ストリートトリプルRS(以下私がつけた「ザラブ嬢」という愛称で表記します)を購入して、一番衝撃を受けたのは何か?実はタイヤです。久しぶりにドライ路面重視のハイグリップタイヤを履きましたが、まー、いろんな面で「万能系ツーリングタイヤとこうも違うものか・・・」と相当な衝撃を受けてます。

私のザラブ嬢の標準装着タイヤは「ピレリ ディアブロ スーパーコルサ  SP  V3」(以下「スパコル」)というピレリの公道用ハイグリップタイヤの最高峰。和訳すると

「超疾走する悪魔 公道スポーツ仕様 バージョン3」

完全な中二病です。ありがとうございました。(ちなみにSPはスポーツ・パブリックロードの略ではないかと)

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(もはやミゾなぞ飾りです!的なデザイン。カッコいいことに全振りしてますね。ウェットグリップグダグダなのは見ただけでわかる。)

いやーコイツは凄いです。私は20年近くガチ攻め系のバイクに乗ってませんでしたので、凄く昔のハイグリップタイヤしか記憶がないし、その記憶だってもうおぼろげです。そんな私がこのスパコルから感じた衝撃ってのは「もうこれだけでブログ一つは確実に書けるな・・」ってくらいのものでした。実際今書いてるんですけど。

正直言って、こいつのドライ路面のグリップは頭おかしいです。絶対的なグリップ力もおかしいですが、乗り手に伝わってくる「私、しっかりグリップしてますから!!路面にしがみついていますのよ!!」という主張レベルが凄すぎる。タイヤが充実してるっていうと変な表現かもしれませんが、それ以外うまい表現がみあたらない。

だから、同じコース走っても、ダイナやきんつば(ゴールドウィング)に比べ、ザラブ嬢のバンク角は圧倒的に深い。この二車はステップ早々に擦っちゃうってのもあるんですが、じゃあバックステップ入れたら寝かせられるのか?っていうとそりゃ無理なんです。

公道で深く寝かせるためには、深いバンク角でも余裕と安心感を感じられなきゃ無理。公道ってヘタにコケたら今後の人生棒に振る可能性がありますから、今のビビリ入った私だと、安心感を感じられるところまでしか寝かせることはできない。

そんななか、このピレリのスパコルは「一体どこまで寝かせたら不安感に襲われるのかしら?」っていうほど、どこまでも安心感が持続するんです。膝がつきそうなくらいバンクしても母のぬくもりに包まれるような、絶対的な安心感がタイヤから伝わってくる。ツーリングタイヤだとバンク角が深くなるほど安心感が削られていって、それと比例するように不安感が増してくるんで、それが抑止力になるんですけど、スパコルはどこまで寝かせてもこの抑止力が効いてこない。

私の限界レベルではこのタイヤの鬼グリップの領域を全然超えられないんです。過去履いてきたきたタイヤの中で、寝かせたときに、これほど安心感のあるタイヤはなかったといってもいいでしょう。

「そんないいタイヤなら、どのバイクも全部スパコル履けば良いじゃん!」って思われるかもしれませんが、そんなオイシイ話はこの世にはないわけですよ。そう、ここまでの話はあくまでドライグリップに限定した話です。

公道用タイヤとして評価した時に、このタイヤを「ヤベぇな・・」と思うのは「ウェットグリップほぼ捨ててる」ところです。もう特性のピーキーぶりが凄い。ドライグリップは比類ないほど凄いですが、そっちに振り切っちゃってる。

いえね、公道走行用に売ってるタイヤだから排水用の溝はありますよ。だからウェット走れないワケじゃないです。でも、それはあくまでエマージェンシー用みたいな感じで、とりあえず、「雨でも走れることは走れる。」っていうレベル。ウェット環境では、ドライグリップにあった安心感は消え去って、不安感しかない。

私がいつも走るホームコースって山奥の非常にタイトな崖沿いのワインディングなんで、コーナー途中で山水が路面を横切ってるところが何カ所かあるんですよ。スパコルはこの部分に乗った瞬間一気にグリップが抜けちゃう。もうね。フロントから一発で滑り出しますよ。その挙動はツーリングタイヤと違って実に唐突。サーキット路面なら雨でもソコソコ食らいつくのかもしれませんが、公道の路面なんてサーキット路面のグリップに比べたら、鏡みたいなもんですから。全然グリップしないんです。

