今回は最初の方はストリートトリプルRSのエンジンについて語ろうと思っていたんですが、途中から何故か排気量マウントの話になってしまっています。私のブログは、テキストが走るままに打ち込んでいくので、途中で趣旨が変わっちゃうことが結構あります。どうかその点、ご容赦を。

以前ストリートトリプルRSのエンジンついてはブログ一つ丸々使って書かせてもらってますが、それから約1年が過ぎた今も、私の評価は全く変わっていません。

いやもう、実にいいエンジンです。

このエンジンの何がいいって、まず765ccの排気量設定。排気量がナナハンクラスであるってのは、このバイクを購入したときの重要な判断材料の一つだったんですが、ホント正解だったな~と思ってる。トライアンフは3気筒でスポーツ走行を追い込むなら「この排気量あたりがベストだ」って考えてるんだと思うんです。実際乗って見るとパワーと軽快感のバランスが凄く良くって、ライディングしやすいし十分な刺激もある。

新設計のエンジンは排気量765ccで、以前のストリートトリプルの3気筒675ccに対して+90cc分の余裕がありますが、従前の675ccもトライアンフがはじき出した最適排気量だったと思うんですよね。排気量を上げたのは、昨今の環境規制の導入で生じるパワーダウンを+90ccで補ったってところがあるんじゃないかと思ってます。

その一方でトライデントやストリートトリプルS、新型のタイガースポーツなどには660ccの3気筒が採用されてますが、これは「普段の街乗りでは660ccがバランスに優れ、モアベター」ってことなんでしょう。

triumph-moto2-prototype-engine
(MOTO2のベースエンジン、タコ足と吸気系が違うだけで後はストリートトリプルRSのエンジンと外観は同じです)

ですからトライデントやストリートトリプルSよりRSの方が上って考え方は少し違うと思うんですよ。確かにRSの方が良い部品ついてますんで、試乗評価はいいんでしょうが、運動性能にこだわってるグレードが走りの評価が高いのは当たり前、その分財布には圧倒的に厳しいことになってる。

ザラブ嬢は、もはやハーレーやゴールドウィングをぶっちぎって、私の所有バイクの中で最もハイコストで維持方面で首を絞めてくるバイクになってます。

公道を走る市販バイクのパッケージとしてトータルに上手くバランスしてるのは実はトライデントやSの方だと思うんですよね。これは上位モデル、下位モデルという括りじゃなくて、「用途性を考慮した最適回答」を求めた結果こうなっているはずです。

バイクは「男のロマン」と切っても切り離せないんで、中間排気量より最強感を重視したリッターオーバーのエンジンがもてはやされてる傾向がありますが、大排気量や高額パーツをつければベストになるのかというと、私はそんな風には全然思ってないんです。

「このヘタレが!各メーカーが一番力を入れてるのは大排気量のフラッグシップなんだから、フラッグシップ買っておけば間違いないのだ!!トライアンフならスピードトリプルなのだよ!!」

っていう意見については、特段反論するつもりもないし、ある意味その通りなんですけど、最終的にバイクってやっぱり使う環境や、個人の体型、技量、体力、考え方、年齢、お財布事情などによってベストな選択って異なると思うし、年を食うとチューニングにしても何にしても「そのバイクの目指すべき最適な仕立ては何か?」っていうのを昔よりじっくりと考えるようになるんです。

例えばストリートトリプルとゴールドウィングは馬力だけで比較すると、123馬力と126馬力でほぼ一緒なんですよね。でも、その性格は正反対。ストリートトリプルはとにかく豪快にキレ上がっていく生粋のスポーツユニットだし、ゴールドウィングのフラットシックスは回転をステイしたときに滋味が溢れるように作られたクルージングエンジンです。エンジンは基本的にバイクのコンセプトに寄り添うものですから、バイクのキャラクター性を抜きにして、排気量や馬力だけを語ってもしょうがないと思うんですよ。

でもキャラクターを語るっていっても、エンジンの性格を左右する馬力とトルクの関係がよくわからんし・・っていう人も多いと思います。わかりやすく言うと、エンジントルクっていうのは、一発のパンチ力ですね。この場合ピストンは拳で気筒数は腕の数ってことになります。じゃあ馬力って何なのよ?っていうと、繰り出すパンチが1秒あたりに生み出す破壊力、戦闘力みたいなもんです。この破壊力がバイクの加速力に還元されるわけですね。

小排気量で一発のパンチがペチペチと軽くても、ペガサス流星拳とかゴムゴムのガトリングみたいな超高速連打状態になれば、そりゃもう十分すぎる破壊力になるわけです。小排気量はパンチは軽いけど、ピストンの動きも軽いから連打に有利だし、気筒数が多ければ腕の数が多いわけですから、これまた連打効率が上がる。それらの特徴を生かしながら1秒間に殴る手数を上げて破壊力をかさ上げするんです。高回転高出力型のエンジンをショートストロークにするのも、パンチの回転を上げやすいから。自分が正義の味方になって悪の怪人をタコ殴りにしている姿を想像してもらえば、なんとなく理解できると思います。

