お待たせしました。今回はいよいよ新型ゴールドウィングSC79の私見にまみれた試乗記です。参考にはまったくならないので、単なるチラシの裏としてお楽しみ下さい。

「そもそも、もう発売から1年も経つのに今更試乗記もへったくれもないわ!時期に遅れたインプレなど不要!!」

と感じる方もいらっしゃるでしょう。はい・・おっしゃるとおりでございます。

ただ、言い訳をさせてもらうと、私の居住地である石川県をはじめ北陸三県には現在「ホンダドリーム店がない」んです。ですからゴールドウィングという特殊車両はもとより400ccクラスのホンダ車を購入することすら不可能。

「こんなことがあっていいのでしょうか!ホンダさん!!車で言うとトヨタディーラーがないようなもんでしょう!!ホンダさんは北陸を日本だとは認めないということでしょうか??それとも消滅都市だとおっしゃるのかっ!!」バン!バーン!!ドカァッ!!!(机を乱打)

ゴールドウィングクラスの希少車となりますと、試乗できる店舗はさらに限られ、試乗するには名古屋か長野までいかなきゃいけないんですねぇ・・。いずれにしても、私の自宅から往復500㎞もある(笑)。試乗するだけで相当なガッツが必要になってくるわけです。

「もしもし、あなた家にいないけど、朝からどこ行ってんの?」

「え・・ええ・・ちょっとバイクの試乗に・・(冷汗)」

「はぁん。じゃあ、午後には帰ってくるね。昼ご飯は??」

「いえ、ちょっと帰りは夜の8時ごろになるかなーと・・」

「は?今どこ??」

「・・安房峠です・・・」

「へ?は?あんた一体どこに試乗に行ってんの??」

「長野県の松本市です。」

「アホかぁああああああ!!」

と妻から「おまえはアホの坂田以下」とあきれられ罵倒されるのもやむをえない。でもね「雑誌やカタログにどう書いてあろうが、バイクは乗らなきゃわかんない」という真理は元中古バイク店勤務の私が一番身に染みてる。

「なんじゃあ?この格好悪いバイクは!プッ!ダサっ!!」

などと思っていても、

乗ってみたらあまりに良くって、

「ううむ・・このスタイリングにも必然性があったか・・となると、これはこれで実はなかなか味わいがあるのではないか?・・いや実はスッゴク格好いいのではないか??」

などと評価が一変したりすることはたくさんある(FJ1200やロードグライド等の巨大カウルがフレームマウントされているバイクは私にとってそういう存在。)し、その逆もしかりです。

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(ヤマハのホームページからFJ1200。特に後期型が私の中での伝説バイク。このバイクに乗ったときの衝撃が、その後のバイク人生に大きな影響を与えてます。機能性がスタイリングににじみ出てますね~良い人感が凄い。この巨大カウルに空冷四発。胸がきゅーんとなります。まぁ・・私が支持するバイクということで、当然不人気だったわけですが・・。)

また、ここまで新型ゴールドウィングについて、ブログであれこれ書いておいて

「乗ってもいないのにエラそうなことを書きよって!!おのれのような口だけ野郎はこうしてくれる!!えーい!くぬっくぬっ!」

と、竹槍で脇腹をエグられるようなことになるのも避けたいところですので、ツーリングがてらF6Bで「信州新型ゴールドウィング試乗Vターンツアー」を敢行したというわけであります。

試乗と言っても、所詮ホンダの指定した試乗コースを数周しただけ。「勝手に試乗コース何周でも乗って下さい。コケたら修理費は自己負担でお願いしますので~。」って身も蓋もなく言われたので、逆に安心してもう遠慮なく乗りまわしてしまいましたが、高速道路を走ったわけでもなく、ワインディングを駆け抜けたわけでもない。「ちょっと市内をひとっ走りレベル」で感じたインプレになりますので、そこんとこはご了承の上お読み下さい。

