7月13日深夜(事実上14日)、ハーレーの新型スポーツスターが発表されました。今回は急遽予定を変更し、このスポーツスターSの感想をブログにしてみたいと思います。乗ってもないし、実物触ったわけでもないので、「写真とホームページのスペック頼りのインプレ」です。なんと6000字オーバーというトンデモない大長文になってますが、こんなの読んでられるか!って方は躊躇なく、右上のバツマークをクリックで(笑)

spotrsters
(国産バイク乗りも素直に格好いいと感じるデザイン。とにかく何が良いって、デザインがカテゴリーレスなところ。ハーレーのアイデンティティを保ちながら、誰にでも刺さりそうなデザインになってます。)

最初に一言。

 「このバイク、いろんな意味でメチャメチャ気合い入ってる!!」

いやもうビックリしましたね。王者ハーレーがこんな顧客目線のバイクを投入してくるとは思っていませんでした。これまでの木で鼻をくくったみたいな空冷モデルとアプローチが違いすぎて混乱する。何がビックリかというと、装備品やスペック考えると「ちょっと安め?お得?」とすら感じるところ。「ハーレー=高額(ボッタクリ)」というイメージは多少なりともありましたから、このイメージが崩れたところがでかい。これまでの殿様商売を反省し、ガチマジで商品作ってきた。

今の価格はバーゲン価格で、売り上げを横目で見ながら、そのうち少しずつ価格上げてくるのかもしれませんが、ブランドを声高に唄うハーレーにあって、今のところブランド料的なモノは一切乗っていないことは間違いない。

まず、このバイクで最初に出てくる議論は「ええーー?スポーツスターが水冷になっちゃったの?何してくれちゃってんの?」ってようなものだと思いますが、やめましょそんな議論は。極めて不毛だから。議論するまでもなく結論は見えてますよ。

だって「空冷だけのラインナップじゃ、ハーレーは生き残れない。」んですから。水冷レボリューションMAXのデキをダメ出しするんならともかく、水冷というだけでダメ出しするってのはハーレーというメーカーに「死ね」と言ってるに等しい。空冷エンジンと心中しろ!っていうのなら、そりゃもうしょうがないけど、それはあまりに酷でしょう。

くれぐれも誤解のないように言っておきたいんですが、私は空冷エンジンを否定してるわけじゃないんです。空冷エンジンはハーレーにとってとても大事な財産ですよ。私も12年間TC96に乗ってるわけですし。ただ、その一方で「水冷エンジンをかたくなに否定すること」も理不尽で視野が狭いと思ってる。

「カーボンニュートラルで内燃機はすべて電動に・・」って囁かれてる時代に、古いイメージを引きずって生き残れるわけがない。レガシーモデルの最大利用と、最先端技術投入モデルの両方でバランス良く企業イメージ作らないと、時代と共にサヨウナラってことになりますよ。変わらなくてもいいものは変えず、変えるべきものは変える。そのメリハリが必要な時代なんです。

過去の栄光はセピア色で素晴らしいものですが、過去のものは過去のものと割り切らないと、未来は決して開けない。私から見れば、これまでのハーレーは過去にしがみついてるだけで未来への布石がなかった。将来展望がない会社に株主はついてこないんで、株価が上がるわけがない。

水冷出さなきゃってストリート750とか作りましたが、売れ筋のスポーツスターを廃止するのが怖いから、ニューモデルで恐る恐る様子見しただけ。でもね。シェアの取り合いって存続をかけた戦争ですから、そんな逃げ腰じゃ戦えるわけがない。ライバルメーカーが腰の据わった新製品を出し、バイク乗りの意識改革も進む中で、旧態依然としたハーレーのラインナップは勢いを失い、シェアもどんどん落ちていった。
 
