この7月でストリートトリプルRSを衝動買いしてから丸1年が経過しました。このバイク、カラーリングと顔つきが完全にニセウルトラマンでそこにドハマり。愛称はニセウルトラマンの正体であるザラブ星人から「ザラブ嬢」と名付け、挿絵のキャラデザはウルトラマンオマージュにしてブログを書いてきました。

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(ここ20年ほど車重が250㎏以下のバイクに乗ってなかったんで、久しぶりの200㎏切りにとても懐かしい思いになりました。回春効果というか何というか・・「軽量ハイパワーって若さなんだな」とあらためて感じましたね。)

コロナでいろいろなイベントが中止になる中で、わりかし時間作って乗れたんじゃないだろーか?などと思ってましたが、蓋を開ければ走行距離は5000㎞程度でたいして伸びてない。このバイク、バリバリ現役の走り屋向けなんで、路面コンディションが悪そうなときは駆り出さないし、一線退いたオジサンが長時間乗ると、かなり疲れるんですよね。

「座薬挿入!」みたいなケツアゲポジションに一日中乗ってると私のようなジジィはバイタルおかしくなるんで、ツーリングはほとんど行わず、タダひたすら近場の峠と湖畔道路での走行オンリーに使ってました。

ロングツーリングしたければそれ用にダイナとゴールドウィングありますから、わざわざ不得意な領域にこのバイクを刈り出す必要はないってことで、このバイクが最も得意とするワインディング走行がとにかく多かった。今のところは立ちゴケ、転倒共になく、楽しく走れています。

1年経った現時点での感想は、初めて乗ったときとあまり変わってません。乗る度に「ああ・・この感触・・懐かしいな・・・」って感じる。若い頃を思い出しちゃうんですよね。

なぜそう思うのかというと、このバイクが遙か遠い昔のわが愛機を思い起こさせてくれるからなんです。そのバイクの名は

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「Honda NSR250(MC21)」

私のどうにもならん運転技術の犠牲となり、奥多摩の崖から落ちたり、火花散らして滑ってったり、筑波サーキットでコケて田植機のように泥だらけになったりと、ボロボロになりつつも、共に青春時代を駆け抜けた90年代を代表するレーサーレプリカ。当時バイク屋勤務だった私も初期型CBR900RRに乗り換えるまで「NSRこそ東京の下道、最速最強である」と信じて疑っていなかった街道のスーパーウェポン。

ストリートトリプルRSからは、どことなくこのNSRの香りがするんです。不思議ですよね。「30年前の2ストクォーターと現代の4ストナナハンが似てるわけないだろ!」とツッコまれるかもしれませんが。いや確かに30年の月日が経過してしてるわけですから、現代のバイクから「あの頃感」がしちゃまずいんですよ。ストリートトリプルはクィックシフター、トラクションコントロール、スポーツABS、電制スロットルと、走りのためのハイテク装備を満載した最新鋭機なんで、アナログなNSRとは真逆のハイテクマシンです。でも、乗る度にセピア色に染まった「あの頃」に戻るような、言いようのないデジャヴがある。

では、あの頃感というのは何なのか?というと、1990年代のバイク達がまとっていた「公道でガチに走る雰囲気」です。

昔の2スト250ccレプリカがなぜ公道最速と呼ばれたかというと、「公道でバカバカ開けられた」からです。あの頃のレーサーレプリカは「ナチュラルストリートファイター」といえるほど公道適性が高かった。パワーバンドは7000回転くらいからで、下はスカでしたが、この回転域に入れとけば2ストの特性を生かして猛り狂うように吹け上がる。車重も装備重量で157㎏しかないので僅かでも前が空いてれば一気にスピードを乗せることができました。軽さを生かしフルブレーキングではキ〇タマ潰れるほど止まるし、車体も細くコンパクトなのですり抜けも無双。加速、減速、すり抜け能力の3拍子がそろった結果、街乗りで他のバイクを圧倒してたんですね。

高回転で豪快に開けても、250ccにハイグリップタイヤ履きですから公道でケツを振って大暴れすることもないし、馬力規制をものともしない2ストのキレキレの吹け上がりは、車体の軽さと相まって凄まじい瞬発力を生んでいた。小排気量で最速に至るには?というテーマを徹底的に突き詰めてピュアに作りこまれた2ストレプリカは当時本当に速かった。公道レースが全盛の時代で乗り手の頭のネジも飛んでたし、2ストはアクセル開けてないとどうしようもないバイクでしたから、前がちょっとでも空けば全開全開また全開です。

