こんにちは。へっちまんDEATH。半沢直樹の大和田常務みたいな挨拶ではじまりましたが、私、大和田常務の大ファンなんですよ。漫画でもあれほどの顔芸ができるキャラはそういないし、欲望剥き出しで気取ったところもない。素敵な人ですね。

余談はともかく、今回はバイクにおける夏のお悩み。暑さについてのブログです。

皆さん既にご存じだと思いますが、ハーレーの空冷エンジンは夏の暑さに弱い。熱ダレによるエンジン停止やパワーダウン、安全装置の作動による片肺停止など、今のミルウォーキーは別として、TCエンジンは「現代のバイクとは思えないほどのタレっぷり」を見せてくれます。

私のダイナは燃調をアメリカ本国仕様に準拠した濃いめの設定にしていますので、暑さに対してはかなり強いんですが、納車時の薄い燃調のモデルでヌケのいいマフラー入れたりすると薄すぎてすぐエンジン停止状態になりますからね。

私が装着してるデイトナのノスタルジアマフラーはエキパイの取り回しが最低で、マフラーの集合部分で目玉焼き焼けるし、そのままだと高速走行でジーンズ燃える(笑)。耐熱バンテージ巻いてもジーンズ焦げる。直接接触してないんですよ。5㎝は距離開いてるのにそれでも燃えるんです。市販の耐熱バンテージの一番いいやつ+ヒートガードでようやくズボンを保護できるというね。もうトンデモない熱放射なんです。(ノーマルマフラーはそんなことないですから!)

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(なぜジーンズが燃えてるのに耐えられるのか?それはこいつがあるから。その名もスモークジャンパー、9年モノ。森林火災の消防隊が履く靴です。もう既にバイク用じゃない(笑)。でもハーレーではド定番。もうどんだけ熱いんだよと・・。ハーレーは熱防御のためのゴツい靴を選択してもちゃんと乗れるようになってる。他のバイクはいくら熱いからっていっても、こんなトンデモ靴履いては乗れませんからね。)

ではこのハーレーが夏に暑くって乗れないのかっていうと、実は私、この時期はダイナにばっかり乗ってます。確かに暑いですよ。でも断言しましょう。

「ハーレーは夏に気持ちいいバイクなのだと!」

クソ熱いはずのハーレーの美点のひとつは「体との接触面は熱くならない」ということです。ハーレーってシートにケツをどーんと乗せて、大きく張り出したフットペグに足をがつーんと乗せて走るんですが、このフットペグとシートは全然熱くならない。車体の熱が伝わらないんですね。で、残りの部分は、熱くはなるけどバイクとライダーの間に一定の距離があるし、そこを空気が抜けていくんで、全然耐えられる。ハーレーはニーグリップしないで乗るわけですが、コレを含めて、空冷バイクの熱を逃がし、乗り手に伝えないように上手く考えられてるんですね。

ハーレーは走行風だけでエンジンを冷やしてますんで、走っているとき以外、エンジンは全然冷えない。でも、逆に言うと自然の風のみで冷やすんで、乗り手はあんまり違和感ないんです。

バイクが熱いときは乗り手も暑い。バイクが冷えるときは乗り手も涼しい。乗り手が我慢してるときはバイクも我慢してるんですね。これ、当たり前のようでいて、とっても大事なんですよ。私が空冷エンジンを好む理由のひとつはここにある。

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(夏のハーレーは暑い。でも暑い中でも「風さえあればどうってことはない。」という至極当たり前のことを教えてくれる。空冷エンジンには人とバイクが共に暑さに耐え、また共に涼しくなるという根源的な一体感がある。)

普段辟易する風当たりも、夏場に海岸線やワインディング流すと、これほど気持ちいいものはない。バイクをいくら水冷にしたって、「所詮ヒトは空冷」なんです。バイクだけ冷やしても意味がないんですよ。

んで、空冷が一番冷えるのはフレッシュエアを大量にあてること。その点、ハーレーは体に涼風が直撃です。冬場はブリザード直撃で凍死しそうになりますが、夏はこれがプラスになる。アリゾナの灼熱の大地を走り抜けるには体にも風を存分に当てなきゃならない。それを良くわかってるバイク作りです。

