こちらで新型ゴールドウィング SC47のおおざっぱな試乗インプレをお送りしましたが今回は個別機能の具体的なインプレを書いていきます。

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(今回から3回くらいに分けて新型ゴールドウィングSC79の最新メカニズムについてインプレしていきます。)

私は旧型F6Bのオーナーですので、あくまで今乗っているF6Bと比較している部分がほとんど。でもこのブログを見て下さっている方々が乗っておられるバイクは多種多様だと思います。私はテスターではないので、どうしても自分の乗っているバイクと自分の感覚を基準にせざるをえないし、長年乗ってきたF6Bに対する愛着もあります。

結果、「フラットな感覚で試乗レポートを書くことなどハナから難しい」。私のインプレ見て実車乗ったとき「おいおい!!へちまのいってたことと全然違うじゃん!!あのクソ野郎!!」って思うかもしれない。でも、ずっと4気筒に乗ってた人が6気筒をインプレするのと、6気筒大好きな私がインプレするのでは結果は当然異なってくる。人の主観によるインプレ基準なんて、状況や今乗っているバイクによってコロコロ変わる。所詮、その程度のものなんです。

あと、良いバイクってのは、年数を重ねるほど乗り手となじんできますので、そういう点でも大きく進化して新機能を満載した新型って不利なんですよね。特に「新しいから無条件に良くなっている」という前提ではなく「自分の感覚にあってるバイクが良いバイクである」という乗り手にはどう考えても不利。

このように私のインプレは最初から最後まで主観に満ちてますので、半値八掛五割引でお読みいただければと思います。厳しく書いているところもありますが、忖度まみれの雑誌の提灯インプレにしないようにすると、どうしてもそうなっちゃうんですよね。

それではインプレいってみましょう。

新型ゴールドウィング機能インプレ その1 「DCT」

まず最初は新設計のDCT。まるでプロレス技のような名称ですが、立派な変速機構。このDCT、変速能力において極めて有能であることは「モータースポーツの世界で既に実証」されてます。よってワインディングに持ち込めば人の左手よりもよっぽど良い仕事をするはずで、絶対的な機動性を求める人はDCTを積極的に選んだ方がいいという結論になるでしょう。試乗した感覚でもシフトチェンジは「スチャリコ」という感じで瞬時に終了いたします。

一方皆さんが一番気になってるのは発進時の半クラッチや低速制御だと思うんですよね。公道バイクはそこら辺が肝ですので、注意深くストップ&ゴーを繰り返してみましたが、正直軽い衝撃を受けております。

発進における半クラッチについては現状で「うーん、特に違和感ないゾ」というくらいお見事です。大型バイクに27年も乗ってますと、自分の左手に絶対的な信頼ってのがあるわけで、

「DCT??おふざけはおやめになったらいかがかしら?わたくしの左手はまだまだ機械なんかにゃ負けませんわよ?おっほほほほ。」

などとイキっていたんですが、試乗後は

「うぐぐぐ・・・やりますわね・・」

と素直に感心してました。SC79は発進する、止まる、また発進という単純操作の部分ではほとんど問題ないレベルになっているのですよ。これはもう「ヤックデカルチャァアアア」(古い)と叫びたい感じです。


デカルチャー
(「どうせ機械がやることなんて、それなりでしょ?」とナメていたら、その傲慢さをホンダ技術陣にこんな感じで木っ端みじんに破壊された気分。)

「じゃあDCTがMTよりいいのか?」というとそうでもない。なんといっても今回の搭載車種は天下のゴールドウィング。普通のバイクなら許容されるところでも「ゴールドウィングでは許されぬ。」場合もある。ゴールドウィングは、それなりに多くのバイクに乗ってきたベテランライダーが「バイク人生の最後にこれ乗っとくか・・」的な感じで選択してきた車種じゃないかと考えているのですが、そんな人は、トルク制御もゴールドウィングに見合ったマナーや繊細さを求めるはず。DCTではまだそこがちょっと苦しいのです。

町中の混沌とした道路環境はレースほど単純じゃありません。あらゆる状況に対応しつつ丁寧なマナーを伴うトルク管理をしようとすると、いまのDCTより、私の左手の方がなおフレキシブルに対応できるんじゃないかと感じます。

新型は90度直角に曲がるような交差点で一定速度以下になると、DCTがバンク中にギアチェンジしてしまうため、一瞬トルクが抜けちゃうことがある。トルクが抜けると車体が内側にふらりと倒れ込みますから「おおっと」とアクセルを当てる。そうすると即座にクラッチが繋がり「はうあっ」とシフトショックが出て、挙動に高級感もへったくれもないという・・。