90年代に免許とった小僧達は当時のレーサーレプリカにライディングの基礎と公道での生存競争のリアルを教えてもらっている。だからその世代の人たちは2ストレプリカの加速と2ストオイルの焼ける匂いをいつまでも忘れない。しかし、時の流れは残酷で、2ストロークエンジンがほぼ失われた現在、「あの頃」は既にセピアの思い出になってしまっているんですね。

そんな中、トライアンフのストリートトリプルRSになぜ「あの頃感」を感じるのかというと、まずエンジン。SPORTSモードの2速、3速でトップエンドまでアクセル開けたときのバイブレーションと回転上昇の切れ上がりっぷりが2ストを彷彿とさせるものがある。スポーツユニットっていうのはパワーとレスポンスが大事なんですが、カタログにはレスポンスは記載されない。でもこのレスポンスがエンジンの実力を左右するんです。ザラブ嬢はエンジンのレスポンスフィールがまるで2気筒の2ストみたいなんですよね。

車重は2スト250レプリカ勢より30㎏ほど重いんですが、その一方で2ストみたいにパワーバンドを外すととどうにもならんというエンジン特性ではなく、どの回転域使ってもアクセルのツキが良く、金太郎飴みたいに瞬時にズバッとトルクが出てくるので、上まで回さなくても2ストのように小股の切れ上がった加速が味わえる。こと公道という枠内であれば「どこから開けても速く、足りないところはまったくない。」と感じる。

3気筒エンジンは軽量コンパクトで、搭載位置も動的に有利な車体前方に押し込んである。シャーシも不要な部分に肉抜きを施して、しなりを入れつつ徹底的に軽量して装備重量189㎏。軽量であるが故によく加速し、よく止まる。ベースの設計がしっかりしてて、電子制御に頼った速さじゃないんです。

あとタイヤ。私はNSRではヨコハマタイヤのGETTER003を愛用してましたが、これはガチ寄りのガチタイヤです。ストリートトリプルRSが純正で履くピレリのスパコルもまさに同じ系列。サーキットでも使えるポテンシャルを秘めたタイヤを公道で履く感覚はとても懐かしいものがある。

崖上2
(我ながらトンデモない当て字だと思いますが、若い頃の自分はホントこんな風に思ってた。でも今はメインバイクがアメリカンとメガクルーザー。「人は変わっていくわ・・」というララァの言葉が胸に刺さります。)

こういうバイクって乗ると「走りに対する意識が高い!」「マジモンですね!」って感じがする。パワーを盛るのではなく、車重を絞りに絞って得られた速さはシンプルでとてもわかりやすく扱いやすい。もう何も考えずに、開けて閉じるを繰り返してるだけでいい。

2ストのレーサーレプリカのようなピュアなシロモノにはもうお目にかかれないと思っていましたが、ストリートトリプルが目指したストリートで速いバイクの方法論は当時の2ストレプリカと考え方が同じ。道路状況の予測が困難な公道で速さを求めたとき、何より大切なのは「瞬発力と減速力」であり、それはエンジンのレスポンスと車体の軽量化を突き詰めないと手に入れられないんです。

ストリートトリプルRSのキレ重視型のエンジンは今のジェントルなバイクに慣れている人たちにとっては馴染みにくいかもしれない。でも90年代を生きてきたバイク乗りにはとても懐かしいフィーリングです。超軽量シャーシをキレ味に振ったエンジンで走らせるというのは、まさにあの頃の2ストを地で行ってる。

しかもストリートトリプルには当時の2スト250にあった乗りにくさは一切ありません。シャーシはガチガチではなくしなりがあり、横方向によく粘るし、ポジションも昔のレプリカに比べれば楽。サスもそこそこ良いのを奢ってるんで、ちゃんと調整すれば乗り心地も昔の2ストとは雲泥の差。このバイクでアクセルをパカパカ開けて遊んでると、「これは街中最速バイクの完成形に極めて近いのかもしれないな・・」と思ったりする。

こんなバイクに跨がってると、否応なしに若い頃のことをいろいろ思い出しちゃうんですが、まぁほろ苦い記憶しかないですね。つーかコケてる記憶しかないってのはいかがなものか(笑)

あの頃はバイクも自分もピュアでしたが、今の自分は凄く面倒くさく、小汚くなった気がする。色に例えると、昔は赤で、今はうんこ色って感じです。この世の中って、とてもとても面倒くさいところですから、そこで30年も生きてれば、少しずつ汚水みたいに濁ってくる。

でもバイクはあの頃と同じようにピュアなまま。ストリートトリプルの速さは今の私にはあまりにも純粋で、昔の自分と今の自分がオーバーラップして、いろいろ後ろめたい思いがこみ上げてくる。なんとなく、そんな切なさを感じるバイクなんです。