今回は私の大好きな漫画デビルマンとそれにまつわるバイクがらみの思い出について書こうと思います。


(バックミュージックはやはりデビルマンの歌を推したい。歌の中の挿絵でデビルマンが抱くのはヒロインである牧村美樹の生首。絞り出した泣きの歌声は、まさに原作の世界観。)

もうブログの表題を見ておわかりかと思いますが、私はデビルマンが大大大好き。どれくらい好きかっていうと「もう人生を支配される」レベルで好きなんです。

でも一般の方って

「あー、デビルマンってあの緑色で、ブルマのようなパンツはいててデビルチョップがパンチ力っていってる頭悪い人でしょ?」

とか

「あの実写映画がきいちご賞を受賞した黒歴史の・・・」

とか

「OVAが途中で投げ出されて妖鳥シレーヌ編までしか製作されずにズコーっとなった奴・・」

とかのネガティブイメージしかない人の方が多いのかもしれない。

なんでそんなことになっちゃうのか?といいますと「原作がとにかく凄すぎる」んです。あまりに凄くて、どんなリメイクしても原作を超えるどころか、「原作にちょっとでも近づけたのかしら?」って評価しかされないリメイクキラー。永井豪画伯以外が原作デビルマンに下手に触れると、強烈な批判の対象になりかねないという昭和の漫画界に燦然と輝く金字塔なんです。

devilman9
(私が僅かな画力リソースで描いたデビルマン。一目見ておわかりになると思いますが、ダイナ嬢やメイドF6Bを描いてる時とは気合いが違う。昔も今も自分の中にあるデビルマンへの思いはまったく変わりません。)

なにやっても原作を超えられないんで、多くのクリエイターが別の切り口でデビルマンの頂きを目指すわけですが、これもイマイチうまくいってない。

大学時代エヴァンゲリオンを第2話まで見て、「おい・・これって・・ひょっとして庵野の奴、デビルマンやってんじゃねーの・・?」と感じましたが、その庵野監督が後日「エヴァンゲリオンは結局デビルマンを超えられなかったんだよね・・」とつぶやいてたんで、当たらずとも遠からずだったんでしょう。

庵野監督はゴジラのリメイクを見事にこなしたけど、彼をもってしてもデビルマンという難物は超えられなかったと、まぁそういうわけです。

デビルマンは序盤で展開するシレーヌとデビルマンの戦いだけを抜き取っても、女と男の関係の極北を描く深さがある。シレーヌなんて超絶グラマーでほぼ裸なのに怖くて股間はピクリとも動かない

彼らの戦いで描かれるのは男と女の殲滅戦、どっちが強いかの覇権争いです。もう骨も肉もむしり合う壮絶な消耗戦が展開されていくわけですね。

ちまたの恋愛漫画が純情な若者同士の恋物語を描いたものだとすれば、デビルマンとシレーヌは、熟年夫婦が積年の呪いを胸に秘めつつ、離婚調停でクロスカウンターを打ち合うようなガチの闘争なんです。

「あの・・それって・・ひょっとして・・あなたのご家庭の状況なんじゃ・・?」

うおおおぉお!!なんという的外れなツッコミなのか!控えおろう!!私の家庭はそんなんじゃない!!我が家はもう「格付けが終了してる」!!!

争いが起こった瞬間ジェノサイド

マウントポジションから振り下ろされる妻のパンチは全てが致死性の威力を秘めており、壁際で何もできずに無残に削り殺されるザンギエフの気持ちがわかりすぎてつらい。

妻の怒りを鎮める方法はただひとつ、「満足するまで殴らせる」ことのみ。そう私はユダヤ人のように家庭内のゲットーに収容された悲しき抑留者。死ぬまで解放の見込みはありません。

妖鳥シレーヌ・4
(こちら妖鳥シレーヌ。造形的にも非常に美しく、妖艶な美女に描かれることが多いシレーヌですが、私の中では「女性の狂気と暴力」を具現化したモンスター。この絵、決してマイワイフがモデルじゃないからね。)

「・・・おい、もうここまで1000字超えてんだけど、バイクとデビルマンはいつ繋がるんだよ!」って皆さん焦れてますよね・・。どうもデビルマンのことになると熱くなりすぎちゃってこまりますね。

実はわたくし、第三京浜を走っていた20年以上前、「ヘルメットにデビルマンをペイントしていた」んですよ。それも自分で塗ったのではなく練馬にあるプロのペインターにお任せしたんです。残念ながらメットは事故でガタガタになっちゃって、当時撮影した写真も残ってないのが残念。

ペイントをお願いしたのは国内A級ライセンスライダーのヘルメットを塗装していた人で、今は廃刊となったROAD RIDERっていう雑誌のペイント特集で紹介されてました。雑誌で紹介されていたヘルメットはグリーンをベースに非常に幾何学的な模様をペイントしてあったような記憶があります。