今までのハーレーに足りなかったのは「改革のための度胸と本気度」です。

私はミルウォーキーが登場したときにも「空冷はもう限界なんだから、さっさと水冷に移行した方がいいんでないの?」って言ってきました。でもハーレーはずっと主力モデルの水冷化に二の足を踏んできた。空冷を残すための努力とコダワリには頭の下がる思いでしたが、空冷に固執するあまり、他メーカーに比べ未来に向けたチャレンジが相当遅れたことは間違いない。

ハーレーは2000年はじめに水冷エンジンを搭載したV-RODというストリートドラッガーを発売しました。しかし、このバイクがアメリカの保守的ユーザー層の逆鱗に触れ「ハーレーらしくない」と、もうバチクソに叩かれて、鬼子扱いになったんですよね。ホントはこのエンジンで派生モデルつくって水冷ラインナップを増やしていけば良かったんですが、散々叩かれてトラウマになったのか、ハーレーはせっかく作った水冷エンジンを引っ込めてしまったんです。このとき経営陣には「水冷は鬼門」との思いが強く刻まれたのかもしれない。

でもハーレーは、そこで歯を食いしばって、水冷モデルをラインナップとして残すべきだったと思う。売り上げが大幅に減少し、環境的にも水冷エンジンしか選択肢がなくなった現状で、あわてて水冷に移行するってのは、企業イメージとしては明らかに後手、後発の不利って絶対にありますからね。経営的にも背水の陣になってしまうんで「今まで何をやっていたのか!」って株主にツッコまれてもしょうがない。

2021-Harley-Davidson-Sportster-S-6
(斜め右後ろからの眺めもいい。タンクの映り込みと美しい曲線には哀愁すら感じられる。)

とにかく空冷エンジンって環境対策っていう面から考えるといいとこ一つもないですから。水冷エンジンが纏っている「水のはごろも」がありませんので、人間でいうとマッパ又はフルチン状態なんです。環境対策って突き詰めるとより良い燃焼で、燃焼状態の緻密な管理が必要です。でもマッパでパワー絞り出して、冷却手段も風まかせじゃ燃焼の管理なんて到底できない。

「ねぇ、おじちゃん何でお服を着てないの?」っていたいけな児童の問いに対して、全身から滝汗流して湯気上げながら、「だって裸は味があるからねぇぇえぇえ!」って言ったって、「滝汗クサイ!ばっちい!変態!!」って子供が逃げ散らかすのが令和時代。

昭和を代表するリポビタンDの激アツCMも時代を超越することはできなかった。「ファイトォーー!イッパアァァアァアツ!!」っていうケイン・コスギの熱い絶叫は封印され、今や社交ダンスしながら、さわやかに「いつだって元気♡」ですよ。「ファイトって1発2発って数えるものなのか?」という私の疑問に答えを出さないまま、その絶叫はいつしか消え去っていたんです。

そしてついに、バイクの世界でもユーロ5という強烈な規制が実行され、ちょっとの汗も加齢臭も許されなくなった。世の中がみんなそんな流れですから、もはや逆らいようがない。

ホンダが新しく出したGB350の空冷単気筒エンジンも20馬力のトコトコエンジンですが、空冷エンジンに「いつまでも綺麗でいてね♡」って制限を課すと、「高回転を使うような過激な燃焼をできるだけしない」っていう選択肢しかなくなる。水のはごろもで温度調節できない以上、全力疾走すれば、滝汗からの加齢臭になっちゃうんで、発熱を抑えるためにアンダーパワーのトルク型にするしかないんです。どっかのバイク雑誌でGB350に対して「グース350みたいなエンジンを期待した」なんて書かれてましたが、今の時代にグース350みたいな回る空冷ができるわけない。

でも現状は、ゆっくりとしか回せない空冷の味付けが、速くなりすぎたバイク達へのアンチテーゼとなっているんでそれでいいんです。ゆっくりまったり走らせたときの空冷エンジンのトルクフィールはホントステキで独特のものがありますから。

