私はホンダのディオで自宅とバイク小屋を往復する時に半ヘル使ってます。原付でダラダラ町内を移動するには、スポンとかぶればいい半ヘルはお手軽で非常に便利です。一方でハーレーやゴールドウィングF6Bに乗るときは半ヘルは絶対かぶらない。なぜかって?そりゃスピードと走るシュチュエーションが違うからです。

この半ヘル、アメリカンクルーザーには根強い人気がありまして、これを装着して爆走するハーレー乗りが相当数存在しているため、半ヘル問題はバイク乗りの間で長らく議論され、どうにも結論の出ない状況になってます。

何で結論が出ないかっていうと、半ヘル否定派は

「半ヘルなど死にに行くようなもの。バカヘルと呼ぶのがふさわしい」

というのが主たる主張ですし、容認派は

「コケなければどうということはない。そこまでお前らにどうこういわれる筋合いはない。自己責任でフリーダム」

って主張で共に折り合えないから平行線になってるわけです。

この議論が収束しないのは、ひとえにどちらの言い分にも正当性があるからです。私は「半ヘル大好き」な人の考え方を変えることは無理だろうと思ってますし、半ヘル乗りが自己責任という葵の御紋を出している以上、水掛け論だと思っています。

で、なんでそんな不毛なものを今回取り上げたかっていうと、この半ヘル問題を解決するべく努力していくことこそ、バイク文化を深める意味で大事なことだと考えちゃったりしてるからです。

簡単な解説をしておきますと、半ヘルというのはいわゆるお椀ヘルメットで、これにサングラスかけて、バンダナを口と鼻に巻いて走るってのが、ハーレー乗りの定番の一つになってるんですね。

サンズオブアナーキーっていう
(こちらが典型的なアメリカン半ヘルスタイル。サンズ・オブ・アナーキーっていう番組のようです。強い男に憧れを抱くハーレー乗りがスタイルとしてコッチ系に至っちゃうのはわからなくはないけど、映画って俳優の顔出さなきゃないと演技できないから、基本半ヘルかノーヘルになるに決まってる。ホントに悪事働くなら面バレしないフルフェでしょ。)

半ヘルの利点としては、カッコいいことと、開放感があること。ヘルメットで髪型がぺったんこにならないこと、すぐタバコ吸えたり、トルエン染みこませた綿入りマスクつけられたり(今時そんな人はいないんですかねぇ・・)とか、そんなぐらいじゃないでしょうか?

一見楽そうに見えますが、フルフェイスの方が圧倒的に環境はいいし、疲れない。まぁハーレーではトルエンキメて歯溶かしながら赤信号に突撃する人もいないと思いますから、8割方カッコでしょう。

この半ヘルですが、法律的には全く問題ない。爆音マフラーは明らかに違法ですが、半ヘルは合法。道路交通法を読むとこう書いてある。

道路交通法 第71条の4

  大型自動二輪車又は普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転し、又は乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転してはならない。

内閣府令におけるヘルメットの基準

1. 左右、上下の視野が十分とれること。
2. 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
3. 著しく聴力を損ねない構造であること。
4. 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
5. 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
6. 重量が二キログラム以下であること。
7. 体を傷つけるおそれがある構造でないこと。

半ヘルはこの内閣府令に問題なくあてはまってる。「高速道路用に作られてません!だから125cc以下のバイクでお願いします!」ってメットの箱には書かれたりしてますが、法律には「125cc以上のバイクは半ヘルじゃダメ」って書いてないから、高速道での半ヘルも全然OKだし、違反になりようがない。安全規格のSG等のグレードもいらない。これが刑法の基本たる「罪刑法定主義」って奴です。

だから、半ヘル擁護派の「法に触れない以上自己責任だろ!!」ってのは主張としては完全に正しい。

合法である以上、半ヘル否定派の意見は何一つ強制力を持たないわけですし、「規制ってものが大嫌い」な私にとって自己責任論は大いに賛同するところでもあります。ただ、私が規制に反対しているのは、安易な規制は「思考能力を奪い、真の解決を生まない」からであって、公道での半ヘルに賛同しているわけじゃないんです。

