今回は何かと話題の多いハーレーについてです。このライブドアブログにはハーレーの販売店の方々も多いと思いますが、そんな中、こういう赤裸々なブログを書くと迷惑なんでしょうね、多分。でもハーレーユーザーではなく、いち消費者としてやっぱ書いとくべきなんだろうなーと考えてキーボードを叩いています。

これを書こうと思った理由は、ハーレーが今年の3月から理解しづらい販売方法を始めたからです。初めてこの「フリーダム・プロミス」という販売方法の情報に接したとき、私は言いようのない違和感を覚えました。

フリーダム・プロミス
(もうとっくに期間が終了しているフリーダム・プロミス。期間中にブログを上げるべきだったのでしょうが、ちょっと忙しすぎた・・。)

この「フリーダム・プロミス」の内容を簡単に説明しますと、スポスタを購入し、新車登録から1年以内にビックツインへ乗換えする場合に、1年好き放題乗ったスポスタをなんと「新車価格でそのまま下取る」という制度です。要はビックツインに乗り換える場合は、散々乗ったスポスタの販売代金を全額返金して、新たに買うビックツインの頭金に入れるってことですね。

顧客はスポーツスターが実質タダで1年乗れちゃう。表向きは「何を買っていいか分からない」「買って後悔したくない」というご検討中のお客様の声や、「乗り慣れたら、もっと大きなモデルにしておけばよかった」というご購入者様の声などを基に誕生した、新しいハーレーダビッドソンご購入プランとなります。ってことのようですが、あまりにも慈善事業すぎる

この説明を見て「ハーレーって顧客思いのメーカーだなぁ」なんて素直に感動する商売人は誰もいない。これは売る側からするとぶっちゃけ「1年以内に2台売りたいの❤」「下取り保証を餌にビックツインの予約を取りたいの❤」ってことなんです。

こんな売り方は他のメーカーではほとんど見たことないし、あり得ない販売手法です。理由は簡単。大赤字になるから

この売り方だと1年後の中古価格と下取りとの差額は販売店が持たなきゃならない。顧客が1年でどれくらいの距離乗るかわからないので、どの程度の赤字幅になるかなんて全然予想できない。そんな収益の読めないリスキーな売り方より、普通は新車を「値引き」した方が手っ取り早いんですよ。だって「高値下取りする」のも「新車を値引きする」のも結局は「顧客の総支払額を下げるための手段」であり、上から見るか下から見るかの違いだけ。

それなら、下取車をしっかり査定した上で、その状態に合わせて、値引きを判断するのが常道であり当たり前なわけです。しかし、今回の販売では1年後の下取り車の距離数などがどうであれ、「新車価格で引き取ります」ってことですから、どう考えても大幅な赤字になる。これに対し、得られるメリットは「次年度におけるビックツインの販売台数がある程度確保できる。」ということくらいしかありません。

企業は商品を販売して「利益を上げる」ことが至上命題ですから、赤字になることは基本できない。そこで、この販売手法を赤字にしないためには以下の条件が必須になる。

ビックツイン1台の利益>>>>>>スポーツスターの1年後の中古販売価格と新車との差額

つまり中古相場を横目で見ながら緻密に計算すると、ビックツインを1台販売したときのメーカー側の利幅が割り出せちゃうわけです。元々ハーレーはとんでもなく利益率高いだろうなぁって思ってましたけど、この販売方法をとったことで顧客側で利幅がモロに逆算できてしまう。もしそこまで利幅がなく実質赤字販売だったとしても、顧客は商売の原則から「ビックツインの利幅って凄いんだろうなぁ」って感じるはずです。こういう顧客の疑念は販売にとってプラスに作用することはまったくありません。

販売店側もこの方法で2台の売ったとしても「2台分の利益を得られるわけじゃない」ので、まったくありがたくない。だから普通はこんな売り方はしない。でもハーレーはとにかく「値引き販売をしたくない」なかで「数を出したい」んでしょう。近年のハーレーの販売台数は年間1万台に到底届きませんから、厳しい経営の販売店も出てきているんだと思います。

人気が下降する中で販売台数を維持しようと思ったら値引き販売が王道ですが、そこに一度手を染めちゃうと、歯止めがきかなくなって、販売店同士の値引き競争になってしまう。結果、販売エリア制が崩壊しちゃうんですね。満を持して投入したミルウォーキーエイトも販売減に歯止めをかけられていないのでハーレーの焦りは相当なものだと思います。新規ユーザーを獲得するためのラッシュモアだったはずなのに、新規ユーザーを獲得できず、旧ユーザーも買い換えてくれないのでは、経営者の首が飛んじゃう

