先頃「タンデム対決」のブログで、私が奥方様とタンデムツーリングをするようになった顛末と、パッセンジャーの奥方様から見たダイナときんつばのインプレを書かせて頂きました。

私の奥様のゴールドウィングに関するコメントは「乗り心地がまるでレクサス」というホンダ車には極めて受け入れがたい評価だったわけですが、今回はライダーの私から見たゴールドウィングのタンデムインプレをお伝え致します。

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(タンデム仕様となった私のSC79。今回GIVIケースの取り付けとインプレについて書いていく予定だったんですが、タンデムの感想かいてるうちにブログ一つ分の長さになっちゃったので、このネタは次回になりました。)

私にとってバイクは「聖なる武器」略して「聖器」という、極めて神聖であり、かつ卑猥なものですから、後部座席に乗る資格があるのは婦女子だけ。在来線の女性専用車両と同じ扱いなんですね。実際にこれまでの人生で自分の息子以外の男を乗せたことがありません。

「いやまて、お前のような変態が、そもそも女子との接点なんて・・」と眉をひそめられた方もおられるでしょう。でもね。信じられないかもしれませんが、バイク屋時代にはこれでも結構モテたんですよ。

私が東京にいた頃、勤務してたのは小さなバイク屋で、店の前がフルオープン。クーラーかけても全然効かなかったんで、夏になると毎日サウナの中で働いているような状況でした。そんな環境で労働を繰り返してると、余計な脂肪が全部落ちて、自然と細マッチョになるんです。どれくらい絞れてたかというと、もう男物のジーンズじゃ腰回りが全然あわなくて、しょうがなく女性用SOMETHINGの28インチ履いてたくらい。当時の彼女さんからは「ナニそれ・・超ムカつく・・」とコメントを頂いてました。まぁ何が言いたいかっていうと当時は今より痩せてて少しはイケてたってことです。

東京の山手線の内側って駐車場が高いから、車なんて買えない。まだバイクが駐禁切られない頃だったんで、アパートから大学や会社に通うのに、晴れた日は電車使わずスクーター使う女子もそれなりにいたんですよね。で、そのうちの一部は小型や中型とって30km/h制限と2段階右折からの解放を選択する。

当時は、オタクな人格殺して、お客さんにあわせてたし、メカ音痴の女性から見ると、バイク店の店員って何でも知ってるように見えるようなんです。いやー完全な幻想の類いですけどね。その幻想が幸いしてか、いろいろと悩みを聞いたり、数回程度ですが、バイクの後ろに乗せる機会もあったんです。でもタンデムで楽しかった記憶ってないんですよね。

よく少年漫画で女子とのタンデムで胸が当たって大興奮みたいなシーンがありますが、革ジャン着てると胸もゴムボールも一緒です。そもそも私の背中に当たってるのは牛の革であって胸じゃない。タンデム経験のないパッセンジャーは乗り手のことなんて考えてないから、ブレーキング時にはライダーに全体重でのしかかるし、加速すると力一杯しがみついてくるし、コーナーでは自己解釈の重心移動でライディングを阻害するという、当時の私にはまるで遊星からの憑依物体Xあるいは、バイクにとりつくおんぶオバケともいえる存在だった。どんなにこっちが気をつけて運転してても、加速して減速する以上、それなりに発生するGはどうしようもない。大型の加速にビビって後ろでパニックになられちゃうと操縦性も大きく変わる。もう必要以上に気を遣って、正直疲れるんですよ。

「女子とのタンデムで不満タラタラなんて、おまえホモなの?EDなの?」っていわれるかもしれないですが、昔の私にとってはバイクの方が女子よりずっと魅力的で愛しかったんですよね。パッセンジャーは正直、自分とバイクに割り込んでくる邪魔な生物以外の何物でもなかった。まぁタンデムして楽しいバイクに乗ってなかったってのもあると思いますけど・・・。

そんなバイクに比べてクルーザーのゴールドウィングやダイナがどう違うかっていうと、「乗り手とパッセンジャーの距離感」が違う。このクラスの巨大クルーザーはロングホイールベースを最大限活用して、ライダーとパッセンジャーを切り離してるんですよね。ダイナくらいのミドルクルーザーは、のしかかられるほど近くもないけど、パッセンジャーは安定のためにライダーの腰を掴むんで、一部接触するっていえばするし、ライディング中、常にパッセンジャーの気配を後ろに感じているんです。

しかし、きんつばレベルになると距離はさらに大きく開き、パッセンジャーはシート横のタンデムグリップにつかまるからライダーとは完全に非接触。このため普通のバイクでライダーが感じる負担はほとんどありません。ライダー側とパッセンジャー側のタンデム時のストレスをきっちり殺してるのが2人乗り専用メガツアラーなんですね。