でも、その一方で空冷エンジンだけじゃ限界っていうのも、もはや明らか。環境対応で空冷エンジンはパワーを殺されてるんで、向き不向きがハッキリしてるエンジンになっちゃってる。このため、多様化するユーザーの嗜好に対応しようとすれば、「空冷だけでフルラインナップやるのは到底無理」ということになる。

そんな状況でスポーツスターに水冷以外の選択肢があったか?ないです。「水冷なんてハーレーじゃない!」っていう人は多いかもしれないけど、このどん底の局面で、経営陣が腹をくくらないでハーレーの復活は望むべくもない。

で、腹をくくった商品の第1弾がパンアメリカだったわけですが、このバイクは基本的に保険です。パンアメリカはアドベンチャーという新たな市場を開拓する役割で、クルーザーが飽きられ、売れなくなったときの控え商品でもある。しかし、今度のスポーツスターは違う。こちらは、ハーレーの屋台骨の後継モデルですから。新型がコケたらエライことになる。つーかそれってもう「ハーレー倒産一直線」でしょ。

スポーツスターS3+1
(いやー、暑くなってまいりましたねぇ。空冷エンジンには、まさにファッキンホットな季節ですが、スポーツスターSは満を持して水冷で登場。上位モデルのビックツインに対して、パワーと走りは完全に下剋上。これからビックツインはスポーツスターSにチギられるのが日常になる。)

「水冷しか選択肢がない中での新型モデル」という前提でこのバイクを見ると、凄くよくできてるんじゃないかと思います。もう見た瞬間、バイクがぎゅっと締まってる。設計追い込まないとこんな締まった感じは出ない。構成要素をぎゅうぎゅうに詰め込んで、キッチリガッチリ設計しましたって感じが漂ってます。

スタイリングも私のダイナより全然カッコいいっつーか好みです。未来的デザインのファットボブと過去のスポーツスターのデザイン要素を混ぜた感じになってる。マフラーの取り回しなんて、こんなの最高じゃないですか?私こういうドラッガーみたいなスタイル大好きなんで、このカッコならカスタムせずともツルシで全然OK。

細かいとこ見てくと、まず何より車重が軽い。228㎏ですか?
「わぁ♡軽いハーレーってウソみたい♡やればできたのね。じゃあ今までなんだったの?」ってデコはたきたくなる。ただこの車重はどう考えても「鉄製パーツをやめないと実現できない」数値ですから、車体周りにアルミや樹脂を多用してるはずで、細かいところの質感が落ちてる可能性がある。この点は見てみないとわからないですね。

足回りを見ると、フロント、リアともショーワのフルアジャスタブル。フロントは倒立サスです。ブレーキはフロントはシングルディスクでラジアルマウントのブレンボを装着。アップマフラーでマフラー擦らないんでバンク角も相当ありそう。ミッションはスポは長らく5速でしたが、いよいよ6速。シートはデザイン優先で二ケツを切り捨てたシングルシートがついてます。

タンク容量もデザイン重視の11.8L。フォーティエイトは8Lなのでそれよか全然マシですが、3Lの余裕残して給油しようとすると200㎞切るあたりで給油しなくちゃならない。でも、フォーティエイトがメチャ人気なんですから、2L以上余計に入ると考えれば逆にプラスイメージになるのかもしれない。いずれにせよ、都市部でカジュアルに乗るにはこれで十分ってことなんでしょう。

電子制御はてんこ盛りのフル装備で走行モード選択もオートクルーズもある。日本における仮想敵はレブル1100、アメリカではインディアンFTRなんだろうと思いますが、水冷エンジンで特段の実績のないハーレーとしては、装備とスペックで負けるわけにはいかない。もう盛りに盛ってきてます。レブルにあって新型スポにないのはグリップヒーターくらいでしょう。
馬力も121馬力でインディアンのFTRに1馬力だけ勝ってるという大人気のなさ(笑)。

