「えええええっナニコレ!!なんで美少女フィギュアなの??今回こそ真面目なバイクキットの製作記じゃなかったの??」と思われたアナタ。

いやちゃんと後ろにバイクありますでしょ。名車ドカティ916のレース仕様ですヨ。さぁドカティストは泣いて喜びましょう。なんせ、この916レーサーは「キング」カール・フォガティが搭乗し、スーパーバイク選手権を2連覇した名車中の名車なんですから。

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(グリズリーパンダの秀作キット。RQ霊夢&魔理沙。2013年のワンフェスでお目見え。写真が小さい!!って方はクリックで拡大ができます。)

「え、肝心のバイクがフィギュアで見えねぇよ!!って?」そりゃしょうがないです。ドカティストが失禁するようなこの名車も、霊夢様と魔理沙様という東方の大人気キャラをシコリティの高いレースクィーン衣装でダブル配置されたら、目立つのはもう絶対無理。男の目線はフィギュアが独り占めでドカティ涙目です。

所詮「男はメカよりハイレグ、パンチラ、ヘソ出し」なんです。

私もメカ大好きだし、エンジンの造形美も好きだけど、自分のガレージにハイレグの美少女なんかが来ちゃったら、もう絶対そっちにしか目がいかないですよね。だからコレは浮気じゃない。人の本能、確実に。

もの凄いマシンとセクシー美少女という、男が好きなモノを両方ディスプレイ台に盛り付ければそこはすでに桃源郷。レーサーとレースクィーンの相乗効果で、圧倒的な幸せ空間が生まれるんです。

とりあえず今回は、製作記の第一回目ですので、慣例通りこのバイクとフィギュアの説明から。

ガレージキットはアルトアイネス(製作ブログはこちら。→グリズリーパンダ アルトアイネス その1 その2 その3 その4 その5 最終回)と並ぶグリズリーパンダさんの初期の名作です。発売は2013年。もう6年前なんですねぇ・・(遠い目)。

このキット、東方の人気キャラ、博霊霊夢と霧雨魔理沙をレースクィーンに仕立てているわけですが、あまたある東方のガレキフィギュアの中でも、たたずまいの可憐さと魅力的な表情、2体の完成度、造形センスなど、私基準で1、2を争う名作キットだと思ってます。

こういう強キャラ2体配置の構図はディスプレイしたときに、非常に華やかで、古来より日本人の心に響くものがある。神社の狛犬や東大寺南大門の金剛力士像なんかも阿形、吽形で2体セットですが、これって世界の始まりと終わりを対比するものらしいですね。うーん壮大。

それにしても、東方で人気2トップのお二人にレースクィーンをしてもらえるなんて、ドカティ916も感動で冷却水を吹いちゃうかもしれない(冷却水吹き出しはイタ車のチャームポイントですよね。)。

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(こちら後ろから。ドカティストは感涙モノの916。撮影はやっぱり自然光がいいので、野外で撮影。タミヤの良心的なキットに慣れちゃっているモデラーには、イタリアのユルいキットはメシマズな料理を食わされている感じです。)

とにかくこの霊夢&魔理沙はレースクィーン仕立てにしたのが何より秀逸でした。バイク乗りの私としては、バイクと組み合わせられるというだけで、自分の中での優先順位は爆上がりです。レースクィーンというのはバイク好きの男にとって、とにかく刺さりまくるモチーフなんですよね。

しかし、このフィギュアは残念ながら一つ重大な問題がある。せっかくのレースクィーン仕様なんで、作る側としては「レーサーのそばに置きたい」わけですよ。でも、残念なことに、このサイズのバイク模型は超希少なんです。ましてやレーサーになるとさらに希少。ガレキフィギュア自体を手に入れるのが大変なのに、さらにそれと組み合わせるバイクまで流通していないなんて、もう製作前のハードルが高すぎる。

タミヤやハセガワ、アオシマなどのメジャーな模型メーカーでは1/6か1/12がオートバイ模型の標準スケール。1/12なら車種も多く、もう選び放題なんですが1/12ではフィギュアの表情などを十分作り込めるスケールにならないし、1/6ではフュギュアとして大きすぎ、セット物としては重すぎる。

フィギュア2体セットのキットですと、必然的にフィギュアでは小スケールといえる1/8か1/9くらいが落とし所なんですが、どちらのスケールも国産模型メーカーではバイクキットのスケールがないんです。

そこで国産を諦め海外に目を向けてみると、アメリカのレベルが1/8、イタリアのプロターが1/9のスケールでインジェクションキット(←プラモデルのことです)を作ってる。で、どっち取ろうか?って考えて、プロターの1/9サイズを選んだんじゃないか?って思うんですよ。プロターの方がレーサーのキット沢山出してて、レースクィーンフィギュアとのマッチングがいいですから。