要はケンシロウの「あーたたたたたたたたたたたたたたたた!」ですよ。これに対して、低回転トルク型の大排気量バイクの豪快なパンチ力はまさにラオウの殴り。とにかく一撃がクソ重い。手数がなくても「ぬはぁぁぁあああ!!ふうぅぅうん!」と振り回してるだけで、十分なお仕事ができるんです。

低速バカトルク型と高回転高出力型の差は、質量に任せた強パンチの威力でドカンとドカンと圧倒するか、軽量でもキレの良いパンチと手数の合わせ技でハチの巣にするかの差と行っても良いでしょう。これは戦い方の手法の違いでどっちが良いって訳でもないんですが、若いうちは熱い連打型を好み、歳食うと面倒くさくなって単打でKOを好む傾向があると思う。連打って見てるだけで疲れますからね。

でもバイクのエンジンでラオウ様の「ふううん!!」ってのをやろうとすると、どうしても排気量がいるんです。爆発一発一発の威力を上げるために、デカいピストンを入れて、ロングストロークでタメ作って・・とエンジンの排気量がどんどん上がるわけですよ。エンジンはその分デカくなるし、それに比例して車体も大きく重くなり、機動性はどんどん落ちる。エンジン熱は上昇し、燃費も悪化、乗り手の財布も真っ赤っ赤ってことになるわけです。

これがさらにリッターSSともなりますと、パンチの一発一発がただならぬ威力のとこもってきて、メーカーはメンツにかけて連打性能も上げてくる。その結果、そこに誕生するのは、「ケンシロウのように連打できるラオウ」なんですよ。こんなハイカロリーな奴出てきたら北斗の拳は打ち切られずとも10話で終わっちゃいますよ。パンチ力と連打能力の両方を極めた200馬力クラスのバイクって、私みたいな古くさいバイク乗りからすると、スーパーサイヤ人くらい次元の違う存在になってるわけですね。

で、こんなトンデモマシンが、金さえ払えばナンバー付きで手に入り、ストリートファイトにどんどん投入されてくる。街の喧嘩の用心棒に「ラオウさん連れてきちゃいました~」っていうんならまだ許せるけど、ブロリー連れてきたら「お前TPOどうなってんの!!」ってツッコまれますよね。そんなの召喚して、この地球どうなっちゃうの?ってレベルですよ。

ブロリー3
(バカげた強さとハイカロリー過ぎる存在感で笑いのネタにされてるブロリー。溢れるエナジーでスゲェ燃えてますが、大排気量のハイチューンエンジンの熱量も似たようなもん。夏場はジンギスカン鍋の上にいる気分になります。)

公道200馬力って、それくらい破壊力がオーバーキルしてますよ。同じ3気筒でも765ccなら「ストリート」を名乗れるけど、1200cc、180馬力になったスピードトリプルにはストリートの枕詞はつけようがないわけですね。

なぜ、こんなバケモノ達が市販できるかっていうと、エヴァンゲリオンみたいにトラクションコントロールという拘束具でぐるぐる巻きにして、破壊力を抑えてるからに他ならない。同じトラコンでも200馬力のバイクのトラコンとZXー25Rのトラコンじゃ全くもって意味が違う。ZXー25Rのトラコンはもしもの時の保険ですけど、200馬力のリッターバイクのトラコンは怪物達に日々の生活を平和に営んでもらうための拘束具なんです。

ちょっとシニカルに言うと、リッタークラスのSSは使い切れない破壊力の制御のためにトラコンという拘束具をつけ、ハイカロリーのエンジンを包む大きく重い車体を持て余しつつ、3割くらいの力で公道ファイトをしているという、とっても大きな矛盾を抱えてるわけですね。

ただ、機械ものにおいては、馬鹿げたパワーは夢があって魅力的なんです。過剰も贅沢感の根幹を占めるものだし、そもそも昔から大型バイクってそういうもんだし、それ厳密に言い出すと750クラスでさえ「無駄無駄無駄ァ、250や400で十分じゃん!!」ってことにもなるしで、突き詰めるつもりはないんです。ただ、そういうことを理解した上で大排気量バイクに乗らないと、バイク乗りとしての立ち回りがおかしくなる気がする。

排気量マウントの一番の勘違いは、無駄をひけらかしてマウントしてるところなんです。50ccとか黄色ナンバーの方にだったら、「流石にもうちょっと余裕あった方が楽だと思いますよ」ってアドバイスもしますけど、250ccや400ccなら、もう高速だって乗れるし、性能的にも満ち足りてるわけですよ。腕のある人に250ccクラスのバイク与えれば、一般人の乗るリッターバイクを峠の下りで千切ることも可能。実際私はF6Bに乗ってるとき、志賀草津道路の下りで、地元ナンバーのKSR80にチギられてますからね。消えてくイエローナンバー見ながらKSRのあまりの速さにマジでアッチョンプリケってなりましたよ。一体排気量と価格差何倍なんだよと(笑)

