いよいよ常夏がやってまいりました。この焼けるような日差しの中、最も活躍しているのが夏バイクのダイナです。私にとっては「ハーレーの夏、日本の夏」って感じなんですよね。今回は真夏のハーレー事情ということで、以前ちょこっと書いたブログのパート2になっております。

以前のブログはこちら→「真夏のハーレー事情(空冷エンジンを夏に乗りたくなる謎について)」 

ダイナのTC96エンジンはカタログに馬力載ってませんけど大体50馬力~60馬力くらいです。いやーそれにしても、1584ccで50馬力程度って凄いですな!リッターあたり31馬力ですよ!ププッ!いまさらですけど低っっっっっっっっく!!250ccに換算すると8馬力(笑)!!エエエエエエエ!?ナメてんの?エンジンがまろやかマロマロで平安時代かっ!って叫びたくなるエストレアの半分しかねーぞ!これで車両本体価格200万円超えてるなんて・・・もはや価格対馬力に関しては誠意が微塵もないですな。

これじゃ多くのSS乗りの方々がハーレーをクソバイク認定するのもわからんでもない。そりゃね。私自身もクソバイクってしょっちゅう言ってますがね。いやー改めて数値で見ると完全無欠のクソですね。でも実際走ってみるとこれで十分っていうか頼もしさすら感じるわけなんですよ。馬力は横に置いておいて、夏に最果てに旅立つにはなかなか含蓄があるエンジンだと私は思ってます。特性を低回転トルク型に振ってあるんで、夏場の酷暑の中でもエンジンの発熱量を抑えながらクルージングすることができるんですよねぇ。

そりゃ回転上げて回し続ければ耐えがたい熱さになるんでしょうが、もうダイナでしゃかりきに高回転イジメることは少なくなりました。ダイナは以前調子に乗ってエンジン回しすぎてタペットぶっ壊しちゃって、「これそういうエンジンじゃないなぁ・・・」と改めて感じましたんで、それからは割と丁寧に扱ってるんです。

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(いやもう最近は大気がメチャクチャ熱い。人族に対する手加減が一切ない感じです。日中走るとコロニーレーザーにソフトに焼かれる気分が味わえちゃいますので、朝方、夕方メインに走ってます。)

パンアメリカに試乗して改めて感じましたが、高出力の大排気量車はやっぱ熱い。排気量はダイナの方がありますからダイナの方が熱いんじゃないの?って思われるかもしれないけど、一概にそうはいえない。確かにダイナも渋滞にハマると熱いですけど、パンアメリカに比べればカワイイもんです。

そもそもエンジン出力が高く高回転寄りのバイクは、エンジン内で燃やしてる火力のレベルが違う。爆発力が大きくエンジンに火をくべる回数(=回転数)も多いから熱量は半端ないです。高回転設定でもストリートトリプルRS(765cc)くらいの排気量ならそこまで熱くないんですけど、リッタークラスになると、途端に熱さが限界突破してくるバイクが出てきますよね。特にV型エンジンは乗り手の股間に後部シリンダーが寄り添い状態ですから、精子大虐殺というくらい熱くなるケースがある。

一般的に考えると、空冷エンジンは水冷に比べて熱的に不利です。エンジンの熱を空気中に放出するしか冷却のすべがないんで、渋滞ハマって風があたらないとあっという間にチンチンになるし、熱安定性も低い。ヒドイときはエンジンがダレダレにタレてきます。でもフレッシュな風さえあたってしまえば、一気にエンジンは冷える。耐えがたいところから耐えられるところまで走行風で一気に温度を下げることができるわけです。風をあてて冷やす「直接空冷」ですから、冷え方も実にシンプルでわかりやすい。機械なんだけど冷却方法は地球に住まう生命体と同じ理屈なんですよね。

これに対し、水冷エンジンは水で冷やすとは言っているものの、実質的には「間接空冷」です。エンジンの膨大な熱量をいったん水という物体に押しつけてますけど、その水も「最後は空気で冷やしてる」わけなのです。

水冷エンジンは熱安定性が高く熱くなりにくいですが、安定してるということは「一度熱くなっちゃうとそう簡単に冷えない。」これが夏場の水冷リッターバイクの地獄を演出してるわけですよ。辻褄があってるときは素晴らしいんですが、普段は緻密で計画的な優等生だけに、一度テンパるととことん理不尽になり、その対策もしにくくなるんですよね。もう最後は脳死状態で冷却ファンをブン回してラジエターに風をあて続けるという「強制空冷ポンコツ状態」になる宿命を背負ってる。

