって私のジャッジって軸ブレブレですから。

「バカヤロウ!軸のブレたインプレなんて書く意味あんのか!」っていうお叱りについては「ないです!!」って自信を持って答えたい。

これはあくまでブログネタであって、評価記事ではないし、私はプロのテスターでもない。そもそも、ここ15年ほど私が相棒にしてきたバイクって、排気量と低速トルクまかせの明るく楽しくクソ重いメガクルーザーばかりなんですよ。メガクルーザーってのは華麗な体捌きと技の切り返しで魅せるんじゃなくって、力とゆとりで押し通るバイクなんですよね。

公正なテスターであらんとすれば、インプレにあたり、常に公明正大であり、フラットな評価レベルを維持する必要があると思うんですが、今の私の感性って重量級クルーザーに大きく振れちゃってるんですね。だから評価軸がまっとうなのかどうかも自分ではよくわかんないんですよ。

DSC_1437(ミゾの深さ約6㎜。コンパウンドも削りに強そうなんで、持ちについてはかなり期待してます。)

タイヤなんて、どいつもこいつも見た目丸くて黒いゴムの塊に過ぎず、バイクと違い、スタイリングとかホイールベースとか、キャスター角とか、エンジン搭載位置とかの「見た目でなんとなく乗り味がわかる要素」ってほぼありません。持ったときの重さはタイヤによってかなり違うんですけど、バイク屋じゃない限り装着前のタイヤを持ち比べるなんてしないから、一般ユーザーはそれもわかんない。

そんなだから、私はタイヤに関しては「満足している場合は銘柄を変えない」というポリシーがあります。プラスよりマイナスを嫌ってるんですよね。タイヤって入れてみないとマジわかんないですから。

実際うちのダイナ嬢は購入してしばらく、これっていうタイヤに巡り会わなくて、かなり迷走したんですよね。特にミシュランのコマンダーⅢが、私の走り方というか感性にマッチしなくて、かなり我慢した記憶があります。・・ネットの評判は良かったんですけど・・。でもメッツラーのマラソンに出会ってからは、そればっかでもう3セット目です。

このようにタイヤってバイクや乗り手との相性が凄くあると思う。ツーリングタイヤは性能よりバイクや乗り手との相性の方が大事で、相性悪いタイヤに当たると、「うーーん、やってしまった・・」って唸りながら次の交換まで雌伏の時を過ごすことになる。

今回あえてクルーズテック入れるという冒険をしたのは、ダブルウィッシュボーンサスの変態ぶりに対して、エクセドラのプレーンさがちょっと物足りなかったってのがあるんですよね。そこで人柱でも良いからメッツラーの新型タイヤ試してみようか?ってなったんです。

でもそこには一つ重大な懸案事項があった。それは空気圧。きんつばは前にも後ろにも空気圧センサーがあって、あんまり低い空気圧で整合するタイヤ買うと、「センサーが常時警告モードになっちゃうんじゃないの?」と思ったんで、事前にいろいろ調べてみたんです。

ゴールドウイングのタイヤサイズってフロントは 130/70R18、リアが200/55R16なんですが、これって、フロントはヤマハのXV1900レイダー、リアはスターベンチャーと同じなんですね。っていうかこの2車種しか同サイズのタイヤ履くバイクがないの・・。「うーん、このボッチ感・・なんか記憶あるなぁ・・」と思ったら、V-MAXでしたね。こいつも救いようのないタイヤサイズで、銘柄を選びようがなかった記憶がある。当時は「とりあえずエイボン入れとけ!」って感じだったんですが、そのV-MAXにもメッツラーはサイズ用意してたと思う。メッツラーは決して大きな企業規模じゃないのに、マイナーサイズもケアしてくれてるところがステキですよね。

で、この2台の指定空気圧を調べてみたら、XV1900はフロント2.50bar、スターベンチャーはリア2.80barで、幸いにもゴールドウィングとまったく同じだったんですよ。しかもどっちも空気圧センサー付き。それならメッツラーも「その空気圧で走りがベストになるように設定してるんじゃね?」ってことで、意を決して昨年の10月頃にクルーズテック発注してみました。

コロナの影響で海外製のタイヤが入荷せず、市場から続々と消えてる中でも、さすがゴールドウィング。「潰しの効かないタイヤサイズ」なだけあって、まだ在庫はありましたねぇ・・。

そんなこんなで無事クルーズテックを装着できたわけですが、このタイヤを語る前に、まず純正のエクセドラについて少しお話しをしておきたいと思います。

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(今回はタイヤ交換=靴の履き替えってことで、靴を履いているきんつば嬢をイラストに。もっとローアングルにするとパンツが見えますが、私のブログは健全ですので。)

皆さんご存じの通り、ゴールドウィングは純正では専用設計のエクセドラを履いてます。エクセドラの評価は一言、究極の無難

過不足ないというか、万人向けというか。不満もなく違和感もないという、いかにもメーカーが作った基準器みたいなタイヤなんです。乗った感じも丸いタイヤがしっかり回ってるフィーリングでプレーンだし、特段主張してこないけど、邪魔もしてこない。だから、好き嫌いの出ようのないタイヤだと思います。ウエットグリップもあり、ワインディングでも十分仕事をして、価格もソコソコ。純正装着タイヤとして、これで十分でしょ?っていう絶妙のバランスをついてきている。さすが専用設計、あらゆる点を諦めてないというか、コストを含めバランスが極めて優秀です。

持ちはSC68もSC79も同じくらいで私の乗り方だと約1万㎞でフロントにスリップサインが出ます。リアはもう少し持つんですが、フロントがなくなる時点ではもう2分山くらいになってるんで、結局一緒に交換するってパターンになる。

