これはとある冬の土曜日、道の駅での出来事でした。

長年バイクに乗っていると、大事故を見たり、イノシシと延々併走したり、カルガモの親子の長い列を見たり、どー考えても居眠りしてるよね!!っていうトラックのイエローラインカットで走馬燈がよぎりまくったり、いろいろ驚くことに出会います。しかし、今回のは異空間からの次元魚雷、これほど驚いたことは久しぶりだったかも・・。

美しく晴れた休日に通い慣れた道の駅までやってきて、敷地の片隅でヘリノックスのチェアにちんまり座ってコーヒー片手に一服してたら、オジさんのハーレー乗りがやってきたんです。

まだ3月上旬なんで、山は寒い。白山スーパー林道も閉鎖されてますから、その手前にあるこの道の駅にも車はまばら。寒空の中で根性出して、この道の駅まで出張ってるバイクも10台以下と、春になるとごった返す道の駅も、いささか寂しい状況でした。

その静かな道の駅に、茶色の革ジャンに黒いズボンをはいたオジさんが乗ってる緑のロードキングが入ってきたんです。やがてゆっくり減速してバイクが止まる・・。うん止ま・・・った。・・・・止まったのはいいんですが、オイオイ、その場所はとんでもねぇぞ!!

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(家老が殿をディフェンスしてんのか?ってほどド真ん中ストレートに邪魔!どうですか?凄い違和感でしょ?手前にある白線がバスの駐車スペースなんで、完全にバスが通りに出るルート塞いでるんですよ。ちなみに周りに一台もバイクいないのは、当たり前ですがみんな隅っこに止めてるからです。)

これって、なんていえばいいのかなぁ・・イメージ的には高速道路のサービスエリアで車がぐるぐる回ってる外周路のど真ん中にバイク止めちまった感じですね。このオジさん、ここにバイク置くと平然とどっか行っちゃったんです。

「オィイイイイイイイ!!そこだめでしょ!!どー考えても通行路のど真ん中でしょーーーッッ??」と心の中で絶叫してました。

もう私、産まれたての子鹿のように膝がガクガクしてしまいましたよ。何十年もこの道の駅に通ってんですが、こんな止め方見たのはじめてでして、とても大きな衝撃を受けて思わずスマホで激写しまくってしまったんですよ。

「そこまで言わなくても・・、このオジさん初めてこの道の駅に来たからわかんなかったんじゃない?」って擁護する方もいらっしゃると思いますが、それはもう絶対にない。あくまで乗り手はオジさんであって、「モウロクしたお爺さん」ではないんです。認知能力が普通にあれば、まず絶対ここには止めない。それほど違和感のある場所ですよ。しかもこれ見よがしに横腹見せての斜め停車炸裂ですよ。

「つーかガラガラなんだから他に止める場所一杯あるのになんでここなのーーっ??ひょ??ひょっとしてこのワタクシめに強まったローキンを見せたかったのでしょうか!!ひょおおおお!!だとしたら罪人は私?私がここに座ってたのが悪いの?うっ・・頭が・・」

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(イマイチ場所がピンとこねぇなって人には航空写真でご説明。これ道の駅の全景です。峠の茶屋の前方と後方に大きな駐車場がありますが、ほとんどの車バイクが物産センターとキジトラ珈琲あたりの建物周辺に集まります。)
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(緑のローキンが置き去りにされたのは矢印のところ。物産センターと食堂の間。バス停マークと、バスの待機位置の白線見て貰えばどんなにトンデモないかがわかる。完全な駐車禁止区域です。当然ですが、ほとんどのライダーは、黄色のところに止めている。)

私はこういうの見ると普通はゲンナリするんですが、今回はあまりの凄まじさに「スゲぇモノを見た!!」という興奮の方が大きかったんです。

これまでハーレーで高速道路のパーキングのど真ん中を占拠してる人たちはよく見ましたが、誰が見たって明らかな通行エリアのど真ん中に止めた勇者を見たのは私のバイク人生で初めてかも。

いや、ハーレー乗りはあまたあれど、こんな所業ができるのは「ターミネーター」以外にない。あのオジさんは未来から送られてきたTー800なんです。つまり、この道の駅のどこかに将来のレジスタンス軍のリーダーを産む女性がいるんですよ。俺は彼女を守らねば!

もう私の目はこのオジさんに釘付けとなり、未来の世界を守るため、浮気調査する探偵のように彼の様子を物陰からうかがっていたんですが、オジさんは予想に反して、妙齢の女性を殺害することなく去って行きました。

しかし、あらためて、こういうの見ると「ハーレーってスゲぇなぁ・・」と思いますね。

このオジさんも車でこの道の駅に来たのであれば、絶対にこんなとこに斜め駐車はしないと思うんですよ。でも、キング・オブ・モーターサイクルと呼ばれし乗り物に跨がると、「どかんかいワレ!!!」と仁王立ちになっちゃうようです。まぁそれはある意味「回春効果」ってことで、若者らしい覇気が戻ることは悪いことではないんでしょうが、程度ってもんがありますからね。