まず最初に結論を申し上げますと、新型ゴールドウィングは「ハク」ではなかった。以前私はF6Bの乗り味を千と千尋の神隠しにたとえ「ハクの背中に乗っているよう」と形容しておりましたが、新型の乗り味はF6Bに乗ったときの「あーなんかうまく言えねぇけど、こりゃ巨大動物の背中にいるようでスゲぇ気持ちいいねぇ」という感じじゃなくて、あらゆる意味でハイテク感がすごかった。搭載された優れた技術達が、しっかりと役割を主張しておりました。

「おお、発進時のDCTの半クラはなかなかのもんですねぇ・・」

「むむ、今DCTが何かスチャリと変速しましたが、なかなか爽やかな感じであります・・」

「ふうむ、このフラットライドな吸収性・・これはダブルウィッシュボーンが仕事してるんですかね・・」

「なんか、すげー車体軽いんですけどぉー。」

などと感動、感心、ふむふむ感の連続。

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(完全にヤンデレとなったF6B。ホンダは優等生ですが、何かをきっかけに突如としてキレはじめるヤンデレの雰囲気が漂います。この手のヤンデレは1に包丁、2に包丁、3,4がなくて、5にバットというイメージ。)

こういう感想になるっていうのは、各部がしっかりと仕事をしているということでもありますが、一方で「仕事しているのがわかっちゃう」状態だともいえるんです。見事に調教されたバイクに乗ると違和感がないので強い印象が残らない。尖ったところやインパクトはないんですけど、バイクが思った通り動いてくれるわけです。

ついでに試乗したCB1300SBが、既存の技術を熟成しながら柔道部の主将のような男気あふれるアナログライクな乗り味を実現していましたので、新型の化学調味料感はさらに強くなりました。

F6Bはその凶悪な重量を除けば、乗り手に優しい女性的なバイクだと私は思っているんですが、まるで良くできたメイドさんのように、その優秀さを表に出さず、何も言わなくてもこちらの意図を察し、必要で十分な仕事をさりげなくこなしてくれてます。

一方新型のSC79はバイクが「私にお任せ下さい!」と割と快活に主張してくる。搭載された自慢の各種ハイテク機能の存在を乗り手に意識させる場面がそれなりに多いのです。これを楽しいととらえるか、饒舌ととらえるかで評価が分かれると思います。

新型に乗り、まずもって感じたことは「軽い」こと。車重はフル装備のツアーでF6Bと同等。しかし、運動性だけでなく全ての操作がF6Bより軽い。まず、跨がってサイドスタンド状態からの引き起こし時点で、もうF6Bよりずいぶん軽い。旧型オーナーとしては「なにこれどうなってんの?」状態。

取り回しもツアーの状態でF6Bと同等かそれ以上に楽。「こりゃ前進後退機能などいらないでしょ?」と思うほど。少なくとも私にとってはこの補助機能は価格上昇要因でしかないので是非外した廉価版を販売して欲しい。跨がってみるとF6Bに比べて足つきも良好。新型のSC79はシート加工して足つき性を向上させた私のF6Bよりさらに足がつきます。

乗った感じも軽~い。383㎏の車重をまったく感じさせない。そんでもってフロントブレーキは6ポッドキャリバーという贅沢さ。純正で6ポッドというだけでもう高性能感が滲み出てまいります。全然攻め込んでないけど、攻め込んだときの止まる、曲がるはF6B以上だと思うし、この手のバイクには十分すぎるシャーシとブレーキだと思います。

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(試乗車の新型GL、SC79。F6Bに比べても凄くコンパクトに見えます。お隣はついでに試乗させてもらった1300のスーパーボルドール。コイツがまた良かった・・)

一方で重量車らしい落ち着きや手応えはあんまり感じない。二輪にとって重量というのは運動性を阻害するデメリットでしかないんですが、唯一メリットがあるとすれば重量があるとゆったりとした高級感が演出しやすいってこと。でも新型はこの重量車ならではのゆったりまったりをあまり感じない。ホントこれ383㎏もあんの?っていう乗り味です。

