皆さんこんにちは。水着フラン制作記その2です。

これが実質的に今年初めてのガレージキットブログになります。なんせ、前回はほとんどソシャゲのガチャのことを話していましたので。

今回はガレージキットでお決まりのパーツ洗浄について書いていきます。正直これまで19体のガレージキットを紹介しており、その度に毎度毎度パーツ洗浄のことを書いていますが、パーツ洗浄なんて基本的にいつも同じ作業。どう考えても新ネタなんかない。

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(水着フランのガレージキット。忘れた頃に製作記が少しずつアップされていきます。)

だがしかし、このマンネリを乗り越えてブログを書いていくのが、平凡な生き様のモブに求められている必須スキルでございましょう・・・。

多くの方がご存じの通り、購入したてのキャストモデルの表面には型抜きを容易にするための離型剤がこれでもかと塗布されており「海辺でサンオイルにまみれている美女」のような状態であります。この離型剤を落とさない限り塗料はおろか、マスキングテープですらくっつきません。ハゲて煮卵のようになったオヤジの地肌のように油分でツルッツルなんですよね。

しかし、この離型剤って奴がなかなか落ちないので、モデラーは皆洗浄方法に苦悩する。ネットを見ても人それぞれ独自のやり方でこれといった決め手はないように思います。

私の場合は、この離型剤はがしをある時期から「ポリデントの毒沼への漬け込み」で行ってますので、とりあえずその方法の説明から。

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(これがポリデントの毒沼。離型剤を落とすだけでなく、クールミントの清々しい香りがキャストに移るのが素晴らしい。匂いがいいとイメージ2割増しなのはリアルの女子と変わらない。)

まずバイクのオイル受けに使う廃油ケースを用意し、熱湯をたっぷりと注ぎ、ドボドボとキャストパーツを放り込む。そこに爺の洗面台の棚から大量にくすねてきた入れ歯洗浄剤ポリデントを惜しみなく機雷のようにこれでもかと投下していきます。

明日には我が家の爺がポリデントの不可解な消滅により、認知症への疑念を深め「わしもボケたかのぅ・・」などと言い出すかもしれませんが、知ったことではない。入れ歯なんて一日洗わなくても多少異臭がするくらいですが、離型剤は徹底的に落とさないと塗料が剥がれて大惨事となるため、無慈悲なポリデントの略奪に何のためらいもありません。そう我が正義の名のもとに!!我らビックファイアのために!!!

約半日から1日この毒沼につけ込んだら、綺麗な廃油トレイをもう一つ用意します。そこに再び大量のお湯を張り、この毒沼から取り出したパーツをクレンザー付きの歯ブラシで軽くシゴいたあと、お湯の中にポチャリと落とし、よくすすいでからタオルの上で水気を切っていきます。

この作業はポリデントで落としきれない離型剤があったときのための保険的作業ですが、やっておくとそれなりに安心感があるのです。

現状では、このようなやり方で離型剤処理をしていますが、実はこれまでのガレキ製作の歴史の中で、ワタクシは幾度となく怪しい実験を繰り返し、苦闘してきました。今回は実に馬鹿馬鹿しい、私と離型剤の戦いの歴史を少しお話ししましょう。


試行その1 造形村のキャストクリンで洗浄してみる。

→「見せてもらおうか!ボークスの専用品の性能とやらをっ!!」

などと気合いを入れて購入したのは、ガレージキット用の離型剤はがし、造形村のキャストクリンです。しかし、吹きつけでじゃんすかと揮発していくため高額で大きいパーツがゴロゴロある大型モデルではスプレー1缶があっという間になくなってしまう。溶剤が飛散し、かなり臭うので、お茶の間での作業も到底無理。