SC68の時はノーマルサスとこのエクセドラのタッグがあまりにも自然で気持ちよくって、「変えたらこの絶妙さが破綻しちゃうんじゃないか?」って思ったので変えなかったんです。あの車重を考えたら奇跡といって良いほどのバランスだったと思うんですよ。でも、SC79は新規採用のダブルウィッシュボーンがかなりの変態サスですから、この複雑なサスをSC68レベルの違和感のなさまで追い込むにはまだしばらく時間がかかると思う。今でも完成度が低いわけじゃないんですが、完全に煮詰まったといえないところが、タイヤで少し遊んで見る気になった理由かもしれない。

で、クルーズテック、入れてみてどうかというと、もう笑っちゃうほどわかりやすいですよ。指定空気圧だと直進時から「は?」って言うほど柔らかなんです。スゲェ乗り心地が良い。バンクは重くなく軽快なんですが、グリップはとにかくネットリ。このしなりのあるネチョリ感って、これまで私が乗ってきたタイヤにはない感覚かもしれない。かといって腰砕けになるわけでもなく、入力に対してしっかりと踏ん張るんですよね。

なんというんでしょうか。普通の消しゴムに対して、高級MONO消しゴム的な感じがありますね。凄くしなやかで、乗り手にも路面にも優しそう。反面、男らしいソリッドさや切り返しのスッキリ感には欠けるんですが、特段トロいわけでもないし、路面を常時捉えてるという安心感の伝え方はエクセドラより全然上なんですよ。正直思った以上に柔らかいんで私は気持ち空気圧を高めにしてる。

参考までにストリートトリプルのスパコルはどうなの?っていうと、同じしなやかさでも仕事の質が違う。より精密で超繊細です。特にSC2はその部分の制御レベルがヤバイ。タイヤの剛性感を維持しつつ、旋回性を引き出し、グリップを稼ぐ範囲でのみクッソ素早く絶妙に変形する。まさに達人。紙一重のところでメチャ仕事するんですよ。ほんの僅かの領域で発揮されるしなやかさが安心感とキレの両方を生み出してて、とにかく走りやすいんですよね。もうね。こんだけタイヤが優秀になっちゃうと、公道レベルではタイヤ任せで走ってれば良いってことになっちゃいますよ。「もう俺は重心移動のためのオモリにすぎぬのだ。」って思えるんです。タイヤのヘリに荷重かけるだけで、ほっといてもイイ感じになっちゃうって何?そのフルオートな働きには感動しかない。

それに比べるとクルーズテックは随分大らか。意図してそういう風に作ってあると思う。負荷の大きい重量級バイクにハイグリップコンパウンド入れちゃうとあっという間に磨耗してミゾ無くなっちゃうから、コンパウンドはあくまでウェット性能や耐久性を考慮したものを入れて、タイヤ潰すことで接地面積を増やしグリップを稼いでいく感じなんですよね。漬物石のように重いクルーザーの車重を消して軽快さを出そうとするのではなく、車重をうまく活用してグリップ稼ごうとしてる。これがなかなかフィーリング的に面白くて、ハイグリップを実現しながら乗り心地とかアタリの優しさも諦めることなく、クルーザーらしく優雅で威風堂々とした糸を引くような走りへ自然に誘う感じになってる。限界が高く、ハイパフォーマンスうたう割には、せわしなくないんですよね。

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わかりやすい欠点としては、タイヤが冷えてるときの低速時に気持ち切れ込む傾向があること。これも一気に持っていかれるような切れ込み方ではないので、対処は容易だし、タイヤが暖まる頃にはほぼ消えてる。あと大きな欠点として価格が泣くほど高い。エクセドラも前後で6万円くらいするタイヤですが、メッツラーはディーラー購入で8万円くらいします。これで持ちが悪かったら泣いちゃいそうですが、コンセプト的に結構持ちそうな予感はしてる。

で、まとめですが、私的にはクルーズテックは「クルーザーはこうあるべきだっていう世界観がしっかりしたタイヤ」だと思います。その世界観に納得できるかどうかによって、結構好き嫌いも分かれるんじゃないでしょうか。持ちとグリップを両立するのに、耐久性重視のコンパウンドを積極的に潰して接地面積広くしようって考え方は、筋としてはちゃんとしてるし、それによって生まれる大らかで安心感の高いスポーツ性もクルーザーにはあってると思う。

ちょっと心配なのは、これまでのME888(マラソンULTRA)に対してハイパフォーマンスを前面に出して売ってること。でも、クルーズテックのハイパフォーマンスって走り屋世代の日本人が刷り込まれてるハイパフォーマンスとちょっとギャップがあるんですよね。せっかく高いタイヤ入れるんなら、「とにかく走りを研ぎ澄ませなきゃ」って人には、この「ゆとり系ハイパフォーマンス」は受け入れにくいかもしれない。乗り味のスッキリ感はエクセドラの方があります。

私もはじめは「ええええええ!?こんな味付けなの??」って思いましたが、今は「重量級バイクの解釈として、これはこれでアリだな~」と感じてます。特に電スロ装備のクルーザーは開け始めの力強さを演出するためにあえてドンツキのスポーツモードを採用するケースが多い気がするんで、そういうバイクには初期のハードタッチを吸収してくれるクルーズテックは乗りやすいかもしれない。

まぁいろんな意味で乗り手の視野の広さというか、価値観が問われるタイヤなんじゃないかなぁと。この世界観にハマっちゃうと、この味しか受け付けなくなる可能性すらある。今のところ「次もこれ入れる?」って聞かれたら「持ち次第かなぁ・・」って答えるくらいには気に入ってます。