「じゃあ、お前はなんで半ヘルを問題視してんのよ?」ってことになるわけですが、一度でも大怪我してるライダーからすれば半ヘルってのは、「そんな装備で大丈夫か?」「大丈夫だ、問題ない」という、お約束のパターンにみえるんですよ。もう見るからに死にフラグがビンビンに立ってるから困ってるわけです。


(伝説のエルシャダイを知らない人はこちらの動画を。作中の「そんな装備で大丈夫か?」「大丈夫だ、問題ない」という台詞はあまりにも有名。「問題ない」と余裕を漂わせ戦地に向かった主人公がボコボコにされ、リトライ時に「一番いいのを頼む」と、当たり前のように要求し、マーシャルアーツでドヤ顔を決めまくる。そう、人は痛い目に遭ってようやく理解する。バイク乗りのパターンは私も含めて大体これ。)

「半ヘルやめろ!」って人の本心を言い換えれば、「別にアンタのことだからいいんだけど!パンツ一丁でダンジョン入っていくなんて!もう正気なの?」って感じなんだろうと思います。

いや、確かにダンジョンで冒険するのにパンイチだろうがフンドシだろうがネグリジェだろうが法律には違反しないわけですが、危険だらけの高レベルダンジョンに防具なしで向かわれたら「いや、せめて革のヨロイはつけようよ。」って一応は止めるでしょう、人として。しかもそこで会心の一撃食らってあっさり棺桶になったりしたら、パーティー内部から「ちょ・・おま・・なんなの?一体??」って突っ込みが入ることは間違いない。

「いや、そんなの私の勝手だし!パンイチと半ヘルを一緒にしないで欲しいし!!私は事故らないから大丈夫なんだからね!!」

っておっしゃる方もいらっしゃるかもしれない。でもねぇ公道事故9回という恥を撒いてきた事故魔の私からいわせると、どんなに危機察知能力が上がっても「絶対事故らない」ってのはあり得ないんですよ。実際私より運転が上手かった人も、みんなバイクを降りてしまってるんですから。

私だってココ10年は自爆ゴケは一切ないわけですが、それでも信号待ちで後ろの車がノーブレーキでツッコんできて「うぼぁぁあぁああぁぁあ!!」と漫画みたいに宙を舞ったりしてるわけです。

バイク装束ってそういうイレギュラーが起こったときに我が身を守る保険でもある。

こっちがちゃんと運転してても、私のようにケツから掘られたり、幅寄せされてスリコギにされたり、高齢者の軽が魚雷のように横丁から飛び出したりしちゃったら、もうあっという間にナムサン状態です。公道で長年生き残ってくってのは、運の要素もでかい。だからバイク乗りは万一の時ために革製品やプロテクターやメットを着用してる。そんな中、半ヘルってのはもしもの時の保険としては限りなく脆弱です。

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(超がつく雑コラですが、レーサーレプリカ全盛の時代を体験したバイク乗りには、半ヘルライダーはこう見える。原付で町内走り回るくらいなら余裕ですが、公道速度での使用はまさにエルシャダイのパロディ。)

「この拳王に保険など不要!!」っていうのならそりゃもう勝手ですが、あのラオウですら、黒王号に乗るときはお椀じゃないヘルメットらしきモノをかぶってるわけです。しかも、一部のバイク乗りは上半身はちゃんとした革ジャンで、下半身はチャップスにブーツだったりするわけですよ。

「えっうそ??上半身と下半身に保険かけてるのに頭に保険かけないの?頭がこけし君並の堅さなの?」って思うじゃないですか。

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(死後硬直のように自然落下していく本間朋晃の硬直式ダイビングヘッドバット。通称「こけし」。モーションが遅いのでほとんど自爆しますが、直撃したときの会場の盛り上がりが凄い。)

