今年もワンフェスが終了しましたが、この時期は私のブログのアクセス数が少しだけ増えます。何でかな?と見てみるとアクセスされてるのは主にワンフェスの転売問題なんですよ。皆さんガレージキットの転売にはいろいろと思うところがあるようですね。

関連ブログはこちら。
「ワンフェス転売屋問題に関する一考察 その3」
「転売屋対策の実効性と正当性(ワンフェス転売屋問題に関する一考察 その4)

まず最初に申し上げたいことは、「この世には絶対的に正しい考え方などないし、私は自分の意見を他人に押しつけるつもりは毛頭ない。」ということです。このガレージキット転売問題は私の生活に影響があるような深刻な問題でもなく、他人と議論し、争うような必要性もまったく感じていません。

ガレキの転売問題は長年この業界に横たわっているものですので、いろんな方がいろんな立場で意見を述べるのは当然のこと。「私はこう思うし、あなたとは見解も違うけど、あなたの意見も最大限尊重します」というのがこの問題に向き合う私のスタンスです。

ちなみに2年前は「なぜ転売行為はなくならないのか」を分析し、その理由について書いたわけですが、今回は転売業者の商品をオークションで落札している人達の事情から転売問題を考えていこうと思ってます。

転売業者をこの世からなくせなくても、我々がオークションを利用する必要がなくなればこの問題はやがて収束するはずなんですね。しかし、それは無理な話。ガレキモデラーをやっててガレージキットの入手にオークション利用してない人なんて「ほぼ皆無」といっていいのではないでしょうか?「俺は当日会場でゲットできたものしか作ってねぇ!!」って人の方が珍しいと私は分析してます。

なぜなら「来場者に対してのキットの供給数の少なさ」「1日しかない購入機会」「日本で1カ所の販売会場」などなど、販売上の不均衡が甚だしいからです。

転売業者が最も非難されるケースは「気合いを入れて並んだのに転売屋に商品をガメられてしまった」ときとか「僅か2~3個の販売数のガレキがすべてオクに流れた。」時などでしょう。確かにこれは「究極に腹立つ事案」だと推測されますが、ではどれほどの実害があったのでしょう。

今回高額落札になっている「忠犬待ったなし」も1000枚の整理券を発行し、30個のガレキを奪い合ったらしいですが、この場合の当選率は3パーセント程度。もし、そのうちの5個を転売業者にガメられたとしたら、当選率は2.5パーセントになります。確かに当選率の低下は腹だたしいですが、全体としてみれば、0.5パーセントしか変わらない。「こいつらがいなければ俺が絶対買えていたのに!!」と確信できるほどの確率上昇はないんです。

購入できなかった人の怒りは良くわかりますが、その程度の数は全体としてみれば焼け石に水でしかない。つまりこの問題の本質は「僅か30個のガレキに1000名以上の購入者が殺到している異常な構図」が生まれていることなんです。

太古の昔からこの構図は全然変わらない。この歪みきった状況にあきらめを感じつつ、数個のガレキの行く先に怒りをぶつけるのに疲れ、現状を受け入れてしまった・・というのが今の私です。

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(なお、今回の「忠犬待ったなし」はオークションに10個の出品がありました。抽選券方式で早い者勝ちではありませんので、抽選券を受け取った人の3分の1が転売業者ないし転売意志のある人でないとつじつまが合いません。つまり結果を見る限り配った整理券1000枚のうち333枚分がバイヤーに渡ったということになる。ここまでの数の暴力で組織的に商品を狙われたら、私のような一個人は非難するより笑うしかない。なお、画像はネットからの拾いものですが、素晴らしい出来です。

ワンフェスは1日勝負ですから、ここで負けたら正式ルートでのリベンジの機会はない。私なんかは「わははは・・こんなヤバい確率はないわー。買えりゃラッキーなんてどころじゃないわー。」と割と冷めてしまってますが、そんなふざけた確率の下でも公正公平なルールを叫んで熱く戦い抜く猛者もいる。これが転売業者に対する怒りとなり、ひいては落札者に対する非難となってあふれ出すのでありましょう。

でもね、長年こんな販売していたら、遠方から会場へ行く人なんて当然いなくなります。3パーセントのうち3分の1は転売業者に牛耳られていて、残り3分の2を取り合うなんて悲しみしかない。高い旅費払って行ったって、ほとんど買えないんですから。旅費をドブに捨ててるようなモノです。で、賢い消費者は旅費を温存して、その分をオークションの落札資金に回し、確実に商品をゲットする方向に舵を切るということになる。

私が推測するに、オークションに参加している人達は大別すると2タイプいると思います。一つは何らかの理由により当日会場に行けず、オークションでなんとか手に入れたいというガレキモデラー。もう一つは当日会場に足を運びつつも一敗地にまみれ、オクで最後の勝負を余儀なくされるガレキモデラーです。私は場合によって前者にも後者にもなってます。

過去のネットでの議論みていると転売否定派はディーラーや当日の入場者であり、転売肯定派は遠隔地にいるガレキモデラーという構図になることが多いようです。ガチで議論すると正規のマーケットで購入していない転売購入者側は分が悪いのは当たり前。でも昔からガレキ市場はそんな正論ではどうにもならないくらい歪みきってるんです。

イベントはほとんど大都市で行われますので、地方都市のモデラーはガレージキットの入手手段において当初から相当大きなハンデを背負ってます。一日限りの開催ですのでサービス業などで休みが取れず会場に行けない人も勝負すらできない。この理不尽に対して一切の救済手段がないので、購入機会の均等など夢のまた夢。

都市部の人々は「そりゃ甘えでしょ。言い訳でしょ。開催地に来るべきでしょ?」と思うかもしれませんが、世の中の社会人はそんな甘い環境にない。そう主張する人は、運営が「いやぁ来年からワンフェスは佐渡島でやることになりましたぁ!」と言い出したらどうでしょう?

