先日パンアメリカ試乗してきたんで、今回はその試乗記です。

ただ試乗記っていってもあんまり書くことないんですよね。だって20分ほどの試乗じゃ、バイクのなんたるかってのはほとんどわかんない。物忘れもヒドイので、自宅に帰ってテキスト叩きはじめる頃に脳内に残ってるのは大雑把な印象くらい。

特にシャーシ性能やサス性能なんてディーラー付近の街中を流して走った程度でインプレなんて無理です。短期試乗で適当なこと書くわけにもいかないんで、とりあえず印象に残ったところだけインプレすることになりますがご容赦を。

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(こちらのパンアメリカ、まるでJeepを彷彿とさせる色使い。ミリタリールックでM16ライフル担いで乗りたくなりますね。)

まずこのバイクの売りである足つきですが、ノーマルモデルはヤバい。直立さえすればなんとか運転できそうですが、サイドスタンドの状態から、直立まで起こすのが一苦労。

ゴールドウィング系列乗ってきて重さ麻痺を起こしてる私がサイドスタンドの状態から直立させるのに「ぐぬぬぬ・・」ってプルプルしてるんだから、私以下の身長の人には苦行でしょう。「足が短い」という現実をバイク起こす度に自覚させられることになるなんて、なかなかにミジメな気分です。

でも、これがお高いスペシャルになると、あ~らびっくり。私でも余裕で足がついちゃう。なんでなの?それはリアの電子制御サスペンションに車高調整機構が組み込まれてるからですね。なんとこれ停止時に5㎝も車高が下がっちゃうという画期的機能。「5㎝のシークレットブーツ履いてんのと変わんない。」わけですね。足の長さが5㎝伸びるっていったら凄いですよ。身長でいったら12㎝くらいかさ上げされた感じじゃないですか?つまり私でいうと身長が168㎝から180㎝の人並みに足が伸びたのと同義になる。ニセあしながおじさんですよ。

しかも、この魔法のシークレットサスの動作は極めて自然。停車時に車高下がってるってのも、試乗じゃほとんどわからないんで、なんか騙されてる気になるんですが、「これなら立ちゴケしないわな~」って安心感がある。

「ケッ!!車高を電サスで下げるなんて、所詮ギミックじゃねーか!軟弱ゥ軟弱ゥーーー!!」って他メーカーは馬鹿にしてるかもしれませんが、バイクの商品力考えるとこれはあなどれない。だって、これまで身長175㎝くらいが下限だったアドベンチャーの顧客層が身長165㎝くらいまで下がるんですよ。これだけで、どんだけ裾野が増えるか。

カタログスペックとかガレ場性能を語る前に、バイクはまずは普段使い。乗り手と普段乗りでフィットするかどうかってメチャメチャ大事だと思う。特に大排気量車は趣味の面が大きいので、有り余る排気量と技術コストを夢と日常の両方に割り当てて「気楽に使える実用性」「わくわく感」を両立できないと財布のヒモは緩まない。

新型のゴールドウィングは前進後退機能と低重心で「車重の不利を消しちゃおう!」ってコンセプトでしたが、パンアメリカは「電サスで車高の不利を消しちゃおう!」って発想。乗り手のストレスをバイクの機能で取り除くというこの手の考え方はテクノロジーの使い方として非常に面白いし、これからのトレンドになるかもしれない。

お次にエンジンですが、最初にお断りしておきますと、レボリューションMAX、全っ然回せませんでした。なぜ回せなかったか。今さらスピードにビビったんじゃありません。「左太ももが熱すぎて回せなかった」んです。私が試乗した日は外気温33度の真夏日。ディーラーにはジーンズにライディングシューズで試乗に行きました。

私のダイナは空冷ですが、カスタムにあたってもヒートマネジメントはしっかりやってるつもり。気楽に乗りたいんで、夏でもデニムで乗れるよう、ガスを少し濃いめにしてエンジンの発熱を抑えてあるんですね。

で、問題はパンアメリカの方です。このバイクもVツインですから後部シリンダーヘッドが股間部分に食い込んでるんですよ。で、このレイアウトの水冷エンジンで150馬力もパワー出しちゃうとどうなるか?おわかりになりますね。私が目を細めつつ思い出すのがヤマハのV-MAXとホンダのV4です。どちらのエンジンも素晴らしいエンジンでしたが、パワー型のV4エンジンの夏場の股間の熱さは凄いですよぉ(笑)。もうね。「マジでクッッソ熱い」ですから。

