カワサキが250ccの4気筒を復活させるようですね。いやー素晴らしい。速いとかどうとかいう前に、今この時代に超高回転型のクォーターマルチを出すという英断に最大限の賛辞を送りたいです。

4気筒250cc(以下めんどくさいので250マルチと呼称します)はレプリカ世代のベテランライダーになるほどイマイチピンと来ないんじゃないかという気がします。なぜなら250マルチは、90年代にはありふれた存在でしたし、当時はイマイチ不遇であったと認識しているからです。

90年代の「スピードが命」という時代には、同じ250ccクラスに「NSR」、「TZR」、「RGV-Γ」の2ストローク御三家がいました。NSRなどが有り余るパワーを吸排気で絞って軽々45馬力の自主規制枠に収めていたのに対し、250マルチは高回転化でパワーをキリキリ絞り出し、なんとか自主規制の上限馬力に到達しているという状況だったんです。

このブログを読んで下さっている若い方の中には「なんで4ストロークは2ストロークに馬力で勝てないの??」って素朴な疑問が湧く方もいらっしゃるかもしれません。その理由は実に簡単で、4ストロークが「吸気」「圧縮」「爆発」「排気」4行程をキッチリ分割して行い、燃焼行程の全てが終了するまでに「クランク軸2回転」を要するのに対し、2ストロークは「吸気、排気、圧縮」を同時処理することで、燃焼行程を4ストの半分の2行程、「クランク軸1回転」で終わらせちゃってるからなんですね。

例えばタコメーターが1万回転時の爆発回数は4ストロークは毎分5000回。2回転ごとに1回の爆発行程ですから当然こうなる。これに対し、2ストロークは1回転で1回爆発してますから爆発回数は毎分1万回ということになる。同じ回転数にもかかわらず燃焼機会が2倍違うんです。エンジンが爆発エネルギーで動いている以上、爆発回数が違えば発生トルクにも大きな差がつきます。これが理論的に「4ストがパワーで2ストに勝てない」理由です。

一方これを環境性能という視点から見ると完全に優劣は逆転する。4ストが4行程をキッチリ分け、バルブ制御で空気を綺麗に燃やしているのに対して、2ストはバルブなどなく、燃焼行程が思いっきり省略されてますので、もう吸いっぱなしの吐きっぱなし。加えて焼き付き防止のため燃焼室に2ストオイルまでぶち込んでますので、もはや闇鍋。4ストに比べたら音も臭いも下痢便のように汚いんです。これじゃ「タバコの煙ですら許されない」今のご時世に生き残れって方が無理ですね。

しかしいくら排ガスが綺麗だったとしても、中免の頃の私は400以下の4ストマルチに興味がありませんでした。お恥ずかしい話ですが「速いが正義」のスペック厨で、パワーのでる2ストしか目に入っていなかったんです。しかし、今は、2ストのメリットとデメリットも理解してるし、私の中でのバイクの評価軸自体が変わってる。今回ZX-25Rの評価にあたって、私がしっかりと判断したいのは、速いか遅いかではなく「今この時代に250マルチに存在意義があるかどうか」です。

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(ZX-25Rの勇姿。WEBオートバイから画像転載させて頂いてます。ハイテン鋼のスチール・トラスフレームだそうで、これも好印象です。公道ではガチガチのアルミツインスパーよりも、トラスの組み方でしなりと剛性をうまくコントロールできるスチールトラスフレームの方があってますね。)

結論から言うと私は今の時代だからこそ、250マルチはロマンと趣味性に溢れたエンジンとして評価されうるんじゃないか?と思っています。90年代の250マルチは1万5000回転オーバーで45馬力を絞り出していましたが、クォーターで45馬力ですから、リッターあたりで180馬力。新車価格60万円程度の自然吸気エンジンでこの数値はとんでもない。実際MC22(90年代のCBR250RR)はレッドゾーンが1万9千回転からで、あと少しで2万回転に届こうかというほどの超高回転型だったんです。

悲しいかな1気筒あたりの排気量は僅か62ccと「ヤクルト以下」しかなく、フリクションにパワーを食われ、低速スカスカで加速しても全然迫力なかったですけど、速い遅いは別にして、超高回域には「バイク乗りのロマン」があるんです。

超高回転と聞くと、遙か昔のレースシーンで2ストレーサーに掟破りの楕円ピストンと8バルブで真っ向から戦いを挑んだコスト度外視の変態バイクNR500が思い浮かびます。レースではほとんど良いところがなかったNRですが、当時500ccの2ストレーサーが10000~11000回転でピークパワーを出していたのに対し、「2ストに対して爆発回数が半分なら、2ストの2倍回せばいいじゃない!!」とばかりに、その倍の20000回転をブンまわし、2ストを超える馬力をたたき出しました。

このように高回転高出力は4ストロークエンジン技術の結晶です。250マルチは、このNR500と同等の回転域をなんと公道で味わえる。小排気量でトルクが不足しているという指摘も現代では決してマイナスではなく、「胸のすくような超高回転域を存分に楽しめる」というプラス面の方が勝るはず。

やれ燃費だの効率だのグローバル化だので、製造コストが安いパラツインや単気筒ばかりになり、中免で乗れる4気筒がCB400SFしかない状況で、新設計の4気筒エンジンに熱くならない方がおかしい。効率重視の時代に非効率な超高回転エンジンで時代の波に逆行するその在り方こそがバイクの本質じゃないのか?

