新型ゴールドウィングの機能インプレッションのブログその2です。

ちなみにその1はこちら。(主にDCTのインプレとなっています。)

いろいろなインプレを見ていて思うんですが、みんなべた褒めですよね。確かにゴールドウィングって独特だし価格もとんでもないので、初めて乗るライダーには「驚きと夢と感動がつまったモノ」なんだと思うんですよ。だから多くの方が、気分がうわずったインプレになるのはしょうがない。でも私は旧型を足にしてますので、もう体がゴールドウィングに慣れきってます。しかも、ゴールドウィングでもタンデムライディングしたことない「ぼっちライダー」ですし、どっちかというとバイクを通して「メーカーの開発事情や思惑」「マーケティングの裏」とかを考えてしまう変態なので、インプレッションも一般の方とはかけ離れちゃってるであろうことを最初に申し添えておきます。(なんかこれ、毎回言っている気がする・・)

機能インプレその2 「ダブルウィッシュボーン・サスペンション」

ダブルウィッシュボーンサス(新設計のダブルウィッシュボーンサス。この複雑さがメカ萌えにはたまらない。アームで上下動するため、摩擦抵抗がなく動きは滑らか。テレスコではフルボトムするほどの入力があっても挙動は安定。しなったり、たわんだりしないので、剛性感も非常に高く、6ポッドキャリパーのストッピングパワーもこのサスなら十分受けきれる。ただし、複雑であるが故にステアリングインフォメーションの伝達にはいささか難があると思います。)

前回のDCTに引き続き、今回はSC79の注目装備のダブルウィッシュボーンサスのインプレから。どの雑誌のインプレ見ても、これとDCTが新型のキャラクターの大きな部分を占めてますよね。乗ってみても、このサスなかなか個性的で面白い。端的に申しますと、「路面の一定の荒れをすべてならしてしまう魔法の絨毯」です。多少の凹凸は全て吸収してしまうので、荒れた路面が非常に綺麗で整備された舗装道路のように感じる。

ほとんどのサスは「荒れているのはわかるけどサスがそれをうまく吸収してくれてる」感覚ですが、新型はその荒れすら感じさせないくらい吸収してる。ステアリングに不快な振動を伝えないという点では、高級サスとして極めて有能。F6Bの欠点である大きめのギャップを吸収しきれず手首にガツンという「品のない衝撃」とはほぼ無縁であります。

一方で、メチャクチャ仕事してるのはわかるんですが、ちと仕事しすぎ?と感じるところもある。普通のサスが猫のように動く感じだとすれば、もう子リスのように凄い勢いで働いてるんですね(笑)。驚嘆に値する仕事量なんですが、これがフロントカウルの隙間からよく見える。これはじめは楽しいんですが、そのうち落ち着かなくなります(笑)。あと、ステアリングにもう少し濃いめのインフォメーションと、衝撃吸収にしっとりねっとりした感触が欲しい。

ワルキューレ・ルーンjpg
(某雑誌でホンダが新型GLの派生モデルでワルキューレ・ルーンを開発中!!みたいな記事がありました。ハーレーがありふれてきた昨今、発売されたら結構ハーレーを食うかもしれませんね。)

リンク式でステアリングにつなげているからか、操舵のセンター付近の感触が曖昧なのも気になるところ。消費者は新しいもの、珍しいもの好きなので、そういう違和感を「逆に新鮮」と感じてしまうところがあるかもしれませんが、私はオッサンですので、新しいものに興味と懐疑心が半々です。今の時点での感想は、衝撃吸収の点では優秀ですが、必要な路面状況を逐一正確にダイレクトに伝えるという点で、まだ痒いところに手が届いていないかなと。

あと、一般に重量級バイクになると、フロントフォークの径を太くし高剛性に作るため、フォークの動きがまったりしてくるんですが、このサスは前述したようにまるで250のフロントフォークのように軽々と動作するので、バイクが体感的にとても軽く感じるんですよね。それなのに、かっちりした剛性感があって柔さは一切感じない。そんな強靱なフロントフォークがボトムしたあと「ひょこっ!!」と冗談のように戻るんですが、その戻りの感触は、「まるで400ccくらいのバイク」に思えちゃう。これを体験してしまうと、「バイクが重いからステアリングの感触もずっしりしてるのが当然」という今までの常識があっさり覆されます。「タイヤ支持と操舵と吸収を切り離すとこんな軽々とした動きになるのかー?」と、わかっちゃいたけど実際体験してみるとちょっと衝撃。ただボトムからの戻りの軽さは悪いわけじゃないけど、イマイチ安っぽいんじゃないか?とも感じるので「そこはもう少し高級感を作り込んで欲しいかな」と感じるところです。

このダブルウィッシュボーンサスが生み出す軽い動きのフラットライド感や、剛性感との両立については正直「凄えな・・・」と感心しつつも、まだ普通のフロントフォークと比べると、いろいろ細かな点で違和感があることは否めない。ステアリングの感触というのは、人間が操舵する以上「乗ってて気持ちの良い理想形」というものがあるわけで、その理想型には至っていないと思います。雑誌では違和感がないというインプレばかりですが、私はバーチャル感があって、イマイチ落ち着かない。車で表現すると旧型がBMWのハンドリングだとすれば新型はレクサスみたいです。現状はダブルウィッシュボーンサスの優位性や可能性はちゃんと提示されているけど、動的質感やフィーリングの追求はこれから・・って感じですかね。