当時、こういうカスタムペイントって、どういうつてで頼むかまったくわからなかったんですが、LOAD RIDERにその方の電話番号が記載されてたんで、ダメ元で「ヘルメット塗って欲しいんですぅ~」って直に電話かけたら、若いお兄さんが出て「いいっすよ~、新品のヘルメット持ってきて下さいね。好きなヤツでいいんで。1ヶ月ほどかかりますけど、是非うちでっ!!」ってスッゴク明るい声で、気安く引き受けてくれたんです。私ペインターの方ってなんか気難しくって、怖いイメージがあったんで正直ホッとしたのを覚えてます。

場所も練馬で当時住んでいた西落合から目白通りをひたすら都落ちすれば到着するというわかりやすさ。よし、ここに決めた!!で、休みの日に住所地まで新品のヘルメット持っていったんです。そしたらなんとそこはオフィスではなく、田舎のボロい一軒家。どう見てもアバラ家なんですよ。「・・これ大丈夫なんかな・・でもここまで来ちゃったんだから・・」と、迷いながらも玄関のチャイムを押したんです。

そしたら「はいはーーーい」と私より5歳くらい年上の男性が迎えてくれました。間違いなく、この人がペインターご本人。だって家を見る限り、絶対事務員なんかいない。貧困レベルは当時の私と同等と推察できます。

「あの~ちょっと無理なお願いかもしれないんですが・・この絵を・・デビルマンを描いて欲しいんですが・・」って永井豪センセの絵を見せて頼んだら、「いいっすよ~!そういうの得意ですから!!値段は・・大体6万円くらいかなぁ・・」って返事でした。

デビルマン
(当時ペイントを頼んだ絵がこちら。永井画伯の名作。「床の間の掛け軸コレに差し替えたい」と何十年も前から思ってる。)

ぐはっ6万円・・当時ホントにカネがなかったんで、「たっ高い・・ヘルメットとあわせると10万円超えちゃう・・。これでもし上手く仕上がってこなかったら・・」なんてすっかり腰が引けてしまったんです。

だって、得意っていったって、こういうペインターの方って、模様は描けてもマンガやアニメは無理なんじゃないか?って思ってましたから・・。

そこで勇気を出して、「えっと・・得意って・・こういうの結構、描くんですか??」って聞いたわけですよ。そしたら彼は笑いながら「いやーペイントの仕事だけじゃ食べれないから(笑)、こういうのもやってますよ~。」って仕事場に案内してくれたんです。

仕事場っていっても、塗料の香りが漂う八畳位の板の間に机が一つ置いてあるだけ。見る限りバイクのタンクやヘルメットなど一つもありません。代わりに、机の上に私が見たものは、、、、

「ペイント中のセーラームーンのセル画の山だぁぁあああ」

うぉおおお!!こいつアニメーターだったのかぁあぁあぁあああああ!!確かにアニメのセル画も塗装の一種であることは間違いないし、ヘルメット塗装の仕事なんて年間そうあるわけでもないだろうし、安定的に仕事があるのって、やっぱアニメ・・そう考えてみれば全て辻褄が合うわけですよ!

うーん、「日本のアニメーターは食えない」って聞いてたけど、食えないペイントアーティスト達がアニメーターで食いつないでるってのが実態なのかもしれない・・。日本の漫画やアニメのレベルが高いのもアーティスト目指している人たちがこういう世界に流れ込んでるってのもあるのかも。

このカミングアウトにより、私は安心しきって彼にペイントを任せることにしたんです。

だって、セラムン描くってことは、漫画描きとしての絵心があるってことですからね。私は彼に買ったばかりの新品ヘルメットを渡し、僻地練馬を後にしたんです。

ほらね、最後はデビルマンとバイクが綺麗に繋がったでしょ。そりゃ必ず繋がるんですよ。昔からヒーローの足といえばバイクと決まってる。だからこの世のどんなバイク乗りもきっと自分の核になるヒーローっていると思う。私にとってはそれがデビルマンだったという、今回のブログはただそれだけの話なんです。

ogp

最後になりますが、こちら2018年に製作された湯浅政明監督版デビルマン。賛否両論あるようですが、わたくし的には今の商業アニメを取り巻く諸事情の中で「よく作った」という評価です。Netflixでしか見られないのが残念ですが、是非見ておいて頂きたい。

これをなぜ見て欲しいかというと、現在のコロナウイルスに関する社会の対応は、デビルマンの悪魔狩りを思い起こさせるから。人類が未知の脅威に立ち向かうには一体何が必要なのか?それを試されてる今このときに、デビルマンという作品のメッセージがリアルに胸に迫る。やはり永井豪は天才・・。