そう、いつの世も
「ライダーと共に風にあらがう」のがバイクという乗り物なんです。

それにしても、90年代当時2ストエンジンに決して手を染めようとせず、我が道を貫いたカワサキが、30年後の今、先祖返りの4気筒投入でこのクラスの覇者となろうとしているところになんともいえない郷愁を感じます。

「2気筒なんかでお茶を濁すのか?あの頃の熱い気持ちを思い出せ!環境というレギュレーションでガチガチな今この時代にクォーターマルチでどこまで回せるか、極限の勝負をしよーじゃねーか!」と誘ってるんじゃないかとすら思えるんです。


ライムグリーンモンスター
(珍しくまともな一枚絵。スポーツ大好きやんちゃ系女子を緑に塗っときゃ、もうカワサキ。カワサキが育んできたライムグリーンというイメージカラーは、その色を纏う全てをカワサキ風に染め上げる。メーカーにとってそれは大きな財産であり、そのカラーを守るためもエポックメイキングなチャレンジを続けなければならないんです。)

250マルチに関しては250ccで4気筒なんて安っちいじゃん・・おもちゃだな・・」って意見もあるかもしれませんが、「アホかぁああ!!そんなことは断じてなぁぁぁああああい!」と声を大にして言いたい。バイクっていうのは排気量がでかいほどパワーが楽に出せて、パワーがあれば価格も高いので、排気量がデカい方がエライんだ!!って勘違いがスゴイ。でもそれは製造コストと全然関係ないことを理解するべき。広い目でちまたのメカを見渡せば、「より小さく細かなものが精密に稼働する方がエライ」んです。

製造工程にしても小くて複雑な方が作りにくいに決まってるんで、パワー至上主義から離れ、機械に趣味性とロマンを見るのであれば、小排気量のマルチシリンダーによって得られる精密感とそれを存分に回して楽しむ超高回転域は非常に熱いし、趣味としてのレベルが高いと私は思う。

これからのバイクは効率ではなく、趣味性です。250ccがショボいとか、1000ccがエライとかいうのではなく、「公道で走って楽しいかどうか?趣味性が高いかどうか?」でバイクを選択する時代になっていくはずです。

ハーレーのように大排気量から湧き出るパワーを低回転域に限定し、「大排気量車で高回転なんかいらんでしょ?低回転で湧き上がるトルク感を楽しみましょうよ。」という路線がある一方で、「公道の速度域でも扱いきれる小排気量だからこそ超高回転域が熱いんです。気兼ねなく思いっきりブン回してね。」っていうのも提案として大いに理にかなってる。いずれにせよ「扱いきれる楽しさ」ってのは公道バイクでは超重要な見識だと思う。そんなところをしっかり押さえ、このプロダクトを提案してくるあたり、「これからの高級バイクシーンを引っ張る日本メーカーはカワサキだな・・」という思いがますます強くなるわけです。

250マルチは製造コストも価格もクラスの中では最も高価で、多分台数もそこまで出ない。販売がコケたときのリスクも相当あると思う。H2のスーパーチャージャーもそうですが、それをためらいもなく製品化し、他のメーカーに対して一歩新しい提案をしようとする姿勢にカワサキというメーカーのバイクにかける情熱というかセンスを感じますし、それは変態バイクNRを生み出したホンダから失われつつあるものだとも思う。大体単気筒や2気筒にCBRのネーミングつけちゃった時点で4気筒なんか出す気ないのが明らかなんで、「このカワサキの4気筒がもし大ヒットしてもホンダは切る札ないな~」っていう「詰みの状態」がはやくも見えてきちゃうんですよね。

ZX-25Rには「自分たちはこれから夢があるバイクを作っていくんだ!っていうチャレンジングな情熱があるし、これからの時代はそういう姿勢じゃなきゃバイク自体が生き残っていけないと思ってる。

今や大型バイク免許も教習所で取得ができるようになり、選択できる排気量も青天井。パワーに関しては飽食時代に入ったといって良いでしょう。そこに「リスクが少ない領域で超高回転が存分に味わえるぜ!しかも車検もねえぜ!」という素敵な選択肢を提供してくれるのがZX-25Rなんです。

今もし4気筒を買うのなら、精緻な作り込みで超絶高回転域を公道でたっぷり堪能させてくれそうな、このバイクが筆頭候補で間違いない。ZX-25Rはとっても素敵で熱い趣味バイク。こんなのがどんどん売れて欲しいと心から願ってます。