しかし、そういう台所事情を割り引いたとしても、この売り方は私には納得できるものではありません。なぜならこの「フリーダム・プロミス」は顧客であるユーザーの利益になる販売方法だとは思えないからです。その理由は以下の通りです。

①高額下取りの条件に「ビックツインのみ」という前提をつけることにより顧客の乗り換えの自由意志を間接的に奪っている

②乗り換えモデルをビックツインに限定したことにより、より高額のモデルに誘導することになり、顧客の負担が増える結果になる。

③ハーレー内のヒエラルキーはともかく、ビックツインが必ずしも日本のライダーにとって最良のバイクであると私は思っていない

883R

(バイクはとりあえずこれ乗っとけばいいよね、の代表格883R。シンプルにして永遠のスタンダード。ジーンズみたいなもんです。このモデルが現在買えないというのは本当に残念。)

つまり、お得感を演出してビックツインに誘導したとしても「顧客が幸せになるとは限らない。」と私は考えてるわけです。私のように「重いバイク大好き変態野郎」はともかく、一般的なライダーが日本で乗るなら「883を自分の体型に合わせてカスタムするのが一番いい」と私は思ってる。私自身はダイナに乗ってますが、883に対する評価(1200ではない)はメチャメチャ高い。しかし、このプログラムを選択すると、せっかく買ったスポーツスターをカスタムしにくくなっちゃいます。だって1年後に下取りに入れる可能性が高いバイクを金かけてカスタムするライダーなどいないはずですから。

しかも、この販売方法によってスポーツスターには単なる「ビックツインへの踏み台的なイメージ」がついてしまうんじゃないかとも思う。ビックツインを買ってもらえるのなら、「スポーツスターはタダでいい」と言ってるようなもんです。

私はハーレーのモデルヒエラルキー的な考え方に強く異を唱えるライダーですが、既存のスポスタを愛するライダーもスポスタがこのような扱いをされるのはきっと面白くないでしょう。

とにかく、この「フリーダム・プロミス」は顧客をより高額なビックツインに誘導したいという下心が丸見えになってしまってるところが私はどうにも気に食わないのです。「顧客に一番あったバイクを提案する」という販売店の最も大事なところから離れ、「スポーツスターよりビックツインが当然いいでしょ?普通だったら誰しもビックツイン選びますよね?」という販売店の都合による間違ったメッセージが発信されているような気がしてならない。

なお、「フリーダム・プロミス」の下取保証の付帯条件は次の通りです。

(1)対象車両(1台目)ご購入時に、所定の参加意志確認書をご記入・ご提出いただくこと
(2)下取り・お乗換はお客様が1台目を購入されたディーラーで行うこと
(3)下取車両が当社推奨の点検(1ヶ月・6ヶ月)をご購入店舗にて受けていること
(4)下取車両が公道走行に支障が無く、目立ったダメージが無いこと
(5)違法改造、事故車両、故障車両で無いこと
(6)その他、ご購入店舗が事前に定めるルールに逸脱のないこと

この付帯条件、「走行距離に上限がない」ので下取りの条件としてはもうガバガバです。1年で何㎞乗っても新車価格ってのはおいしすぎ。こんなの見たことねぇ(笑)。まぁメーカーはなんとしてもビックツインを売りたいんでしょうから、フツーに乗っていれば下取り保証の対象になるんでしょう。

なぜ、こんな売り方をしなくてはならないのか?私は6つほど理由が考えられると思ってます。

理由その1 「値引きできない」

販売店はハーレーとの契約により、値引きできないことになっているんだと思います。これはレクサスも同じですが、殿様商売ってことです。売れる時には利幅はでかいですが、売れなくなったときには「武士は食わねど高楊枝の精神で耐える」必要があります。しかし、ハーレーの販売店はハーレーの指示で店舗設備に巨額投資をしており、有利子負債の返済があるわけで、メーカーは値引きに代わる販促方法を編み出さなくてはならないということになります。