「アホかぁ!!!何でそんな遠いところまでいかなならんねん!!島流しかっ!!そこまでの旅費でガレキが4つは買えるやないかっ!!行くかボケェ!!!」と多くの人たちが激怒するはずです。でも、佐渡島に住んでいるモデラーからすれば、その怒りがそのまま今の状況です。

余談ですが、都市部の人って、田舎の人が都市部に来るのは当たり前だって思ってるふしがある。東京の人は会議でも「こっちおいでよ」と簡単に言うくせに、こっちが「たまには気分を変えて石川県でやりましょうよ」というと「えっ??石川?・・東京から何時間?え?・・えっ・・遠すぎ・・」となる訳です。「おいおい!俺は毎回その遠い距離を行ったり来たりしてるんだよ!!」とこめかみに青筋を立てながら引きつった半笑いになるわけですが、この例のように都会の人はどこかに「田舎に住む者が都会に出て行くのが当たり前、それが自然。」という思い込みがあり、こういうデリカシーのない発言が出てきちゃうことがある。でもフラットな議論をするのなら、自分の意見のどこかにそういう驕りがないか検証していただきたいのです。

余談が長くなりましたので、とりあえずまとめると、

当日の会場内の人々からすれば
「製作意欲もないのに商品を自らの利益のために強奪する転売業者は悪そのもの。」

入手機会の不平等にあえぐガレキモデラーや当日の販売競争の敗者にとっては
「転売業者はどうしようもない状況の中、敗者復活のワンチャンスを与えてくれる救済者」ということになります。

転売が購入希望者のメリットとなる場合があるため、転売業者の存在を否定できない構図になってるわけです。

ディーラーやイベント開催者は転売を非難する前にこういう根本的な問題を解決する必要があると思いますが、特段の策もなく、問題解決は永遠にないでしょう。しかし、その責任をオークションで落札しているガレキモデラーに転嫁するのは筋違いです。

私が声を大にして言いたいのは、現在の転売屋問題はディーラーからガレキモデラーの手に届くまでの過程で起こっている現象に過ぎず、「どんな経路をたどったとしてもディーラーの販売した商品はいつかはガレキモデラーに渡る」という結末は変わらないということ。

市場の歪みは多々あれど、それを全部ひっかぶってその理不尽に耐えているのはガレキモデラー達です。彼らがいなければ、マーケット自体が消滅する。

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(私のブログはメチャクチャ長く、文章もくどいので、このように思われている方も多いのではないでしょうか?そんなツッコミに関しては、このイラストの通り、大恐縮であり、渾身の謝罪を申し上げるものであります。)

模型販売も下火になる昨今、ガレキモデラーはさらに数少ないマイノリティです。流通は昔から機会不均等かつ理不尽の極みで我々に負担をかけ続けてきた。そんな状況下、皆が血を流しながら、時間をこじ開け、距離を乗り越え、金を積み上げ、各自の方法でガレージキットを手に入れ、製作し、10年以上も文化として支えてきたのです。劣悪な環境の中で、このマーケットが続いているのは、その悲惨な状況を呪いもせず、大損しても耐え続けるガレキモデラーの芯棒強さ、いやもとい辛抱強さ故でしょう。

ですから、当日会場に行って購入できなかった方と、諸般の事情でオークションでしか購入できない人たち双方がののしり合う構図はあまりにも「不毛に過ぎる」と私は思っています。私から見れば被害者同士が理不尽さに耐えかねて、お互いを殴り合ってるイメージなのです。

消費は常に神の見えざる手に導かれる。長年の間に定着した今の流通のあり方は神の見えざる手によるものです。確かに転売禁止のルールは遵守されていない。しかし「法を遵守しこの世は法のとおりに動くべきだ」と現状に法律を無理矢理当てはめようとしても決してうまくいかない。

いかに法が正しくても、法を守ることによって本来のあり方、あるべき姿が大きく歪むのであれば、その法は機能せず、必ず修正機能が働きます。市場は法の下に正しくあるのではなく、消費者に対して正しくあるべきなのです。哲学の世界でも「長年定着したあり方は、それ自体に正当性がある。」という見解がある。

エンドユーザーに対して不平等な販売方法にフタをして転売禁止の規制をかけても、強制力など生まれるわけがない。単一会場、一日開催という販売方法の歪みの中での転売禁止の説得力のなさを、転売業者に見透かされているんです。

最後になりますが、私は転売業者さんから購入することもありますので、転売業者を断罪する権利はありませんし、商売における価値観は人それぞれだと思います。ただ個人的には、市場の歪みやガレキモデラーの弱みにつけ込んで利益を上げている転売業者を肯定してはいません。胸を張って「転売業は正義だ!」と主張する転売業者には「それは違うでしょ。」と言いたい。

どう理由をつけようが、転売を非難する人が一定数いる以上、転売は皆を幸せにする商売ではないことははっきりしてます。私自身、商売は「売って良し、買って良し、世間に良し」だと考えていますが、転売はそのどれにも当てはまりません。「売り手は怒る」「買い手の一部は激怒し、一部はやむなし」「世間的には禁止行為」と、みるからに正当性がありません。

でもたとえ正当性がなくても、そこに利益があり、かつ必要とされるものがこの世から消えることは決してありません。歴史上も政府が流通を過度に統制したときは必ず闇市ができています。ガレージキットも現状の販売方法を続ける限り、オークションという運営側にとっての闇市ができるのはやむを得ない。そしてそれが、歪んだ市場におけるこの世の摂理というものだと私は理解しています。