F6Bも運動性はかなり高いレベルにありますが、バイクとしてはしっかり重さを感じるんですよ。「えっ?クソ重いこのバイクが何でこんなに自由自在に寝かせられるの?」という感覚なわけです。これに対し新型SC79はそもそも「これ383㎏もないでしょ?」という感覚。ここが根本的に違う。これはバイクの車体構造そのものが適正化されてより動体としてのバランスがとれ、さらに低重心になっているということなんでしょうが、「多分好みは分かれるだろうなー」と思います。

「重いものが自在に動く」という方向性をとるか、「そもそも重量を感じさせない」という方向性をとるか、これは乗り手の好みでしょう。しかし、ベテランになって重いバイクを買う人は「これまで散々軽いバイクに乗ってきて、逆にずっしりとした重さからくる独特な乗り味を好んでる」ってところもあると思う。そういう意味では新型のこの乗り味は「取っつきやすいけど、重量級のバイクに乗っている感覚が薄い」という物足りなさも感じるわけです。

ただし、重量級バイクの機動性を上げていくには、やっぱりどっちかの方向性をとるしかない。ゴールドウィングは新生にあたり、「そもそも重さを感じさせない」という方向に舵を切った。それを受け入れるかどうかは乗り手の嗜好次第なので置いておくとして、ホンダが選択した方向性を否定するべきではないと思います。

ヒエラルキーの頂点にふさわしい高級感や重量感、濃い乗り味をひたすら打ち出してくるけど、やっぱ乗るには体力が必要ってのがハーレーだとすれば、ホンダはとにかくバイクとしての敷居の低さ、取っつきやすさを追求する方向に舵を切ったのだと思います。

今の路線なら間違いなくゴールドウィングの間口は広がる。重いバイクにはそれなりの乗り方があるけど、SC79はそんなものはいらない。200㎏前半のリッターバイクを乗っていた方なら、何の怖さもなくすんなりと受け入れられるはずです。おそらく新型が目指したものは、「大型免許をいきなり取得した初心者ライダーにも問題なく乗れるような大型ツアラー」なんでしょう。それは今のところ成功している。

昔は中型免許を取得した後、400ccクラスで修行を積み、それから限定解除という1%の理不尽な難関を突破して大型バイクへ・・という倒れ込みでしたが、今は初心者がいきなり大型バイクで路上に出ることも可能です。加えて、高齢になってからリターンしたシニアライダーは、「ステップアップで技術を磨いて超重量級ツアラーへ」などという壮大な寄り道をしている時間などない。

資金は潤沢でも、技術を磨くには時間がかかる。しかしバリバリ働くシニアの顧客は、毎日バイクに乗れるような時間もないし、そんな悠長なことを望んでない。そのため、技術の敷居を低くし、「大型ツアラーに乗りたい」という層を運転技術に関係なく取り込もうとしてる。より多くの顧客に訴求するために「必要なのは技術ではなく資金だけ。」という方向にもっていきたいんだろうな・・と考えるわけです。そう定義するとゴールドウィングのモデルチェンジについて全ての辻褄があってくる。

クラッチ操作に不慣れで大型バイクのトルク管理に気後れする初心者でもDCTなら問題ない。取り回しだって、車格考えれば異様に軽いですが、それでも不安を感じるライダーのためにウォーキングモードで手厚くサポート。コンパクトにして大きさを抑えることで、威圧感と異形感と変態感を減らしスタイリッシュに。大型バイクで無理はできないのはわかっているけど、まだまだスピードにも後ろ指引かれるという欲張りライダーにスポーツモードで対応し、雨の日にリアが滑っちゃうと怖いのよ、という人もレインモードで一安心と、もはや至れり尽くせりです。

