ストリートリプルの近況で、一番最初にご報告したいのが、リアタイヤのスパコルSC2の実力。レッドバロンさんの誤発注で、我がザラブ嬢はフロントは純正指定のスパコルSPで、なぜかリアだけスパコルのSC2になってるんですが、前回のブログを書いたあたりでは、タイヤと自分のナラシもかねて、軽くたしなむ程度で走ってました。でも、そろそろナラシもいいだろうってことで、路面状態が良い日の早朝に、ホームコースの峠をガッツリ走り込んでみたんですよ。

前回のブログではいろいろとネガティブに書いてしまいましたが、今回はポジティブなことしか書いてない。とにかくSC2がココで本領を発揮しないでどうするの?っていう峠走りのインプレですから当然なんですけれども。真の姿を見せたSC2の印象があまりにも衝撃的だったので、今回のブログは、まるまるそのお話になります。

SC2でホームコースの峠をマジ走りした印象は「ふぉおおおおおお!なぜこんなに走り易いんですかぁぁああああ!!!」って、一言で表現するとそんな感じでした。印象としてはSPに比べてタイヤが「ものすごく細やかに仕事してる」って感じなんです。SPもいつも履いてるツーリングタイヤに比べりゃ十分凄くて「もはや達人級」だったんですが、今般我がザラブ嬢に装着されたSC2は、「達人レベルが東方不敗級」だったんですよ。

じゃあ、その違いがどこにあるのか?実際はどう違うのか?っていうと、SC2は乗り手のライディングをサポートするべく、タイヤ側がめちゃめちゃ動いてくれるんです。SPも十分すぎるほど仕事ができるタイヤでしたが、SC2はさらにデキる。見事なタイヤさばきで車体と姿勢をどんどん走りやすい方向にもっていってくれるんです。

市販価格はSPと同じくらいなんですが、これはちょっとカテゴリー違いな気がいたしますね。なにが違うって実戦での頼りがいが違う。ガワ見ただけだと完全に同じなんですが、SPが能力の高いエリート新兵だとすると、SC2ってベトナム戦争帰りのベテラン兵士って感じなんです。純粋な能力もさることながら、実戦の所作というか落ち着きっぷりが頼もしいったらない。軍用品のクォリティって市販品と全然違うんですが、マジ走りしたときのSC2にはそんな雰囲気があります。サーキットという過酷な環境で多くのライダーに支持されてるだけあって、こんな鈍感駄馬の私ですら、峠でその差がわかるんだから、感性細やかな人が乗ったらそれはそれはいたく感動されることと思います。

私は「サーキット専用のセッティングをしたサスペンションが公道で走りやすいか?」って問われれば「んなこたーない」と断言しますが、ことタイヤについては「サーキットで鍛え抜かれたタイヤは公道で走っても実に良い仕事する」と考えを改めようと思ってます。

SC2の指定空気圧は1.9くらいで、SPの指定空気圧2.9に比べたら1.0も低い。でも剛性感は鬼のように高いんですよ。「鍛え抜かれた肉体に余分な空気などいらぬ・・」といわんばかりで、「空気圧が低いからへこたれる」なんてことは一切ありません。特にバンクさせたときSPは割と低荷重でタイヤの端が潰れてく感じなんですが、SC2はSPほど潰れません。「もっとだあぁああ!もっと圧かけんかぁああああい!」って感じで、どんだけ逆水平を胸板にぶち込んでも、首コキコキ鳴らしながらにっこり笑うだけで全然効いてない感がある。

「うう・・このタイヤ強いですぅ・・」

って、こっちが涙目になりますよ。さすがサーキットでレーサーの叩きつけるヘビー級パンチの超高負荷に耐えるタイヤ、私の児戯のようなライディングとザラブ嬢の123馬力パンチ程度では、その厚い胸板をぶち抜くことはできない

寝かせたときも、普通のタイヤって多少なりとも「ん?」「おや?」「コレがこのタイヤのクセなのでしょうか?」って思うところがあって、それが個性だったり楽しいところだったりするわけですが、SC2は旋回初期からスーパーナチュラルなんです。しかも、その安心感たるや・・・もうなんていうんでしょう。スッと倒れ込むその瞬間に「腰を支えられてる」感じがする。リアだけ変えたから、余計にそう感じるんだと思いますが、もうね、しっとりと腰が決まってるんですよ。それも体育会系のキモい兄貴ががっしり支えてる感じじゃないんですよ。ベルダンディー(←古い!)みたいな女神様に優しく添え手されてる感じなんです。「オオ!MYゴッデス!!」って女神に感謝しながらコーナーに入ってくというですね。いやもうこれ、タイタニックの逆ですよ。「キモいオッサンをタイヤの女神様が後ろから支えてる」って構図なんですよ。腰回りに回春効果すら感じるというヤバイ状態になってますよ。それでいて切り返しは超軽快。下りの連続したタイトコーナーだと「体を振るのが追いつかないですのー!!」って泣きが入る。いつもの峠を一本走るだけで、体力のない私は「ロックオンした女の子が陸上部員だった変質者」のように息づかいが「ヒィー!ヒィー!フーーッ!!」のハードラマーズ法になっちゃってるんですよ。

