今回は、水着フラン製作記の第2回目です。昨年は珍しく非常に暗いブログで締めてしまったので、今後は明るいブログにしていきたいと思います。
 
さてこれからお届けしていく製作記は、水着フランです。2018年のワンフェス冬に初出のガレージキットで、製作は「アリヌとSaiの工作部屋」さん。ちなみに昨年私が購入したガレージキットはこの一点のみ。ツイッターで出品作品を事前チェックしてワンフェスでもこれ一点狙いです。

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(完成した水着フラン。私のようなアマチュアでは、フィニッシャーさんのような完成度はとても望めませんので、完成度は低いながらもなんとか見られるものを目指すことになります。)

モチーフとなっている水着フランというキャラは、ソーシャルネットワークゲーム「Fate Grand Order」(以下「FGO」)の中のキャラクターです。正式名称はフランケンシュタインの怪物、本来は名前はありませんが、ユーザーからはフランちゃんと呼ばれています。
 
私が死体をつなぎ合わせて人造人間を作ったら「頭は知能犯」、「腕はわいせつ犯」、「股間は強姦魔」、「脚部は逃走犯」というとんでもない物を作りそうですが、小説の原作では人の手でアダムとイブを作ろうとしたんですね。
 
出典のFGOについても紹介しておきますと、このゲームなんと年間売り上げ900億円弱。これ1作でSONYの株価を500円くらいは押し上げているんじゃねーか?と言われているバケモノなのです。
 
Fateは15年以上前に発売された魔術師同士の聖杯を巡る殺し合い「聖杯戦争」をモチーフにした「18禁の同人ゲーム」でしたが、同人エロゲーから生まれたコンテンツが今やゲーム業界の覇権を握るというアンビリーバブルな下克上が展開されています。
 
このゲームの特徴は、プレイしているユーザー数はそれほどでもないのに売り上げが凶悪であること。ぶっちゃけ脱水槽に放り込まれたようにガチャを回転し続ける「冥府魔道に堕ちた廃課金ユーザー」が多数いる。(ちなみに私のフレンドの中にも、「ぎゃあぁあぁああ・・こ、これは、、おそらく課金総額500万円以上いってらっしゃいますよね!!」という石油王が1名、「ひいいぃ・・ど、どう考えても200万円は超えてらっしゃる・・。」という富豪様が3名ほどいらっしゃいます。)
 
人気の高いレアキャラは有料ガチャを回して当てるわけですが、高レアキャラの排出率を下げれば下げるほど胴元である運営は儲かる。FGOの最高レアキャラ排出率は1%。「オマエらどうせ出るまで回すんでしょ?プッ、バカ・・」といわんばかりの搾取ぶり。「魅力的な強キャラがそんな簡単に引けるわけないという聖杯戦争の悲哀を皆さんもリアルに感じてくだサーイ!!」というのがガチャコンセプトなので、一切の手心はなく、北朝鮮共産党並みの無慈悲さです。


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(新年FGOガチャ絶賛開催中。よい子のお年玉を巻き上げにきたのか?そこかしこにガチャを回させる演出がこれでもかと仕込まれ、セルラン1位を獲得しています。)

一方、この無慈悲なガチャと対照的に、ゲーム自体は無料で手に入るキャラクターがかなり使える。(無料キャラの方が役割がしっかりしていて、高レアを食う人気があります。)他ユーザーとの対戦や競争もないので、ゲームの進行で高レアが必要かというと全然そんなことない。無料石で引ける程度で十分な戦力が編成できます。
 
では必要がないのになぜガチャがまわるのか?それは「キャラの魅力」でしょう。ユーザーは私を含めタイプムーンが10年以上育んできた筋金入りのファンですから、人気キャラをあてがえば強くても弱くてもガチャはガンガンまわるのです。
 
ちなみに私はソシャゲのガチャについては特段の偏見はありません。いわゆる娯楽の一種だと考えてます。ガチャは金で特定の物品を買うのではなく、ガチャを回せる権利を買う。本質はアタリが出るまで1回いくらで回すルーレット。つまりギャンブルです。
 
これをもってソシャゲを「悪」と断じる方もいらっしゃいますが、金を払う人間がいないとゲームを作っている開発側はやっていけないですから、ゲームを楽しむにあたり課金は当然の対価であるともいえます。運営は無課金ユーザーにもゲームを配布してますので、課金意欲のある方から無課金の人の分まで回収しないとやっていけない。課金ユーザーが1割ならば、その人に無課金9人分の負担をしてもらわなくてはならないのです。
 
かといって「資力のある人は金のない人の10倍ゲーム料金を払って下さいっ!!」なんていったらユーザー間の平等が崩れちゃいますし、消費者庁が青筋立てて乗り込んできますので、不平等感を与えない集金システムとしてギャンブル要素のあるガチャ制度を導入し、「どれだけ課金するか」はユーザーに任せているというわけです。ただ、人間は射幸性の高いものに弱いので、それを低年齢層が楽しむゲームに導入するのはどうなのか?という問題はあるかもしれません。