だから、夏になるとハーレーって俄然魅力を増してくる。渋滞ハマると確かに暑いんだけども、これを耐えて走り出せば一気に涼しくなるから、全然我慢できるんです。体と熱源が適度に離れていて、その隙間を走行風が抜けていくから、「うぉーー風があたって冷えてきたぁ!!こちとら人も機械も空冷だぜ!!これこそ人馬一体よ!!!」って叫びたくなる。これこそバイクと乗り手の意思疎通ってもんではなかろうか。

そういった意味では、本来よく冷えるはずの水冷バイクの方が実は耐えがたいケースがある。水冷エンジンはラジエターを冷やすための強制冷却ファンがついてますが、リッターSSなんかでコイツが「ブァァアアアアアアァアアン」なんて回り出したら、それは地獄のファンファーレ。なんでかって?コイツは前から後ろに容赦なく熱風を送り込む「灼熱換気扇」みたいなもんだからです。

リッターSSくらいになると、とにかく熱風がハンパないんです。外気を送るんじゃなくって、エンジン周りにこもった最高にホットな空気を後方に排出するのが役目ですからね。しかも、渋滞中、こちらが茹で上げられて苦しんでいるときに限ってファンが回り、エンジン周りの熱を排出してくる。じゃあ排出された熱風の先には誰がいるのよ?

オレだよ。

つまり、こっちが必死に暑さを我慢してるときに追い打ちをかけてくるのが、水冷エンジンの強制冷却ファンなんです。わかります?ご自慢のハイパワー水冷エンジンはどんどん熱を排出し、水温計は鼻歌状態でピクリとも動かないのに、ライダーはその排出熱の直撃を受けてどんどんスルメ化していく。「乗り手はあぶったイカでいい」って、まるで「調理されてる」感すらあるわけですが、これって腹立つでしょ?「味方が放った後方支援の矢に背後からメッタ刺しにされてるような気分」ですよ。

隼
(夏場のファッキンホットなバイクの代名詞といえばやはりこちら。スズキのブサ。渋滞にはまってしまったときのブサはまさに「科学忍法火の鳥」発動状態。まわりに特段敵はいないので焼き殺すのは乗り手のみ。捨て身のヒーロー魂を試される。)

この熱風の耐え難きを耐え、忍び難きを忍んでいると、今度はフレームまで熱くなってくる。これがまた酷い。接触面が熱くなるって、熱い空気浴びてる以上にしんどいですよ。だって、バイクの接触面って走ってるときにこそホールドが必要な部分で、ここが熱くなっちゃうってことは「走ってるときまで暑さから逃れられないのが確定する」ってことなんですよ。しかもエンジン止めるまでまず冷えることはないですからね。これはエンジンをガッチリ両側から挟んでる高剛性アルミツインスパーフレームの弱点のひとつ。剛性感は凄いけど、チンチンになったフレームに人間がどうしても触れてしまう。ダブルクレードルやトラスフレームに対する夏場の一大欠点ですね。

照りつける太陽
クソ熱いフレーム
強制冷却ファンからの熱風
アスファルトの反射熱
トラックから放射される排気熱
頭のメットは密閉性の高いフルフェイス(ガチの場合は革ツナギまで・・)

環八の夏場の渋滞にリッターSSでハマると、このフルコースが揃ってしまう。もはや周囲に熱源しかない凶悪な人工サウナ。不快メーターはレッドを振り切れ、東京抜ける前に体力は限界。まさに「最初からクライマックス」です。

メリットは水分を全て汗にとられるので、どんなに長く渋滞にはまっても「オチッコ全然したくならない」ことと、「減量中の力石みたいにあっという間に痩せられる」ことくらい。これが古いイタ車になると、クラッチが熱膨張で膨れ上がって切れなくなったり、冷却水が吹き上がったりして、「強制撤退」になる。

灼熱の夏日に渋滞のど真ん中で大型トラックに挟まれて、大汗掻いてるリッターSSのライダーを見ると「おお・・なんという気合いなのか!さぞかし名のある山の主と見受けたが何故そのように荒ぶるのか!」とタタリ神を見るような崇高な気分になり、武運長久を祈りたくなる