SPが爽やかに部活やってる感覚で峠走ってたとするなら、SC2はまるでブートキャンプ。以前のブログで「公道でのライディングは領域論である」みたいなことを書きました(そのブログはこちら→コケないための領域論(ストリートトリプルRSは上級者向けバイクか?))が、このタイヤはSPと比べても乗り手の領域が確実に広がる。ただ、負荷も高いし、動きも激しくなるから疲れも倍くらいになるんですよね。

ストリートトリプルRS
(せめてストリートトリプルRSの写真の一枚もないと・・ってことで、走行写真を公式から引っ張ってきました。)

また、このタイヤ、コーナー立ち上がりでアクセル開けた時のマナーも素晴らしい。最初のアタリの衝撃をタイヤがなんとも絶妙に受け流す。この受け流しの鮮やかさは「ムーディ勝山の右から左への受け流し」に匹敵するレベルです。立ち上がりでアクセルをラフにワイドオープンしても、リアタイヤが最小限の動きで初期の衝撃を吸収して、路面への圧力に優しく変換してくれるんです。

「あらあら、こんなに乱暴にアクセルを開けて♡しょうがない子ね・・」なんて妖艶に笑いながら、優しくお尻拭いて、天花粉までつけてくれる感じですかね。こっちはもうバブみを全開にしてアクセルをガバ開けしてればいいだけ。わがまま放題してもガッツリ介護で、とにかくいい感じにしてくれる。タイヤの役割って制動力と駆動力を路面に伝えることなんですが、その仕事内容がSPに比べて素早く丁寧かつ緻密、加えて乗り手のアクセル操作に対するフォローまで入る。これタイヤがナチュラルにトラコンの役割しちゃってますよ。全体的にタイヤの挙動に素人っぽい隙が全然ないんですよ。メチャ仕事できますよ!!こいつはガチのプロですよ!

「タイヤが良い仕事すると、こんなに思い切り良く走れるのでしょうか?すごいですぅ~」

って感動しつつ、アホの子状態になってコーナーに飛び込んでいける。・・・でもその一方でタイヤの誘惑にのっかって走ると、とんでもない速度になっちゃうから「ダメダメ!自分はセメントマッチをしたいわけじゃないのよ!」って自分に言い聞かせながら走らなきゃならない。

「ストリートトリプルRSを購入して良かったな・・」と思うのは、現代のバイクのテクノロジーを全身で感じることができることです。エンジンしかり、タイヤしかり、シャーシしかり。この手のバイクって自分の中では20年以上前の記憶で止まってますから、そのギャップが凄い。昔の私の認識からすると、これだけ軽くて大馬力のバイクのアクセルを峠でホイホイ開けられるってのはちょっと信じがたいですよ。若い頃なら間違いなく滑ってコケてるような状況でも全然平気。189㎏、123馬力のバイクを峠でリラックスして走らせられること自体が、昔の感覚からすると既におかしいわけなんです。

ジァーマン
(とにかくジャーマンスープレックスが描きたくなって「なにがなんでも最後はジャーマン」というコンセプトで製作した漫画。オチの強引さがヤバイ。)

あと、当時と変わったと言えば
「お尻を落とさないと乗りにくいこと」ですよね。昔のバイクでケツを落としてヒザを出してたのは、当時のラジアルはコケやすかったからなんですよ。今みたいに超扁平じゃないし、しなやかさもなかったから、峠であんまりバンクすると滑りゴケしちゃう。そうならないようにバンク角を探らなきゃならなかった。あと「限られたバンク角の中で可能な限り遠心力を緩和してコーナリングスピードを上げよう」ってのがケツ落としのメインだったわけです。ハイスピードコーナリングと転倒防止を両立するための技術だったんですね。


だから、会得するのはやっぱそれなりに難しかったんですよね。そもそもバンク角を計るために足出してるのに、「どこまでバンクしたらコケるかもよくわかってないし、安定して寝かせる技術もない」ビギナーがチャレンジしてもどうしようもなかった。でも変な雑誌の影響と若さ故の盲目で、もうヒザ擦りたくてしょうがないんですよね。結局、無理膝にチャレンジして、メチャメチャコケて痛い目に遭い、大量の金を失ったわけです。