「ねぇ君、これをコピーしておいて。あと月曜日の私の予定は?資料はこれかね?わかった、土日で読み込んでおくよ。それでは良い週末を楽しんでくれたまえ。」

ってな感じのデキる中年ビジネスマンが週末にハーレーに乗りこむと

「へっへへへ・・・その種モミをよこすんだぁああああ~~♡」

「やめて下され!これはこの村の未来・・」

「はっはぁ!!このジジィめ~!!なおさらその種もみが欲しくなったわ~~♡」

と素敵な台詞を吐きながら村を襲撃する世紀末強盗団みたいになってしまう。・・いや、こういう変身願望はだれにでもあるわけですし、私はあんまり人に干渉はしたくないんですが、バイク乗りが生存する環境を守るための最低限の常識ってもんがあるんじゃなかろうか?

ランバラル3・眼鏡付
(余談ですが、私が大学時代所属していたサークルにはオヤジと筋肉が大好き!という女子が一名生息しており、仲の良かった同期女性の語るところによると、彼女の部屋は大量の少女漫画と「ランバ・ラル」「シュワルツェネッガー」のポスターで満ち溢れていたそうです。フケ専とマッチョイズムは古来より女子に根深く浸透している性癖なんです。まさに度し難し。)

私はバイク乗りの素行の悪さって、快楽主義が半分、社会のルールに対する不満や抵抗が半分であると考えているんです。

若くて血気盛んなうちは社会に対するストレスは暴走行為になっていくわけですが、体力や運動神経がなくなってくると暴走ってなかなかできない。長いブランクの後にリターンしたり、高齢になってから免許取った初心者さんがいきなり暴走するのはちょっと無理がある。そんな中で社会に叛逆をしようとすると、このオジさんみたいに道の駅でターミネーターと化してしまうのかもしれない。いずれにせよ、過去散々オイタしてきた私にそれを止める権利はまったくないわけですが。

でもねぇ。やっぱバイクにとって「戦闘エリア」は公道や林道なんです。一方、道の駅は完全に「非戦闘エリア」。砂漠のオアシスみたいに疲れた旅人が休息を取るためにある場所なんですよ。一部のバイク乗り(若い頃の私も含めて)の問題点は、この戦闘エリアと非戦闘エリアの区別がついてないところなんです。

ダンジョンの中でモンスターと戦っているときに多少非常識な戦闘方法をとったところで、「変わった奴だな・・まぁこういう奴もいるよねぇ・・」って周囲の冒険者に面白がられるだけの話なんですが、町の中で目をとんがらせてダンビラ振り回したら、「何じゃこいつはぁ!!つまみ出せーー!!」って町中の人から白い目で見られるのはもうしょうがない。爆音とか迷惑駐車ってまさにこれ。

実は私、道の駅に着くまでに、タラタラ走ってたこの「ローキンオジさん」を追い越してるんですけど、走ってるのを後ろから見てる限り、とっても姿勢良く乗っていらっしゃるわけですよ。コーナーでも必要以上にバンクさせず、模範的でお堅い乗り方でした。

でも、道の駅に入ってきた途端、バスの通り道のど真ん中を斜めに占拠するというオラオラぶりを炸裂させてしまってる。戦闘エリアでは極めて大人しいのに、非戦闘エリアで傍若無人っていうのは、漫画でいうと「やられフラグを頭頂部に立てているザコキャラ」の典型。

やっぱバイク乗りである以上、その主張は「公道の上でのライディングで示すべき」だと思うし、「恥かくにしても、道の上で」だと思ってます。だからといって私みたいに、大地への五体投地で恥かきまくるのはどうかと思いますけどね。

実はこの道の駅、数年前までは休日になるとバイクが何十台もずらりと並び、近隣のバイク乗りの聖地みたいなところだったんです。でも、今はバイクを止めていたところを全部駐禁にされちゃって、すっかり寂しくなってしまってます。

一部のバイクが耳をつんざく爆音で休日を楽しむファミリーに多大なご迷惑をかけてましたから、道の駅を管理する自治体にクレームが来て二輪の駐輪に規制がかかったわけですよ。要は非戦闘エリアでイキりすぎて「つまみ出された」わけです。

大体バイクが迷惑がられて追い出されるのって爆音か迷惑駐車か、事故の多発が原因であることがほとんどなんですが、この道の駅では爆音と迷惑駐車の二つが同時炸裂してしまってたんですからもうどうしようもない。

まぁ本能と快楽にまかせた迷惑行為により、居場所を追い出されるというのは昔からバイク乗りのお約束ですし、自分も若い頃そういう時期があったので、自分だけがいい子ちゃんになるつもりはありません。

ただ、若い子は多少羽目を外しても許されますが、これだけ乗り手が高齢化してくると、社会も昔みたいに大目に見ようって感覚はなくなってきますよね。

一定年齢に達した男達は自分の行いに対する社会的な責任を取ることを求められる。そういう意味では昔よりもバイクを見る目はだいぶ厳しいんじゃないかな?って気がしますね~。