ちなみに今回購入したザラブ嬢(ストリートトリプルRS)とダイナではどっちが暑いのか?っていうと、シゴいてエンジンが熱くなると、765ccのザラブ嬢の方がキツイ。全体的な熱量は1600ccあるダイナの方が圧倒的に高いんですが、ザラブ嬢は接触面で局地的に熱くなるところがあるんです。

それはどこか?ステッププレートまわりです。スーパースポーツ乗る方はわかると思うんですが、峠でホモの誘いのように右に左にケツ振りまくって、「アニキ~」ってなってる時って、車体をくるぶしで挟んで支えてる。だからステッププレートって足で常にホールドしてる部分なんですよ。

ストリートトリプルはここがメチャクチャ熱くなっちゃうんです。フレームはニーグリップ位置からうまく下方に逃がしてあるんですが、このステップのプレートはどうしようもなかったんでしょう。ここに触れないようにすることはスポーツバイクの構造上不可能ですからね。しっかりとしたブーツ履いて熱対策しないと、スニーカーに靴下レベルだと初めはよくてもやがて地獄をみることになります。かといってスモークジャンパーみたいな防火靴履くわけにもいきませんしねぇ・・。

熱さ・ペン入れ
(大排気量水冷エンジンは偏差値高いインテリだけど、「人に優しい」とは必ずしも言えないときがある。トンデモないスペックをひっさげながら、ロースペックの空冷エンジンに出し抜かれちゃう場合もあるんですね。)

結局、スピード重視のバイクって体にフィットさせるボディースーツみたいなもんだから、エンジンの熱がどこかで必ず乗り手に伝わっちゃうんです。これに比べてハーレーはアラビアのロレンスみたいなダボダボ服。熱い部分は直接接触しないんですよ。ハーレーに長いこと乗ってると、なんでこんな熱量のバイクに夏乗りたくなるのか?って不思議だけれど、ちゃんと理由があるんですね。

ハーレーは機械的にはとってもお馬鹿なバイクなんだけど、「いろんなものを許容する造り」になってるんです。性能ではなく、過酷な環境で乗り手に都合のいい進化をしてった結果の車体構成だから、乗り手の創意工夫で「暑いけど不快じゃない」とこにうまく収めることができる。自由度が高いんですね。

ハーレーってグルマンティーズな評論家に語らせるようなバイクじゃないんです。要は普段着なんですよ。ジャージなんです。料理で例えると、料理評論家や栄養士の声じゃなく、実際に日々料理を作ってる素人の奥様方の意見を集約したような料理なんです。

で、世の奥様方の選択の目線はスペックじゃない。功利主義なんですね。使えるものこそ正義であり、良いものだ。ってことなんです。グルメ評論家が美味いって言ってくれてもしょうがない。「多少見栄えが悪くても滋養があって家族が美味い!」っていってくれるものを求めてるんですよ。ハーレーはサーキットやワインディングで比較試乗なんてされると他のバイクに到底太刀打ちできない。シェフの作ったレストランの料理を目指してなんかいないから。

でも、乗ってる人にとっては毎日食っても飽きない家庭料理みたいなもんなんです。しかも、乗り手の好みで塩かけようが醤油かけようが、なかなか味が破綻しないという、アレンジ度の高いレシピときてる。

国産乗りもハーレーを馬鹿にするだけじゃなく、その功利主義的なバイク作りを体験してみるべきだと思う。ハーレーはスペックはゴミだし、新車なのにガタついてるけど、カタログに出てこない体感スペック高いですよ。地味だけど、「お前とってもいい奴だな!!」って思うところが一杯ある。だから長いこと乗れるんですよね。

バイク人生を歩むなら、その過程でハーレーに一度は乗ってみることを心からオススメします。日本車も凄くいいけど、根底にある価値観が全然違うので、バイクに対する見方や考え方が随分と変わると思うんですよね~。

ちなみにこのブログのパート2はこちらです。

真夏のハーレー事情(空冷エンジンを夏に乗りたくなる謎について)その2


なお今回比較対象にすらしてもらえなかった、ゴールドウィングに関してはかなり前に書いたこちらのブログ↓をどうぞ。