空冷が蒸し焼きにされるような熱さだとすれば、V4は股間をソーラーレイで焼かれるような熱さ・・現行だとドカのパニガーレがV4採用してますが、パニガーレのスペックを見た瞬間

  「ア゛ッ!」

っと「股間を押さえてしまった」のは私だけじゃないはず。タダでさえ熱い大排気量V型4気筒に唯我独尊で自己都合の機械を作るドカティ、加えて214馬力の組み合わせですからねぇ。もう「オマタ焼きに来てるでしょ・・激ヤバでしょ・・」って呟いていたら、ほどなくカナダの街中で炎上するパニガーレがニュースになった。「これぞイタ車なのじゃああ!!」って感じですよね。ドカティはすぐさまオーナーに新車を用意したようですが、タンクには「5分以上アイドリングすると火災になっちゃうの♡」っていう注意書きが貼られてるらしい。この手の注意書きは割とありますが、5分なんて具体的な数字書いてあるのドカくらいじゃないでしょうか。これは「5分で装着者もろとも大爆発」するズバットスーツのパロディなのかな?さすがドカティ。これこそが愛すべきイタ車道ですよ。

パニガーレ
(真っ赤な車体が真っ赤に燃えるゥ!あらゆる意味で燃えるバイク。それがドカティ・パニガーレ。)

まぁハイパワーってのは熱と引き換えに得られるものですから、しょうがないっていえばしょうがないんですけど、東京の長い信号待ちで人間トーチになるってのはゾクゾクする。

で、パンアメリカも予想通り、「股間コロニーレーザー」でした。エキパイを取り回してる右側より、とにかく左太もも内側がヤバイ。遮熱性能皆無のデニムだと焼けるように熱い。スポーツモードで6000回転くらいまで回したら、左太ももが熱照射で耐えられなくなって、アクセルを戻さざるをえませんでした。・・久しぶりですよね、この股間がアメリカンバーベキューのチキンのように焼かれる感じ・・(遠い目)

私はまったり流してただけなのでニーグリップなんてしてないんですが、それでも股間の灼熱感は半端なかったです。低回転使ってる分にはまだいいんですが、中回転以上がなぁ・・・これちゃんと熱対策したパンツ履かないと夏場はアクセル開けられないですね。

パンアメリカは圧縮比が13.0:1というのもヤバみが凄い。私の乗ってるストリートトリプルRSはMOTO2のベースエンジンですが、それだって圧縮比12.7:0ですからね。いかにパンアメリカのエンジンが高圧縮設定なのかがわかります。しかも大排気量2気筒ですぜ。4気筒マルチエンジンならまだわかりますが、燃焼室がデカい大排気量2気筒で圧縮比13.0:1って・・すごくない?そりゃ膨大な熱が出てくるに決まってますよ。

私がスポーツスターSを推してる理由は、エンジンがパンアメリカほど無理してなさそうだからです。パワーも30馬力低いし、圧縮比12.0:1に下げてる。しかも動画や画像見ると、乗り手がデニム履いてるんです。パンアメリカはデニムじゃ熱くてとても乗れないから、スポスタSはエンジンの排熱が相当下がってるんじゃないかと思う。

街乗りバイクとして使うなら、軽装でカジュアルな服で気負わず乗れるってのは実用性としてはとても大事。大排気量エンジンでもある程度の熱量で抑えてあるってのは街乗りでは何気にポイント高いんです。パンアメリカは、せっかく乗り手の裾野を広げるために、電サスで車高下げてとっつきやすくしたのに、股間の熱放射で快適性を損なってハードル上げちゃってるんですよね。

私にはこの手のアドベンチャーで150馬力もいるのか?って疑問があるし、どんなときでも快適に走れる汎用性をアドベンチャーには求めたいんで、ちょっとこの熱放射設定は疑問を感じるところもある。ただ、こういう我慢ってバイクを降りて何年か経つと懐かしい思い出になったりするんですよね。やがて電動に移行していくバイク業界にあって、この股間の熱照射も「内燃機の思い出」として未来永劫記憶に刻まれるかもしれない。実際、私が過去を振り返ると、酷い目にあったこととか、苦労したことばかりがセピアの思い出になってる。「ンン~Vーmax・・夏は地獄だったなぁ・・」と目が細くなりますが、それが決してネガティブな思い出じゃないんですよね。