でも、私が今ザラブ嬢でお尻を落としてるのって、昔と違って「単にその方が走りやすいから」というミもフタもない理由です。今のタイヤって、カラダをコーナー内側に落として重心をどんどんハジに寄せつつ、ヘリに荷重かけてくと、魔法みたいにどんどん曲がってくれるんですよ。その方が車体もビシッと安定するし、グリップも出てくるしで、リーンウィズより全然走りやすいんです。

スピードと曲率がバランスすれば、グリップ力を維持したまま、どこまででも寝ていく気さえする。走ってると昔ともう原理原則がひっくり返っちゃってるんだなー・・って改めて衝撃を受ける。だから現代では、公道で無理にヒザ擦る意味ってないんですよ。昔と比べてグリップ限界がバカみたいに高いから、バンク角探る必要なんてない。遠心力に対抗するにはタイヤにまかせてどんどん寝かせればいいだけだし、現代のタイヤの限界超えるようなコーナリングスピードが出るカーブなんて公道ではほとんどないと思う。

(私が見た中で最も優雅で美しく完璧なジャーマン・スープレックス・ホールド。ジャーマンは「高さ」、「美しい弧」、「堅固なブリッジ」があって初めて完成する芸術品です。投げっぱなしや、グリップを解いて危険な角度で落とすものは見た目は凄いけど好きじゃない。)

この20年でタイヤは信じられないくらい進化してる。そもそもハイグリップタイヤって矛盾してるんですよね。だって高負荷がかかる高性能タイヤは市販のツーリングタイヤより高剛性じゃなくてはならない。その一方でグリップが欲しいから柔らかいコンパウンドを入れたいわけですよね。でも柔らかいコンパウンド入れれば、タイヤ自体も柔らかくなっちゃうってジレンマがある。気持ちよく走るためには表面は柔らかいけど、内部はしなやかに堅くしなきゃいけないってことです。これって簡単なようでいて実は凄く難しいことですよ。

品がない例えだけど、理屈は我々の3本目の足と同じです。外側のゴムであるコン〇ームはソフトかつしなやかで感度が良いものじゃないとダメだけど、内部はバイアグラ飲んででも剛性確保しなきゃいけない。どんなに素晴らしいゴム使ったって、やっぱり大事なのは股間砲のクォリティそのものじゃないかと思うんですよ。タイヤだってコンパウンドだけで見るならロッソもSPもショルダー部はSC2と同じコンパウンド入ってるってメーカーアナウンスです。でも、乗るとまったく違うのは、やっぱりゴムの中にある芯のあり方が違うんだろうと思うんですよ。

スパコル系はラジアルの先駆者であるピレリのノウハウを投入した高強度のスチールベルトを縦横に配して加速減速時とバンクしたときの横方向の引っ張り剛性を確保しつつ、コンパウンドは柔らかめでゴム成分も多めに設定。寝かせるとゴム部分はしなやかに潰れていくけど、超極細のスチールベルトで作られたしなやかな骨格がタイヤを有るべき姿に保ち続けるので、乗り手はグリップの安心感と剛性の頼もしさの両方を感じられるって寸法です。

路面追従性も高く、超扁平タイヤでタダでさえ接地面広いところ持ってきて、コンパウンドが路面に張り付くように潰れて接地面を確保するから、タイヤに荷重かけて潰せば潰すほどグリップが上がっていく。ホント憎らしいほど理詰めです。200馬力なんてエンジンが公道で楽しめるようになったのもこういうタイヤが出てきたからでありましょう。昔のラジアルだったらズベスベでズルズルのタコ踊りになってますよ。

いずれにせよ、私はSC2とSPの違いにかなり衝撃を受けてしまいました。乗って違いがなければ、これらのタイヤが個別に存在する意味がないので、違いがあるのが当たり前と言えば当たり前なんですが、やっぱりレース用っつーかプロ向けは凄いなぁと・・。まぁ、良いところだけじゃないのはわかりきってるので、今後SC2のライフコストや冬に向けての温度依存性がどの程度なのかも確認していくことになるんですが、これだけ路面追従性が高いと、「センターはともかく、バンクしたときのレイングリップは下手するとSC2の方があるんじゃないの?」と思ったりする。とりあえず晴れた峠では凄まじく扱いやすいことが確認できました。タイヤ交換直後はグリップがなんか安定しなかったので、暖まってないときにはもっとスベるかなぁ・・と思ってたんですが、ナラシ終わってからはスベる気配はない。路面温度が10度とか切るとわかんないですけど・・・。

あんまり素敵な感触なんで、初期の懸念はどっか行っちゃって、以前ブログのコメントで指摘していただいたように
「これフロントもSC2入れてみたらどうなっちゃうんだろう?」とイケないことを考え始めてる今日この頃なんですよね。