パンアメリカも同様でしたが、他のメーカーに対して装備品や性能で見劣りしない戦略商品として実にまっとうな仕上がりです。
「ブランドにあぐらをかくのではなく、ガチの実力勝負をやっていく」っていう覚悟をビシビシ感じる。作りと価格設定には「俺ハーレーだから」という思い上がりは微塵も感じられません。この盛り付けで185万円という価格は、内容の充実ぶりや軽さによる扱いやすさを考えると「ソフテイルがボッタクリに見えないか?」と心配になる。

ポジションは完全なるトノサマ乗りで、風を整流してくれるものは一切ないし、カウルもつけにくそうなので、乗り手は風の直撃に耐えるという熱い勇者魂が必要になる。高速走行すると、直撃する風で乗り手がエアブレーキの板になり、「心が折れてアクセル戻す」というハーレーお得意の「走行風を利用したナチュラルリミッター」が標準装備されてる模様。

すぽーつすたーS(これ乗るなら私は絶対にミッドコントロールにしますが、ミッドコンキットはきっと高い。本体は戦略価格で、ミッドコンとグリップヒーターで稼ぐつもりではないのか?)

エンジンはトルク型だそうですが、ボア×ストロークが同じなのにパンアメリカより低圧縮になってるんで、燃焼室形状変えてますね。

外観では、マフラーが足を横切るように通ってて、「これ右足が地獄じゃないの?」とか思うけど、今時のバイクなんで熱への配慮もしっかりされてるはず。ただハーレーが対策しても、「マフラー換えた瞬間、地獄になるんだろうな・・」なんて考えたりもする。このバイクは見てるうちに無性にマフラー換えたくなるけど、社外マフラーは耐熱バンテージでエキパイぐるぐる巻きにしないと、ジーンズ焦げそうですね。しかし、これだけキッチリかっちり格好よく作られると、無理にカスタムする必要ないなぁと正直思う。

長々と書いてきましたが、私的にはこのバイクはメチャクチャ印象が良いです。このシュッとしつつもみっしり感のあるデザインを嫌いなバイク乗りは少ないでしょう。女性でいうなら「スレンダーかつダイナミックなエロボディ」であることは写真からもう確定。機械的にもハーレーが他メーカーのバイクを研究し、「チャレンジャーのつもりで腹をくくって誠実に作った」ってことは、細かいところを拾っていけば一目瞭然です。価格もかなり心が動くところを突いてきていて商品として隙がない。トライアンフから引き抜いた野田CEOの値つけの魔力がはやくも発揮されてると思う。トライアンフも本体価格抑えてオプションで利益あげる戦略ですが、まずはそのベースになるバイクをしっかり売ろうってことですよね。

バイクってのは街中で出会ったり、道の駅で実車が止まってるのを見せつけるのが一番販促効果があるんです。だから、まず最初は車両本体を一定数売るってのが大事だと思う。これ納期が遅れてる空冷モデルを差し置いて、9月にいきなり一定数入ってくるそうですが、とにかく早期納車で街中を走らせ、多くの人に目にしてもらうってのはいい戦略だと思います。

新型Sスポは「ハーレーだから買う」って顧客層だけじゃなくて、いろんなメーカーをフラットに比較してバイクを買うっていう人にも刺さるバイクになってると思う。つまりハーレーとして魅力的なんじゃなく、純粋にバイクとして魅力的になってる。ディーラーも力を入れて売るでしょうし、相当売れると思うなぁ、だって単純にカッコいいから。私はこういう覚悟のある商品って大好きですんで、是非成功して欲しいですね。

ただ、これまでのスポに比べて価格が随分高いんで、エントリーをもう一つ二つ作らなきゃならない。排気量を900ccくらいに落として価格を120万円くらいに設定したネイキッドモデルのBronxあたりがそこにはまって来るんでしょうね。

いろいろ書いてきましたが、私みたいな変態嗜好のバイク乗りの予想って、あんまり当たらないんでこれくらいにしておきます。私の思うとおりに世の中が動いたら、多分世界は滅亡しちゃう。アホはこういう場末のブログで一人壁に向かってブツブツ言ってるのが一番人様にご迷惑をかけないんですね。