バイクって車体のスペース限られてるんで、排気量を上げて発生熱量が倍に増えても「横幅2倍のラジエター」つけるわけにはいかないし、「冷却水の容量倍にする」わけにもいかない。高性能エンジンはアベレージが高速寄りになるんで、空気抵抗とのバランスもとらなきゃならないし、運動性との関係で車体軽量化もしなきゃいけないですからね。だから、エンジンの出力が大きくなればなるほど、エンジン冷却は厳しくなり、ギリギリのマネジメントになっていく。結果として夏場の「大排気量大パワーバイクは冷却ファンの熱風地獄がお約束」ってことになります。

最近料理の世界で熱風フライヤーってのが出てきて「高温熱風で食材全体を包み込み、まるで炭火で焼いたような美味しさを実現♡」なんて広告宣伝されてますが、これ聞いたとき「夏場のリッターバイクの境遇そのままじゃない?」って感じちゃいました。私ははるか昔から、真夏にリッターバイクに乗る度に「美味しく調理されている気分」を味わってまいりましたが、あながちそれが間違いではなかったことが調理器具によって実証されたといえるでしょう。

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(ダイナさんがぼやいてますが、実際、夏は小排気量の250ccあたりを選択しておけば排熱も少なく問題は抜本的に解決するんです。でもそのように割り切れないのが人間というオロカで悲しき生き物なんですね。)

「わーい調理器具だね♡」という突っ込みが入りそうな水冷エンジンに対し、大排気量空冷エンジンの熱さもそれなりに酷い。風が当たらない停止時には車体周辺がサウナ的な暑さになります。でもサウナなら、「これは調理ではなく健康増進なのであーーーる!!」というやせ我慢ができます。実にアホらしいかもしれませんが、乗ってる私としては「温風調理よりサウナの方がまだマシ」ってことですね。

これに加え、ハーレーは走行風だけでエンジンを冷やせるよう、エンジンの熱を極力出さない低回転トルク型設定になってます。
この特性が極限状態で乗ってる人間には大いなる救いになる。エンジンを必要以上に熱くしないという配慮は乗ってる人間にも優しいんですよ。

空冷バイクはエンジンと車体、人体とのクリアランスを広めにとり、空気のヌケを良くしてあるから、熱が伝わりにくく、熱さをシャットアウトしようとすれば創意工夫でなんとかなる。
人とバイクが走行風で共に冷えていくということは、「人とバイクが同じ問題を共有している」ということですから、いわば運命共同体なんですね。

気温35度でもデニムでダイナに乗れるのは、この12年間、私がハーレーでの夏を諦めずにヒートマネージメントを考えてきたからです。だから一番暑い夏場に私のダイナは距離が伸びる。街中のストップ&ゴーはしんどいですが、山に入って渋滞さえなければ、走行風がバイクも乗り手も冷やしてくれる。この一体感が夏場の空冷エンジンの醍醐味ですねぇ。

クルーザーの熟成度や実力っていうのは、「過酷な環境でも快適に走れるかどうか?」だと思うんですが、そういうインプレってあんまりないんですよね。速く走ることに特化したSSやメガスポーツならともかく、旅バイクにカタログ馬力って割とどうでもいい。人を遠くに運ぶ能力って馬力よりトルクフィールで、それはカタログスペックにはほとんど出てこないんですよね。正直、旅バイクなら最大トルクの発生回転数が低く、馬力性能も低い方を選ぶまであります。ハーレーもあんまり排気量を上げてないアンダーパワーのエンジンの方が好印象だったりするんですよ。

この世の中に蔓延するスペック重視、刺激重視のインプレを見てると、最高と最低しかないような気分になりますが、最高と最低の間にはとてつもなく大きくて広い世界がある。その世界を深く知るほど、「中庸なものの中にある個性や奥の深さ」こそ、実は味わい深いものなのだと感じるようになります。

一番であることをやめ、中庸を受け入れた時から、バイクも人も自由になる。自由なものほど、乗り手が何を求め、何を重視するのかが試される。

ハーレーの夏場のしぶとさは、ハーレーというバイクの大事な能力の一つです。ハーレーは旅バイクに特化した機械ですから、必要以上の性能はないけど、旅先のあらゆる局面で頼もしい。常に乗り手を守りつつ、決して土俵を割らない強さって、妻子を抱くこの世のオジサン達に求められてるものでもあるんですよね。

私は年を取って、少しづつハーレーの泥臭く、へこたれない強さに惹かれ、共感するようになった。それは自分自身の境遇をバイクに投影しているようなものだったのかもしれないですね。