通常のタイヤみたいに、グリップ残しながらズルッて流れる感じじゃなくって、スパッと一気にグリップ抜ける感じ。メチャメチャ食いついて「最高でーす!」ってところから、手応えがいきなりなくなり、「最低でーす!」ってところまで一気に振れるわけですから、ギャップが凄くってこれはビビる。

私みたいなコケ慣れしてる人間は、雨水で路面の色変わってるのが見えた瞬間「ヒィィィイ」て感じで車体を起こしてスリップダウンが回避ができる速度まで減速しますが、それでもタイヤにある程度圧がかかってると、ズルって気持ち悪くフロントが流れる。リアは滑ってもトラコンが抑えてくれますが、フロントがスライドするのはどうにもならない。こっわ。

雨上がりのハーフウェットで走った時も、ちょっとバンクするとリアタイヤがとたんにグリップしなくなるから、立ち上がりでトラコンランプが光りまくりです。パワーかけるとリアが滑り、それをトラコンが感知してパワーを抑えるという悪循環になるため、開けても車体が全然前に出ていかない。雨用のコンパウンドを少々混ぜたところで、ドライ路面に特化したハイグリップタイヤのウェット能力なんてこの程度ってことですよ。

また、冷えてるときも接地感が希薄になってグリップしないので、冬はほとんど走らない。タイヤに粘りが出てくるまで、相当ウォーミングアップしなきゃいけないですし、休憩するとすぐタイヤの温度が下がっちゃう。オールシーズン使うなら、もう少し温度安定性の高いタイヤの方が扱い易いことは間違いないでしょう。

あとタイヤの減りもゴリッゴリ。私がダイナで一番性に合うと思ってるメッツラーのマラソンウルトラは1万㎞くらいもちますが、ザラブ嬢のスパコルのフロントは美味しいところまでだと3000㎞くらいしかもちません。もったいない精神でミゾ消えるくらいまで粘ってせいぜい3500㎞。公道タイヤとしては寿命がカゲロウのように儚いですね。センターはコンパウンド固いのでソコソコ持つんですが、側面が鬼のように減る。もう減り方のバランスが完全におかしいですよ。

「はーー。なにこれ・・金食い虫だ・・」とため息をつきつつ、新品のフロントタイヤに履き替え、まっさらのタイヤに目をやって、ハッと言葉を失い、またひとこと。

「・・・ううっ・・ミゾ浅っさ・・・(両目から涙の滝)」

もうね。切ないですよね。タイヤのグリップ剛性確保するためにこの手のタイヤのミゾが浅いのは理解してるんですが、理解と納得はまた別のところにある。

私も長年バイクと付きあってますが、自分が痛い目にあう立場にならないと、この手の経済的問題に真剣に向き合うことはまずありません。人の財布の中のお金はどこまでいってもリアルじゃないですから。「フハハハ!ケツの毛まで抜かれるがよい!」とすら思っている。自分が身銭切って初めて「切なさの意味を知る」わけですね。

新車の時はいろいろと他に見る所があるので、タイヤのミゾはあまり気にもしてなかったんですが、タイヤ交換直後にまじまじと新品タイヤ見ると、「ミゾ浅スギィィイイ!!」って叫びたくなる。もうね。新品でメッツラーマラソンの5分山くらいしかないんですよ。履き替えて大枚払った瞬間から5分山気分ですよ。胸に吐き気がこみ上げてきます。

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(ザラブ嬢で一番怖いのは狭い山道でバンクしているとき路面を横切る流水や、道路を横切るヘビですね。特にヘビは昔一度踏んでコケてるんでトラウマが凄い。今でも2年に一回くらいは路上にヘビを見かけて、死に神を見るような気分になります。)

しかも、フロントタイヤはすぐヘタレるのにリアタイヤはムダに頑張ってくれて5000㎞くらいもちますから、フロントとリアの交換時期が明確にずれてくる。短期間で交互にちょこちょこ前後のタイヤを交換していかないといけない。

もうなんといいますか。PCゲームでいうと「シュチュエーション限定で力を発揮する課金アイテム」みたいなもんでしょうか。路面が乾いてさえいれば文句のつけようがない性能を発揮する反面、ウェットグリップは落第点だし、一般のバイク乗りの経済感覚を踏みにじるかのようなハイコスト。

あまり計算したくないですが、ランニングコストは5千キロでフロントタイヤ1.4個、リアタイヤ1個の損耗ですから、約8万円くらいでしょうか?これがどういうことかわかりますか??「ななななんと1キロ走行あたり16円ですよ!!距離の比率でいうと、ハイオクガソリンの倍近いコストなんたす!!」(←興奮のあまりミスタイプ)維持費の癌ですよ!どうすんのこれ!