ここまでで大体おわかりいただけたかと思いますが、公道の半ヘルって命に対して「無保険状態」な訳で、それがビジュアル的にわかりやすく周囲に伝わるわけですから、そりゃー見てる人はたまらんわけです。半ヘルバイカーなんて土砂をマウンテン積載してる大型トラックと並び最も近づきたくない危険物体の一つになる。

なぜそうなるかっていうと、この狭い日本の公道環境ってのは、一人で走ってるようでも、「周りに走ってる車やバイクとの相互信頼のもとで成立しているもの」だからです。速度が出て不安定なバイクで「ちょっとでも接触したらオレ死んじゃうから!余路死苦!!」ってオーラ出してる人が横に来ちゃったら、それだけでもう気が気じゃない。

加えて、日本でバイク乗っている人って、マリファナで死ぬか、バイクで死ぬか?っていう人生捨てた真正アウトローじゃないですよね。家に帰れば家族がいるし、平日になれば職場もちゃんとあるはずです。怪我したり死んじゃ駄目な人達が、十分死ねる速度で無保険ってヤバいでしょう。

「死のうが生きようが、それは自己責任だろ?」っていうのは、「死んでも誰も困らないし、悲しまない。誰の人生にも影響がない」という人間になってはじめて主張できることであって、そんな人になることは現代社会ではほぼ不可能。自分の命が自分だけのモノと思っていいのは右も左もわからない若いうちだけで、歳を食ってもそれじゃさすがに恥ずかしい。

加えて、バイクは一人の不幸によって、その周辺もバイクに乗ることが難しくなる。バイク乗りが重大事故を起こす度に、その周り全てが「死兆星が見えちゃってる人」のような扱いになり、「バイクは頼むからやめて」ってことある毎に言われるようになるんです。だから半ヘルって、バイク乗りにとって「許されてるけど、許されない」わけなんですよ。

しかし一方では、半ヘルスタイルってハーレー乗りにはスタイリッシュでカッコいいって思われてるフシがあるんで、「ダサいジェットなんかかぶれるか!!」っていう人もそれなりにいるでしょう。事故って痛い目を見ていない人が、機能性よりファッション方面に引っ張られるのはしょうがない。これは悪い意味での情報洗脳です。

半ヘルを減らすにはそういう情報環境自体を変えなきゃならない。メット売ってる販売業者やバイク業界、メディアなどはバイク乗りが払う金で飯を食ってるわけですから、社会的な責任がある。乗り手の環境や考え方に大きな影響を与えている業界全体がバカな情報を垂れ流しているうちは、どうにも良くなるわけがない。

プロテクターを推奨していたバイク雑誌の横で、半ヘルにバカみたいな価格のアパレルを組み合わせた写真を掲載している雑誌があるのを見ると、「・・これじゃダメだわ。」と苦笑いすら覚える。

リスクを乗り手に押しつけて、好き勝手に情報を垂れ流し、その結果には責任を負わず、死のうが半身不随になろうが、自己責任論に逃げ込んで金だけ取って高みの見物。それは峠でヒザスリ小僧を量産し、死者の山を築いたレプリカ時代の構図そのものではないでしょうか?そんなことを繰り返してるから、バイクは他の業界より文化的に遅れてるし、いつまでたっても「死ぬ機械」とか「走る棺桶」と呼ばれてしまうんです。

バイクの乗り手はどこまでも自由であり、どんな選択も個人の自己責任であるべきです。しかし、そのためには、正しい選択をできるフラットで正常な情報環境が必要なんです。多くのバイク乗りが異常と感じる半ヘルスタイルが蔓延するハーレー乗りは今そんな環境にいるんでしょうか?

ダサいジェットやフルフェしかないのが原因ってことなら「半ヘルなんてダセーことやってられねーよ」ってくらいカッコいいジェットやフルフェを作ってみるとか、業界全体がバイクはどうあるべきか?ということを真剣に考えれば、バイク業界はもっと良くなる。必要なのは規制ではなくモラルなのに、モラルハザードの情報を垂れ流してどうする?って思う。

何年かして気がついたら、「最近半ヘル見ないよねぇ・・」って環境になるのが、規制に頼らない本来の解決の在り方だと私は思うんですよね。