理由その2 「ビックツインが売れていない」

これは販売台数からして間違いのない事実でしょう。ハーレーの販売台数は前年比10%減ですが、これはかなりの減少幅で、販売減少が著しいのは高価格帯のビックツインだと想像できます。となると販売台数は10%減でも、利幅は大きく減っているはず。ハーレーのビックツインは200万円を超えてきますが、これはもう趣味の出費としてはキツすぎるので、どう考えてもここら辺が不振になってると推測されます。

理由その3 「大型免許取得者でハーレーを選択する人が減っている。」

このフリーダム・プロミスはスポーツスターが乗り換え前提に実質タダになる大盤振る舞いでもありますから、とにかくハーレーとしては大型免許を取得したユーザーを最初にゲットしたい。そのためのスポーツスター販促施策でもあるとも考えられます。

理由その4 「ハーレーから他のメーカーへの顧客流出を防ぎたい。」

この販売方法では1年後の買い換えはビックツインが超お買い得になりますから、顧客の流出を防ぐことが可能です。昨今、カワサキやホンダも店舗を整備してきており、バイク販売におけるイメージ刷新を行いハーレーから顧客を取り返そうとしている。ちまたにハーレーがあふれる中、「次はカワサキいっとくか?」「ホンダのCB1100もいいね」というバイク乗りが増えるのは容易に想像できる。そんな中、フリーダム・プロミスは一定程度の期間、顧客の囲い込みが可能です。つまり、ハーレーは「これまで通用していた顧客の囲い込みに不安を抱いている」のかもしれません。

理由その5 「価格訴求力が既に失われつつある。」

フリーダム・プロミスは次回もハーレーを買ってくれるという前提の元での大幅値引き予約のようなものですから、現場は「値引きしてでも売りたい」「値引きしないと売れない」って状態のはずです。しかし、ハーレーはブランドと販売店のエリア制維持のために値引き販売による競争は許容できない。「下取り・お乗換はお客様が1台目を購入されたディーラーで行うこと」の一文にそれがにじんでいます。つまりハーレーが、ブランドを利用して行ってきた高価格戦略が、反転してハーレー自身の首を絞めているということです。

理由その6 「ブランド戦略の曲がり角」

ブランドというのは「高価格による希少性」が訴求力なんですが、ハーレーは高価格にもかかわらず、どうにも売れすぎてしまったと思う。売れすぎた結果、ずいぶん前からブランドに一番大事な希少性が失われていました。CVOが売れているという現象が何よりの証拠。以前はハーレーと言うだけで、その希少性を謳歌しておりましたが、通常モデルがちまたにあふれた結果、もうハーレーというだけでは希少性が出せなくなり、メーカー内にCVOという上位ブランドを作らざるを得なくなっている状況です。

フリーダムプロミス・への字
(今回の販売方法で一番言いたいのはこれですね。883は乗れば乗るほど味が出るスルメバイクなだけに、さぁこれからって時にドナドナされることになる。それが本当にオーナーのためになるのだろうか?)

まぁ、以上の理由でこんな販売手法が編み出されたのだと私は想像してるわけですが、もし外れていたとしても、こういう想像を顧客にさせる時点であまりいい販売方法とはいえない。この世の中、普通では考えられないような「特殊なこと」がおこなわれる時は、その裏にある事情が複雑でねじれていることがほとんど。本来なら大幅値引きでいいところを、値引きせず、一風変わった販売手法をとるのは、メーカーと販売店の間にいろいろなややこしい思惑があるからなんでしょう。

しかし「そんなこと顧客には一切関係ない。」

私は「顧客のためになる制度」については諸手を挙げて歓迎しますが、ディーラーとメーカーの事情を顧客に押しつけるような手法には、今後とも疑問を投げかけていきます。まぁ私がこんなこと書く以前に、皆さんも「この売り方ってなんか変だよね」と薄々感じたことでありましょう。

過去「ハーレーの販売不振に関する一考察」というブログで書いたとおり、ハーレーはこれからかなり長期間、苦しい時期が続くと思ってます。しかし、苦しくても自分たちの都合ではなく、「顧客にとって何が大切か」を考えて商売して頂きたいと思う。顧客に対して誠実であること。それが商売人の生き残る道であり、真のブランド戦略だと信じてますので。

なお、私が考える「消費者に対して優しい販売手法」とは、その時点で契約が完結し、シンプルでわかりやすく、顧客を縛らず将来にリスクを残さないということです。やっぱり売買契約っていうのはシンプルなのが一番いい。この世の中、突飛なことをすればするほど、裏を探られるし、警戒されるようにできているんですね。