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(こちら正面。凄い小顔で細身。ミドルツアラーといっても通用しそう。これなら都内のすり抜けも楽勝か??それにしてもエンジンの張り出しの強烈さよ。外付けのミサイルポッドか?と突っ込みを入れたくなる。)

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(こちら、私のガレージに収まるF6B。何という大顔面と車体の太さ。デカいです。こうして比べるとSC79がいかにコンパクトが良くわかる。ただF6Bはこの巨大カウルのおかげで頭から足先までを寒風から完全に遮断する圧倒的な防風性能があることを忘れてはいけない。)

でも、こういう機能は脳筋パワーでトラコン無しという旧時代のマッスルバイクを股下に納めてきたライダーには特段必要がない。ベテランライダーは、「自分がバイクに何を求めるか?」がはっきりしているし、そのために失うものがあっても、それはそれで別に頓着しない。「何かを求めれば何かを失う」という二輪車・鉄の掟が染みついているからです。

だからこそ、多くのものを望まないかわりに、求めるものに妥協はしない。私はF6Bにバイクにはない快適性(防風性)と6気筒ならではの独特の風合いや手応えを求めていますが、それにF6Bは常に十分答えてくれる。その代わりに車両重量と車体の巨大さを黙って受け入れることにしてる。一方新型のSC79は旧型が持っていたものを少しずつ削ることにより、スタイリッシュさとイージーさと取っつきやすさを指向したような気がしてます。

しかし、私にとっては新型が多くの新機能を搭載して得たものより、新型から少しずつ削られたものの方が重要な価値であったように思える。私は削られた部分を求めてゴールドウィングを選択していたのだから当然です。

ウォーキングモードも、DCTも、ダブルウィッシュボーンサスも、面白いけど、それがなかったらダメなのか?というとそうじゃない。でも、防風性能や、トランク容量や、他のバイクでは得られない重量級の独特の手応えはゴールドウィングでしか得られなかったもので、それが減じてしまえば自分にとっては進化を肯定できなくなる。

どんなに豪華で、盛り付けが美しく、店舗が綺麗で、給仕の態度が良く、コストがかかった高級料理でも、出てきた皿に自分の好物が盛られていないんじゃしょうがないってことなんですね。それなら、好物てんこ盛りの場末の定食屋の方が良いってことになりかねないんです。

そのような私の感覚とは別に、多くの人達は新型のイージーさからくる安心感と、ハイテクを駆使した親切さ、どこかクリーンな新しさに魅力を感じるんだろうと思います。私はそれはとても正しいことだと思う。価値観は人それぞれで、どれが正しいなんてことはない。ハーレーのブログでもよく言っていますが、常に物事を斜めに見ている私の嗜好がズレてるのは、自分でも良く自覚してますから。

とにかく383㎏もある大型ツアラーが初心者にでもイージーに操れるというのは凄いことです。それはこれまで決してイージーではなかった多くの部分を機械が補填してくれているからですが、残念ながらまだまだ熟練した人間の操作にはかなわないし、それなりの反作用も存在する。すでに重量級バイクを自由自在に操れるライダーには機械のサポートはそれほどの価値がないどころか、邪魔ですらある。結局のところ、ハイテクを駆使したイージーライドと引き替えに、失われたものをどうとらえるかの問題なのでしょう。

このように得たものより失われたものに目が行くのは、時代遅れのジジイ特有の発想。年取るとシンプルなものが好きになる。複雑なものは面倒くさいからです。「これ押したことないねぇ・・」っていうボタンはF6Bにも山ほどあるわけですが、新型はさらに押さないボタンが増えてるような気がしてる。

未来に向かって投入された「最新鋭ハイテク便利装備満載超重量介護二輪車」のまるで車格を無視したような全自動イージーライドを堪能し、改めて自分は「極めて情緒的でアナログで旧世代の人間なのだ・・」と再確認した試乗体験でありました。

なお、今回は新型SC79の全体的な印象をブログにさせていただきましたが、個別具体的な搭載機能の感想についてはまた別ブログで書きたいと思います。