しかし、このキットが出たときには、既にプロターは倒産しており、「肝心の1/9のレーサーが手にはいらねえよぉぉおおお!!!」って状態だったんですよね。とにかくレーサーが横にないとレースクィーンは全然映えないし、空間も完結しない。やむなくバイクのキットが手に入るまで、しばらく積んでありました。

その後もちょくちょくヤフオクをチェックしてたわけですが、ある日ソコソコの価格で、このドカが出てきたもんで、ソッコー落札して、なんとかキット製作が開始できたってのが顛末です。流通量も少なく、全然人気のない海外製キットであるのに加え、当時ワンフェスでこのRQ霊夢&魔理沙を購入した人の9割は、プロターの1/9キットを買い求めたはずですので、あっという間に市場から消えてしまったわけなんですね。

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(プロターのドカティ916Racingの箱絵。当時のレーサーとして、非常に美しいフォルムだった916。ゼッケンがフォガティの1番じゃなくてコシンスキーの11番なのが悲しいですね。)

このドカティについて簡単に説明をしておきますと、元になったのはドカティ916のデスモクアトロ。1990年代にスーパーバイクにエントリーしていたレーサーです。デスモっていうのはドカティが誇る「デスモドロミック機構」で、簡単に言うとバルブスプリングなしで駆動するバルブシステムのことです。通常のオーバーヘッドカムはカムに押されてバルブが下がり、スプリングの反力によってバルブが戻るわけですが、超高回転域になるとスプリングにかかる負荷は半端じゃない。

「らめぇえぇ!!そんなに動かしちゃこわれちゃぅぅうぅ!!」ってスプリングが泣き叫ぶわけです。すさまじくエロいですね。

さらに追い込んでいってスプリングの伸縮速度がスプリングの固有振動数に近づくと、共振して激しい振動現象を起こし、スプリングが折れちゃう。こうなると上がってきたピストンとバルブが接触して、エンジンが逝ってしまうというわけです。男性で例えると、股間を使いすぎて未知の性病になり、治療のために尿道カテーテルブッ刺されて、トラウマでEDになるようなものでしょうか。(これをサージングといいます。)

当時4気筒エンジンで高回転高出力方向に進化させまくっていた国産勢に対して、Lツインにこだわっていたドカティですが、ツインは4気筒に対して1気筒当たりの排気量が倍になるわけで、当然空気を吸い込むためのバルブも大きくなる。バルブを大きくすればサージングも起きやすくなっちゃうので、高回転ブン回すと壊れちゃう。これじゃレーサーとして致命的です。

このサージングを防ぐために、市販車なら強化スプリングをぶち込むことになるわけですが、レースのような超限界域ではどうしても折れちゃうわけです。そこでドカティは開きも閉じも両方ともカムで直接制御する機構を開発した。いわゆる「カムによる強制開閉式バルブ機構」、それがデスモドロミックというわけです。スプリングが折れるなら、スプリングを無くしちゃえばいいじゃない。」という単純な発想を技術で克服しての連戦連勝。これがドカティのアイデンティティになったわけです。

Desmo-trialbero-schema(デスモドロミック機構。この画像が一番わかりやすい。バルブを開くカムと、バルブを閉じるカムがあるのがおわかりでしょうか。)

この916はデスモドロミックで駆動するバルブを一気筒当たり4つ備えた4バルブ仕様なので、デスモクアトロと名付けられてます。最近はL型4気筒になって16バルブとなり、これはデスモセディチと呼ばれてますね。要は吸気面積を増やすことにより、高回転域でパワーを絞り出すことを前提とした決戦仕様です。このエンジンは、ヤマハやホンダが束になってかかっても、しばらくは全く勝負にならなかった、すんごい奴だったんですよ。(レーサーとしてはともかく、市販車としては弱点が山ほどあるわけですが、コレは後日のブログで。)

それにしても、このプロターのドカティ916は何を間違ったか、デカールが2連覇した「キング」フォガティじゃなくて、J.コシンスキーなんですよね。日本のバイクでいうと、ラッキーストライク・スズキのRGV500Γの模型買ったら、ケビン・シュワンツじゃなくてなぜかセカンドライダーのチャンドラー君のデカールが付属してきたってことなんです。

「なにが悲しゅうて、セカンドライダー仕様なんじゃぁああぁあぁああああ!!」と頭かきむしっちゃうのもやむを得ない。

「こんなことしてるからプロター潰れるんだよ!」「プロターは人の心が解らない!!」っていいたくなりますが、経営危機のプロターじゃフォガティの権利が高額で買えなかったのかもしれないなぁ・・・・これが弱小メーカーの悲哀なのか?同じ自営業者としてこの悲しみを共有すべきなのか?まぁ・・バイクが悪いわけじゃないしね。

そんなこんなで、今後は下らない駄文をはさみながらこのキット制作風景をダラダラと書いていきたいと思います。