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(我が家にある造形村キャストクリン。これは旧モデル。ある時期から全然使ってないので、まだ3缶残ってる。缶に書かれた「SDの油を取るにはこれっ」という親しみやすいキャッチコピーと目つきのヤバいドール達の写真がミスマッチで実に怖い。なぜ3体も並べたし・・。全体的な色使いもなんとも地味で呪いのアイテム風というか、買っても幸せになれない感じが猛烈に漂ってる。)

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(魔ドールを用いた説明書き。このドールの生気のなさは異常。③の「風」も実に事務的でジワジワくる。そもそも模型部屋にどうやって風をおこせと?購入意欲がここでも削がれていく・・・。)

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(ボークスのホームページから画像を転載。現在のキャストクリン。随分と親しみやすい絵柄になりました。独特の狂気を秘めていた従前のデザインを大反省したのではないでしょうか。)

あっという間になくなる溶剤が約1000円とコスパもいいとは言えないし、なくなると通販で買うことになるので送料もかかる。すぐ揮発する感じとか使用感はバイクの整備時に使ってるパーツクリーナーに良く似てて「価格2分の1で4倍以上の量があるCREのパーツクリーナーでもいいんじゃね?」と正直感じてしまった次第。でも一度は専用品を試してみたいんですよねー。


試行その2 バイク用のパーツクリーナーで洗浄してみる。

→「見せてもらおうか!工業用脱脂剤の性能とやらをっ!!」


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さっきのキャストクリンを圧倒的に廉価なパーツクリーナーに置き換えただけ。パーツクリーナーはバイクのエンジンオイルも綺麗に分解洗浄しますので、離型剤に対しても相当な効果が見込めると値踏みしての採用。キャブクリーナーならもっと強烈に落ちることでしょうが、キャストを冒しそうで試せない。これも吹きつけで溶剤をぶっかけるので自宅の茶の間では作業不能ですし、キャストクリン同様なんとなくしっくりは来なかったですね。私は吹きつけ型の洗浄剤はどうにも苦手なようです。


試行その3 ホワイトガソリンで洗浄してみる

→「見せてもらおうか!太古より伝わるガチの工業用洗浄液の性能とやらをっ!!」

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(工業用のホワイトガソリン。18リットル缶。一般人は購入不能。ガソリンなのでとにかく臭い。そして燃える。なお、キャストは冒されることなく無事洗浄できました。)

これは過去に試した中で最もヤバい洗浄法。この際ホワイトガソリンつかっちまえば強烈に落ちるんじゃね?という安易な気持ちが悪夢を呼んだ一例。ホワイトガソリンは工業用パーツの洗浄に使用する危険物。脱脂力も半端ないですが、読んで字のごとくガソリンのように燃える。火気の近くで使用するとキャストはおろかモデラーや模型部屋ごと炎上する可能性もあり、極めて危険であります。お子様は決して真似をしてはいけない。自宅に火災保険をかけてない人にも決してお勧めできない。私の経験からいうと危険になればなるほど洗浄力は保証されるはずなのですが、このホワイトガソリンには大問題が一つある。

フィギュアって最終的には部屋に飾るものなので、臭みというのは致命的なんです。それをいやというほど思い知ったのがこのホワイトガソリン。とにかく臭いが取れなくて苦労しました。それ以降、できるだけいい匂いになる洗浄法はないものか・・と考えるようになってます。これは離型剤が落ちる落ちない以前に臭いでボツ。二度とやりたくない。


試行その4 中性洗剤でシゴいてみる。

→「見せてもらおうか!食器の油汚れを綺麗に落とすキュキュット・クリア除菌の性能とやらを!!」

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(キュキュッと除菌の中性洗剤。これにこだわりがあるわけではなく、たまたま妻が買って置いてあったので。)