バイクのテレスコピックサスは構造的には車のストラットサスに相当すると思いますが、車だとストラットサスとダブルウィッシュボーンサスで路面追従性や乗り心地に違いはあっても、ステアリングの感触に大きな違いはないわけで、その点をもっともっと煮詰めて、操舵感をテレスコの感触に近づけていくと、さらにこのダブルウィッシュボーンサスの素晴らしさが際立つんではないかなぁと思います。

機能インプレその3 「新型エンジン」

エンジン

(SC79の水平対向6気筒。車も含め6気筒自体がほぼ滅亡種の今、このエンジンの存在にマニアは泣いて喜ぶべき。これを搭載し続ける限りGLの価値は揺るがない。新型エンジンは従来モデルに対し、前後長で29㎜を短縮。元々旧型GLもバイク搭載用エンジンとしてギリギリまで寸法を抑えてあったわけですが、耐久性を重視しつつ、そこから29㎜削るというのは並大抵ではない。旧型はビックボアのショートストロークでしたが、今回はほぼスクエア。)

最初に感じたのは意外にもマイナス点でした。新型水平対向6気筒エンジンは、信号待ちでアイドリングしてるときのエンジンからの機械音がガチャガチャとうるさく、いささか振動がある様に感じたんです。

まぁ私のF6Bは野太い排気音のヤマモト管が入っているので、タペット音などが目立たないだけかもしれません。でも同日に試乗したCB1300より明らかに機械音が大きかった様な気がするんで、この点でももうちょっと質感を高めて欲しい。試乗車の個体差もあるんだろうと思いますが、新型が2バルブからホンダお得意のユニカム4バルブになった影響もあるのかも。エンジンフィールは6気筒の良さがちゃんと出ていますが、変速機であるDCTの印象が強すぎて、試乗コースで体験したレベルでは「従来のゴールドウィングが搭載していたエンジンからフィーリング面で進化した」という部分の検証はなかなかできない。

まぁ6気筒は元からなめらかさが売りですし、高速道路走ったりMTで乗ると印象変わるかもしれないので、是非MTモデルも試乗したいところです。

雑誌やネットのインプレ記事を見ても旧型エンジンとの比較が云々というところはあんまり出てきていないので、「インプレしにくいんだろうなぁ」と思います。でも、これだけははっきり言える。エンジンフィールには特段の変化がなくても、このエンジンはシャシーの機動性や車体のコンパクト化に圧倒的に貢献している。GL専用搭載の6気筒をモデルチェンジにあたってコストをかけて再設計するというホンダの根性に敬服します。これはゴールドウィングのための専用エンジンとしてより適正に進化した素晴らしいものであるといえるでしょう。

機能インプレその4 「ウィンドプロテクション」

新型GL
(SC79のフロントマスク。旧型ののっぺりとしたフロントマスクとは大違い。ウィンドスクリーンは可動式ですが、結構風が当たるんですよね。)

SC79は旧型に比べて明らかに風が当たるようになってます。ミドルツアラーなどに比べるとカウル大きいので、他のバイクから乗り換えた人たちは「極楽!!」って感想になると思いますが、旧型SC68オーナーから見れば全然風当たり強い。旧型の「進撃する巨人を防ぎましょう!」というくらいそそり立っちゃったカウルと比べると新型はずいぶんスリムでおとなしい。

旧型はこれでもかとはみ出した超巨大カウルにより肩口、太ももなどにあたる風を完全シャットアウトし、これにより気温3度くらいまでは「冬用ジャケットとウォームジーンズで走れる」という冬場のスーパーマシンだったんですが、SC79は68に比べて風あたりはそこそこあると思います。カウル面積が小さくなって小顔になってるのでさもありなんという感じですが、カタログを見るとそれを補うための透明ディフレクターがオプションで用意されていたりする。しかし、この外付けの透明ディフレクターが限りなくダサい。これをつけると新型の美しいフォルムが形無しなので、このオプションを選択する人はほとんどいないでしょう。このような不格好なオプションが用意されているあたり、カウルをコンパクトにしたことにより防風性能が低下していることをホンダも暗に認めているわけです。

ディフレクター
(後付けの透明ウィンドディフレクター。フォルムを崩さないように透明仕様ですが、これは酷い外付け感。ホンダいい加減にしろ(笑)。実は試乗車にこれついていたんですが、それでもF6Bに比べると肩口や太ももに風が当たりましたから、ノーマル車はかなり風があたりそうです。)

ただ、これが直ちに悪いってわけではなく、SC68は風が当たらな過ぎて夏場は「釜茹で状態」になっておりましたので、SC79では可動式のウィンドスクリーンとあわせ、夏場の爽快さを目指しているのかもしれません。私は夏場はハーレー、冬場はゴールドウィングと季節でバイクを使い分けているので、できれば冬場の完全防御を優先してほしかったですが、ここら辺は乗る人の使い方にもよりけりですし、もう好き好きだと思います。






・・・・・・・・・・・・ということで、新型の機能について、試乗の記憶を呼び起こしつつ、一通りのインプレをしてまいりました。新型に試乗して感じたのは、旧型の最終モデルに比べ、まだいろんな点で「熟成が不足しているんじゃねーかな??」ということ。ポテンシャル自体はとても高いと思うんですが、それが全体的な質感や好印象にイマイチつながっていないのがもったいない。でも、17年間生産された旧型と熟成度で比べてもしょうがないですね。これは時が解決するでしょう。

あと、どうしようもないことではあるんですが、私がバイクに求める方向性とホンダが目指しているところに少しばかり差があるように思う。この点は語り出すと長くなるので、最後の総括として次のブログで述べたいと思います。