「半クラちょっとあててトルク逃がすだけでスムーズに曲がれるのに・・」ってところで駆動がスコンと全部抜けてしまうのは大きなマイナスなんですよね。特にゴールドウィングはシャフトドライブで、駆動抜けるとごまかし効かない。私はクソでかいF6Bで狭く曲がりくねった舗装林道抜けるのを楽しみの一つとしていますので、極低速急旋回時のトルク制御が結構気になるんです。

邪鬼眼

長年パワーのあるバイクに乗ってる人は、こういうトルク管理を無意識にやっているわけですが、今まで無意識だったものを意識させられるっていうのは結構な違和感があります。たまにDCTがギヤチェンジでいらんところでトルクを切ってしまったときなど、セイラさんの乗ったガンダムを見せられたアムロのように「ボクならもっとうまくクラッチを使えるんだ・・」とつぶやきたくなるわけですが、残念ながら左手にクラッチはない。

「いやいやMTモードで対処すれば大丈夫でしょ?」という意見もあるかもしれません。そうだとしても極低速のトルク制御をアクセル一本でやることになるわけです。クラッチに比べておおざっぱにならざるを得ないアクセルによる制御では「半クラッチとアクセル開度を組み合わせることによって行う繊細なトルク制御にはまだ勝てない」というのが私の結論。

でもこれは新型の欠点ではありません。だって新型にはMTもちゃんと用意されてますから。試乗してDCTに違和感を感じたら、MT買うか、5年くらい待つのがいいと思う。このDCTの制御プログラムはもっともっと進化すると私は確信しています。ゴールドウィングというフラッグシップのミッションとして現状で十分とはホンダも思っていないはず。私が開発の責任者だったら「ここを直せ!」ってところが結構あるし、それがわからないホンダではないと思います。

DCTの開発費を稼ぐために利幅をとれるゴールドウィングに採用したのでしょうから、どんどん進化させて走りの質感を高めて欲しい。安楽さだけの追求ならフュージョンでいいわけですから。



ホンダフュージョン
(バイク屋時代の私は数多くのバイクを好き勝手に乗ってましたが、その中でも驚異の安楽さを誇っていたホンダフュージョン。登録に練馬の陸運行くときはほとんどこれ。二ケツした同乗者を確実に眠りの世界に誘うバイク界のセイレーン。)

一方で「のんびりまったり広い幹線道路をツーリングしたい」という人には私が今のDCTに抱いている不満点はあまり気にならないかもしれない。道幅広く高速コーナーが多い環境ではDCTのらくちんメリットが勝ります。一方で、長距離をあまり乗らず、低速での取り回しや、「狭く曲がりくねった道を巨体で蹂躙するように走るのが楽しいの♡」という変態嗜好の高い人にはMTをおすすめしておきます。

あと、DCTのシャコンシャコンと綺麗に変速する感じも私にはなんとなく物足りない。クラッチ切って繋いだときに、指先に伝わってくる分厚いエンジンのトルク感が私にとっての「大排気量エンジンの醍醐味」なんです。そこを遮断してしまうと、「大パワーと個性的なエンジンを制御して機動を操っていく」という大型バイクの楽しみが減っちゃうような気がする。

結局バイクって何はなくともエンジンで、水平対向6気筒という滅亡種をもっともっと満喫した方がいいんじゃないか?と思っちゃうんですね。

最後に一番の懸念事項。SC79のDCTは「突然エンストする」という致命的欠陥情報があるようです。ディーラーはコンピューター書き換えで対応しているようですが、どうにも原因不明のようですね。実はこの原因不明のコンピュータートラブルはインジェクションのバイクではタマにあるんですが、SC79では頻発しちゃっているようです。

これヤバいですよね。何がヤバいかって、この車重のバイクで突然エンストされたらまずコケます。白バイ隊員でもこれはコケざるを得ない。だって慣れてるライダーほど、駆動力を最大限利活用してほとんど力使わず取り回してます。気持ちよく取り回している最中に突然駆動切られたら、神経を切り離されたようなもんで、もう「母なる大地と一体化」するしか道は残されておりません。これはいい加減に対応すると致命傷になる。重量級バイクとしては深刻すぎる問題だと思いますので、早急に対応して安全宣言をして頂かないと不安でDCTモデルは買えないでしょう。

今のところ私にとって新型ゴールドウィングのDCTとは、「新たに出てきた利便性の高いミッションの選択肢の一つ」であり、「MTに取って代わる」というような存在ではないです。でもバイクの用途は人によってさまざま。選択肢は多いに越したことはありません。そういう意味ではDCTの搭載車種を拡大しているホンダには素直に敬意を表し、今後の進化に期待したいと思ってます。