ご家庭に必ずある中性洗剤。一般的なモデラーがガレキに初挑戦する場合、まず想定できる一般的なやり方でしょう。ただ、落ちるには落ちてるんでしょうが、おそらく完璧ではない。過去マスキングテープを剥がしたときに塗料も一緒に持って行かれる皮剥の刑に処せられたことがあり、中性洗剤と歯ブラシだけでは厳しい・・という印象です。これまであまりにハードな離型剤処理を試してきたため、「ご家庭の食器洗いの中性洗剤ごときで、離型剤がはがれるなどという最終結論を認めるわけにはいかぬ・・。」という思いも強い。そもそも中性洗剤なんかで離型剤が落ちるのならわたしゃ今までどんだけ無駄なことしてたの?ということになってしまうので、気持ち的にもこれを落としどころにするのは困難です。


試行その5 パーツを煮てみる。

→「釜茹でじゃ!!拷問、拷問、また拷問じゃ!!」

釜茹での刑は昔から伝えられている伝統的な離型剤処理法なんですが、私は「離型剤落とし」「キャストを湯で煮る作業」って基本別に考えているんです。熱湯釜茹ではしょっちゅう使いますが、私の行う釜茹ではパーツの歪み取りや隙間あわせをするためであって、離型剤を落とすためではないんです。

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(煮沸専用の鍋。たっぷり湯を入って煮ていきます。私は離型剤を落とすためではなく、主にパーツの歪みの補正に使用しています。)

自分の感覚では余り長時間煮ちゃうと小さいパーツは芯がなくなって基本クニャクニャになっちゃいます。昔のガレージキットは大きなパーツで構成されていましたが、今のガレージキットのパーツは非常に小さくデリケートになってますので、長時間熱湯に浸けておくのはちょっと怖いですね。

このようにパーツ洗浄については迷走に迷走を重ねてきていますが「なんでここまで試行錯誤をしているの?バカなの?」とおっしゃる方もいらっしゃるはず。しかし、キャストモデルの製作において、離型剤はがしはイロハのイです。

とにかく離型剤のやっかいなところは「透明なところ」なんです。結局どんなやり方しても見た目はほとんど変わらない。最終的には油分が残ってるか触診して判断するんですが、触診したってすべての離型剤が落ちたかなんてわかんないし、おさわりしている絵ヅラも最悪。

いくらガレキ作りに必要な聖なる作業といえども美少女フィギュアのパーツをなで回している怪しいオヤジこの世では確実に変態にカテゴライズされる至高の存在。

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(変態認定では有名な一枚。ここまで鮮やかに変態指定されると逆に清々しさすら覚える。)


「うおぉおおおぉおお!!見苦しいわぁ!この邪悪がぁああぁあ!!光り射すこの世に!汝ら暗黒!!住まう場所なしぃいいいい!!!」
と近接昇華呪法で浄化されても文句は言えない。

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(私のブログにタマに出てくるデモンベインパロ。10年以上経っても私はアル・アジフの呪縛から逃られないのか。)

リアルにおいても妻のジト目はさらに細く鋭利になり、息子からも「2メートル以上は近づくんじゃない!」と腰を引かれつつ接近禁止命令を受ける。できるなら私自身の社会的地位を確実に崩壊させるこの触診作業はできるだけ避けていきたい。

以上の総合的な事情を考慮し、私の出した結論は「社会的地位を失わず、離型剤を完璧に落とせる!と保証ができるような作業方法はなかなかないのではないか。」ということです。

そのような結論に達してしまった以上、その後は最も手間がかからず、最も効果が高く、最もパーツがいい香りになる三方良しの方法を探ることになります。

それが入れ歯洗浄剤「ポリデントクールミントの香り漬け込み」だったというわけです。これめっちゃ楽っすよ~。

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(入れ歯洗浄剤、ポリデント。タフデントでも差し支えない。簡単洗浄、良き香り、低価格。と三拍子そろった名品といえるでしょう。)

「なんだこれ。戦略的撤退、妥協に次ぐ妥協ではないか?易きに流れおって・・・」

と思われるかもしれませんが、私の模型作りなぞ、所詮「どこに妥協点を置くか?」という作業の繰り返しであり、それこそが人生や物作りの永遠のテーマであるとすら思っているわけです。