焼きごて5
(「股間焼き」と聞いて変な妄想で盛り上がるドSなダイナ嬢。昔は股間が熱いバイクに乗ると、「生殖能力に支障が!」などとネタにできましたが、もう男性としての繁殖期は過ぎちゃってるので、ネタも股間も立ちません。悲しいですね。)

肝心のエンジンのフィーリングですが、低回転は空冷みたいにドコドコいうんじゃなくって、ダバダバいってる感じ。鼓動に丸みがあってしっとりと回るところは水冷ならでは。かなり低回転粘りますんで非常に使いやすい。で、開けるとドリュドリュドリューって力強く元気よく軽快に吹ける。股間が熱くて全然上まで回せていないんで、これ以上のインプレはできません。ただ、アクセル開けたときの感触は良かったです。

レーサーみたいな高圧縮比で2気筒エンジンですから、もっともっと過激で品のない吹け方してもおかしくないところ、不快になるような過敏さはなく、優しさすら感じるところがハーレーらしいと思いました。乗り手に頼りがいを感じさせるアクセルの調教はやっぱりハーレーの文化というか、お家芸ですね。

あとストロークのある電子制御サスなので、低速では乗り心地は非常に良いです。ゆっくりとしか走ってないので真の実力は不明。低負荷の状態ではどんなバイクでも乗り心地はそれなりに作り込める。問題は飛ばして高負荷がかかったときにこの乗り心地が維持できるのか?ボロが出ないのか?ですが、ショーワがしっかり作ってるでしょうから、まあ大丈夫でしょう。

あと意外だったのが、乗るとちょっと前傾になるところ。完全な殿様乗りでもない。前傾になると、視線がそれによって下がるから、景色を見ながら走るっていうより、路面を見ながら走る感じになる。私はパンアメリカはもうちょっと殿様乗りのポジションなのかな?と思ってたんですが、割と戦闘的な走りもイケるポジションで、ちょっと意外だったですね。これも150馬力のパワーに対応するための設定なんでしょうか。

結局のところ、スピード、オフロード走破性、長距離移動の快適性、汎用性といろいろ盛り込むと、基本的にバイクは中庸になっていく。ストファイでもなく、クラシックなネイキッドでもなく、ツアラーでもなく、オフ車でもない。それぞれの領域を満遍なくソコソコにこなす。それがアドベンチャーです。逆に言うと対応力が高い代わりに「あらゆる局面でベストではない。」

局面ごとにバイクを複数台持ちするのが、これまでのバイクの選択だっだと思うんですが、いろいろと欲張って「一台でまるっと何とかしよう」というのがアドベンチャーです。

今回ハーレーはパンアメリカをパワー寄りで出してきましたけど、この手のトガり方は初期モノには良くあること。ディアベルも、ゴールドウィングも初めは走りの進化を売りにして船出します。それは最初は尖った人が買うからってのもありますし、雑誌で提灯記事書いてもらうには、それが都合が良いってのもあるし、バイクの進化や価格正当性、ライバルに対する優位性を伝えやすいからということもあるでしょう。今回は新型レボリューションMAXエンジンの一発目のお披露目ですから、ハーレーもナメられないように色々と気合いを入れた面もあると思う。でも、乗り手が公道バイクに求めるものは、メーカーの提示とは必ずしも一致しない。

パンアメリカも顧客の声を聞きながら、イヤーモデルで少しずつ修正していくんじゃないでしょうか。どんなに奇抜なモノを作っても、最終的には機能は実用に寄り添う。でも、そこにメーカー内の商品ヒエラルキーとかカタログ映えという「いらん化粧」を施す必要があるから商業プロダクトは面倒くさくなるんです。

このパンアメリカ、私自身は乗った印象は悪くなかった。ハーレー乗りはどう感じるかわかんないけど、ハーレーも国産も乗るバイク乗りとしては割と素直に受け入れられました。エンジン左側の排熱はデニムには正直キツイと思ったけれど、パワー型の大排気量V型にはあるあるですし、アクセルとエンジンの調和がとれてたし、試乗レベルでは変な挙動がなく乗り易かったですね。5㎝も上下する車高調整リアサスペンションの挙動が自然に感じるのも凄いことだなぁと思う。

現状は「大排気量巨大アドベンチャーで魔法のように足がつく」ってことしかよくわからないんですが、平均身長短足男としては、「不安感なく乗れるアドベンチャーというだけで存在価値あるんちゃう?」と感じるバイクでありました。