結局のところ、リッターオーバーの大排気量なんて享楽的なものにすぎないんです。大排気量バイクの価値の半分はそういうプライベートな脳内麻薬効果なんで、確かにメガクルーザーとか「気分よく楽に走らせたい系のバイク」には、大排気量、大トルクが有効でしょう。でも、それも程度もんで、ある一定のレベルを超えれば「過剰なものに余分な金を払ってるだけ」の道楽。単なるメカマニアの無駄使いです。バイクなんて当人が気持ちよければ何だっていいわけですが、「排気量がバイクの気持ちよさに直結する」なんて話は聞いたことがありません。

このように「排気量がバイクの優劣ではない」とわかってて乗ってれば、人にマウントすることもないんだと思うんですが、「排気量が全てを解決する」「排気量が大きい方が良いバイク」という勘違いがあるから、そういうマウントがなくならないんだと思う。

タイヤが2つしかなく、不安定なバイクに限っていえば、すべてを解決してくれるのは排気量でなく軽さです。だから重くなる大排気量バイクってのは性能の頂点じゃなく、どっちかといと「無駄と矛盾の頂点」なんです。排気量やエンジン出力に絶対正義なんてないんで、「アンダーパワーでまったりとストレスなく楽しむ」か、「運動性と出力の最適解を求めるか」か、「あえて過剰に走るか」は選択する人の考え方に過ぎない。こちらの選択がエライっていうものではないってことを理解しましょうってことですよね。

胸ぐらツカミ3
(こちらに書いてあるとおり、私のイラストの胸のサイズは排気量に比例しています。排気量が重大な不利益に直結しておりますので、明確に事案となっておりますが、市販バイクにおいて排気量の大小でそのような重大な不利益が生じることはありません。)

今話題の「サスティナビリティ」って「持続可能な社会のためにみんな欲望を少しずつ我慢しようよ」ってことですから、ゴールドウィングやハーレーみたいな欲望丸出しの無駄バイクはこれからの将来、非常に肩身が狭いんです。しかも、今後はこの考え方が社会にどんどん浸透していくと思う。企業は今年あたりから、世界的な要請でサスティナビリティを厳しく要求されてますから、ゼロエミッションに向かわざるを得ないし、そこに勤めてる社員の人はその感覚が当たり前になっていくでしょう。

これからの大排気量バイクはそういう外部の目線にも気を配らなきゃならない。気筒数を減らしてエコを狙うか、ゴールドウィングのように将来のハイブリッドを視野に入れた仕込みするかで、環境負荷をなんとか減らしていかないとどうしようもないと思う。バイク乗りにとってはいささか寂しい話ですけど。

ちょっと話が逸れましたが、何言いたかったかというと、機動性とパワーのバランスの最適化を考えると、公道スポーツは「ナナハンくらいが上限として適切じゃないかなぁ・・」と個人的には思ってて、今回のザラブ嬢は過剰ではなく「私が適切だと思うものを選んだ」ってことですよね。

結局、排気量ってものはバイクの個性を決定づける要素の一つに過ぎないんです。4気筒250のZXー25Rを指して「スポーツバイクなのにパワーがない(笑)」って言う人もいますけど、あれ買う人は排気量上げればパワーが手に入るのはわかってますよ。それでもなおZXー25Rを購入しているのは、市販車では250マルチの世界にしかない「超高回転域を普段使いするという個性」を公道で味わいたいからなんです。「なんで250なんかに乗ってるの?」って聞かれても鼻で笑って「だってクォーターマルチ以外にこんなことができる?」って返すだけですよ。

ZXー25Rの素晴らしいところは「ニーハンだからこそできる快感がある」ということを改めて市場にわからせたことです。速さだけを求めたCBRには残念ながらそれがない。求められてるのは絶対的な速さじゃないから、いくら「CBRがZXー25Rより速いんだ!」って力説しても、販売はひっくり返らないんですよ。

この世には様々なバイク達があって、その性質によって求められる排気量が決まってる。ヨンヒャクにもロッピャクにもナナハンにもリッターにも、すべての排気量に必然性と存在意義があるんです。排気量マウントってのは、残念ながらそういうことに思いが至らず、排気量幻想に浸ってる人達が起こすちょっとしたエラーにすぎません。

排気量マウントなんてそういう取るに足らないものですから、マウントされた方もことさら気にすることなく、「残念ながら私と排気量に対する考え方が違うようですねぇ」と余裕の態度で右から左に受け流せばいいんじゃないかと思うんですよね。