きんつば嬢はサスペンションとブレーキにも相当な余裕があり、エンジンは1830ccですから、総排気量、気筒あたり排気量も低速トルクの吐き出しには十分。これに6気筒による回転安定性が相まって、低回転での走行マナーはこれ以上求めようがないほど。車重が一人分増えたところでバイクはまったく意に介さない。いつもエコモードで走るところをツアーに入れておけば、そのまま一人分の増量などどこ吹く風で走れてしまうわけですよ。

きんつばの6気筒ってスポーツユニットじゃありませんから、吹け上がりの速度はことさら速いわけじゃない。でも、そのかわり湧き上がってくるトルクに密度と質感がある。上に向かって吟醸酒のように澄み切って伸びていくBMWの6気筒と異なり、低回転から有無を言わさず押し上げるフィールがホンダ6気筒の持ち味なんですね。Vツインのように突き押しでドスドス前に出るんじゃなくて、ハズ押しでグイグイ進んでいくような圧力感があって、これが2人乗りでの抜群の余裕に繋がってるんです。

今回タンデムでロングライドしてみて、きんつばのサス設定とか、運動性の味付けの必然性を改めて理解することができた。とにかくメガクルーザーとして、車体も乗り味も余裕をもって作られてる。2人乗りでもへこたれないサスペンション容量を持たせようとすると、一人乗りの時は必然安定方向に振れることになるんです。ソロライドではなかなか過激に走ってくれない車体設定ですが、タンデムライドになるとそれがジェントルで頼もしい挙動に繋がっていくんですね。

私の所有するザラブ嬢(ストリートトリプルRS)の足回りはヘラブナ用の竿のように繊細ですが、これだと2名乗りしたときの重量増がモロに挙動として乗り手に伝わってしまう。ダイナのリアサスだって昔ながらの2本サスですから、そこまで余裕があるわけじゃなく、2ケツではサスの突き上げなど一定の影響が必ず出る。でもきんつばは、フロントダブルウィッシュボーンにリアはごっついモノサス、スイングアームも極太でメチャメチャ長いから、カナダでキングサーモン釣るときのゴッリゴリの仕掛けみたいなもんで、竿先に大物つるしてもビクともしないんです。

私にとって、ライダーがパッセンジャーにここまで影響されないタンデムライドって、きんつばが初めての経験です。で、パッセンジャーからのライディングの妨害もなく、素で挑むタンデムライドって恐ろしく難しいんです。もうね。徹底したコンフォートライドが要求されますからね。特に私のような恐妻家ですと、精神的な追い詰められ方はかなり極まってまいります。

だって、もしそこで不安定な荒い走りなんかしたら「バイクは危ないから絶対ダメ!!」っていわれるに決まってるんですよ。その宣告を食らうとバイク人生ジ・エンドですから、私は常に後ろにいる奥様に「バイクは危なくないんですよ~、大丈夫なんですよ~」ってことをライディングをもって実証しなきゃならない。でも、それってものっすごく難しいと思いませんか?だって、安心安全な走りが身についているようなら事故9回もやりませんよ。

混沌を愛する快楽主義者が絶対君主の前で素行とマナーを試される。それがタンデムライド。これはヤバイ。ヤバすぎる。

車だったら助手席にいる奥さんの機嫌を横目で確認しつつ、運転を修正することができますが、タンデムではそれすら出来ない。いわゆる「タクシー乗り」ってやつですよ。どこでツボに入っちゃうかわかんないから、ありとあらゆる状況で最上の乗り心地を提供しなきゃならないんです。

アナタが私のマスターか?(有名なfateの土蔵パロ。ついに第四のキャラ、私の奥方様がウサギマスクで登場です。怒ったときの奥様の怖さは間違いなく聖杯戦争を勝ち抜けるレベル。)

これね。一人で乗ってるときには味わったことのない緊張感ですよ。今までやらなかったようなアクセルの開け方、ブレーキングを意識しなければならない。昨日までイニシャルDでドリフトしてた藤原拓海に「電車でGo!」をやらせるようなもんです。しかも後ろで常時厳正なる審判員が目を光らせ、減点法で採点してますから、下手な運転だと試験中止もある。一切気が抜けません。

・・でも意外なことに、このヒリつく緊張感が何故かとっても楽しいんです・・

長い間バイクと共に過ごしてきますと、スピードにも車重にも大排気量にも、大概のものに驚かなくなってきます。そんな無感動な私にも、まだ奥様を後ろに乗せての「マゾヒスティック・ライディング」という未知の領域が残っていたんですね。この世界では、私がこれまで積み上げてきたワガママライディングがまったく通用しないという、なんともいえない被虐的快感があった。

ホント、バイクというのはいつまでたっても、新鮮な驚きを与えてくれる。タンデムで、いろんな所を駆け回りながら、「バイクの深淵はまだまだ計り知れない」そう実感した次第であります。