そもそもザラブさんはカテゴリー的にはストリートファイターなんですから、公道でウェットグリップ捨てちゃダメ(笑)。ランニングシューズのラバーソールにミゾがないみたいなもんですよ。サーキットユースがほとんどで、パワーデリバリーが200馬力超えてるCBR1000RR-Rと同じタイヤがついてること自体、頭がおかしいといえる。ストリートトリプルR-LOWや新型ドカは、カテゴリーポジションわきまえてロッソ3ですよ。ああ、素晴らしきかなこの常識感!!妥当性!

この手のタイヤは、バイクを購入した後、頭が壊れたジャンキー達が自己責任で履き替えるようなタイヤです。それをメーカー純正でいきなり履いてくるか?多くのライダーが「普段使いに・・」と召喚したキャラが装備している武器がなぜか「特定イベント攻略用の課金武器」っていうくらいトンデモない設定をしちゃってますよ。

しかし、そんな馬鹿げたタイヤに対して、シャーシはまったく負けてないどころか、当たり前のように履きこなしてるところが凄い。ドライな路面に限定すればまったく違和感なく、バイクから伝わる自在感、無敵感、万能感は、立ち向かってくるコーナーをバッサバッサと切り捨てる伝説の勇者になったよう。私のような低レベル冒険者が魔王と戦えるような気になってくるから始末が悪い。

このワインディングでの悦楽を一度味わうと、課金額が高くてもタイヤのグレードを落とせなくなる。いろんなデメリットもありますが、それを補ってあまりあるほど、特定のシュチュエーションで得られる快感が突き抜けてます。これ、私みたいなシュチュエーションごとにバイクに役割分担させてる複数台保ちには非常に都合が良いんです。

ストリートトリプルRSの純正タイヤ「スパコル様」は、あまりにも戦闘特化型でした。車体やエンジンは割と奥が深いんだけど、タイヤはマジでガチ殴りしかできない。戦闘系ステータスはカンストしてるけど、大飯ぐらいで、路面デバフに対する防御力なしってキャラづけですね。まぁ例えていうなら「他のパラメーター最強なのにインテリジェンス1の残念女神」と評価されてる「このすばのアクアさん」みたいなもんです。こういう人が一人出てくるだけで、世界にラテンの香りが漂い出しますが、これを養うのは大変ですよ。

(youtubeから引っ張ってきたこのすばのアクア様の動画。酷いヒロイン、略して「ヒドイン」の典型例。この年になると、ややこしいアニメよりバカに徹したものの方が好感が持てる。)

でも、アクアさんが「駄女神」と呼ばれつつも大人気なように、この手のロマン型タイヤって決して支持を失わない。だって私を含めバイク乗り自体がそもそもおバカですからね。

私はこの世の中でバイク乗りが一番愛すべき「残念消費者」じゃないかと思うんですよ。だってバイクに対する知識と常識を山ほど詰め込みつつも、それガン無視して快楽方向にベタ踏みし続けますよね。最強風系呪文で女子のスカートめくって大喜びしてる変態勇者みたいなもんです。

ピレリはそこを見切ってる。「ディアブロ スーパーコルサ」というネーミングにも、「ククク、アホなバイク乗りはこの最強っぽいネーミングに身もだえするはず・・。」という巧妙な策略が透けて見える。カッコいいネーミングとハイグリップがあればあとは何もいらない。それは「美人で巨乳でバストが大きければビッチでもいい」という男の夢とほとんど同義(すいません。コダワリのあまり同じ意味を2つ重ねてしまいました)です。

そんな脳病に冒されたバイク乗りのロマンチシズムをエグり続けるレーシングレプリカタイヤ。その代表格がスーパーコルサなんです。