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(水着フランの最終再臨絵。これが水着と言えるのか・・。ことわっておきますが、脱衣ゲームではありません。)
 
ソシャゲは無課金でゲームを楽しむユーザーを許容している限り、課金ガチャ制度は廃止できないでしょう。まぁ確かにFGOは儲けすぎですが、利益トントンで運営しているゲームもあるわけで、「一部ソシャゲが儲かりすぎてるから課金規制ねというわけにもいかない。規制にあたっては業界の平均、ユーザーの平均をベースにしなくてはならないのです。
 
かくいうFGOも当初はここまでヒットするとは考えず、平均的なユーザー数、課金額で利益率をはじきシステムを作ったはずです。しかし想定以上にユーザー数が増え、課金割合も他のゲームよりずいぶん高くなったので、総体的に莫大な利益が出てしまったという結果論に過ぎない。
 
運営は「ガチャに確立操作はない」と言っていますが、ユーザーには長期的に遊んでもらわなくてはならないので、操作もおそらくあるだろう(極端に不幸なユーザーが出ないよう)と考えています。(確率的には何万円課金しても、レアが出ない不幸なユーザーも数百万人に一人くらいはいる理屈ですが、そこまで不幸なユーザーを作ってはソーシャルゲーム自体が社会悪になってしまう。そして「社会悪」と認定されれば将来はない。)
 
そういうあれやこれやを飲み込んだ上で「ご利用を計画的に」というのは、すべての消費に当てはまる原則だと思います。
 
まーソシャゲはギャンブル要素が強く高額課金者もいる(私を含め)ため、高い目線からソシャゲ全般を批判する人はいます。第三者や専門家が商売人を批判するのはある意味当然であり、健全でもあるわけですが、遊んでいる消費者を批判する権利は誰にもない。消費者は消費するのが本質

自分が稼いだ金を娯楽にどう消費しようが他人に迷惑をかけない限りそれは消費者の自己責任であり、自由です。

自分の射幸心を止められず、後悔する結果になった人はソシャゲを批判する。その残酷さを見た人もそれを後押しする。でもこの問題は大なり小なり社会のシステムの縮図です。システムを悪く言っているだけでは何も解決しないんですね。無課金で遊んでいる人が沢山いる中で、泥沼にはまった原因はなにか?を分析し、それを自分の中に見つけて潰していくしかない。

自分の消費について後悔しないかどうか?自分がどういう人間なのか?の自己分析を自分で行い、己自身が消費のあり方を決めるべきです。

複雑になり、価値観の変化が激しい現代においては共通の常識は生まれにくい。そんな中では「人の考え方や価値観を否定したり、自由を制限することこそ悪」だと私は考えているわけなのです。
 
なんか長々と課金ガチャの余談を書いちゃいましたが、ワンフェスで販売されているガレキは基本的に勢いのある旬のキャラクターをモチーフにしたものが多いのです。そんな中、この水着フランをモチーフとしたキットが相当数出品されていましたので、造型師の間でもフランは人気キャラなんですね。
 
人気の理由は、まずゲーム内での性能がいいし性格付けも濃い。ピンクの髪、ブルーの水着、イエローのパーカー、白い包帯と彩色も華やかで軽やか。背丈を超えようかという電磁剣の造型も特徴的・・といろいろありますが、fate特有の重く暗いバックボーンを感じさせないキャラ設定もウケたものと思われます。
 
それでは、いよいよ「アリヌとSaiの工作部屋」さんのガレキ、水着フランの造形を分析していきましょう。

まずこのキットは空間処理が素晴らしい。フィギュアっていうのは安定感を重視し、フィギュアベースを底辺として、上方に向かって収束する三角形(バイク+美少女系はほとんどそう)の形になることが多いのですが、このキットは通常のフィギュアと異なり、フィギュアを宙に浮かせて、剣先のある左方を頂角とした三角形の空間に造型をまとめてます。つまり、傾いた三角形になってるんです。これが非常に目を引く。この傾斜三角形をベースにした処理が個性となり、かつ見た目の安定感にもつながってます。

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(宙に浮いているから可能な美しいバランスの空間処理。長い剣を上手く使って空間を切り取っています。)
 
また、このフィギュアはその造型の中に3つのテーマが織り込まれています。

①電磁剣は暴力と殺戮という人の悪性の象徴であり、人に作られし原罪のない無垢なフランと、悪と善の対立構造をなしている。

②剣は死の象徴でもあり、男根のメタファーでもある。これを太ももで挟んでいる構図は生命の誕生と死を暗喩し、ほのかなエロティシズムにつながっている。

③ディスプレイベースとなっているのは、ロボットサーヴァントのバベッジで、同じ
人工生命体として有機物と無機物という対比構造もある。
 
この対比のコントラストは特段意識することはなくても、隠し風味として無意識下で作品の魅力になっていると思います。
 
原型はデジタル造型だそうで、大きさは1/7と1/8の中間くらいでしょうか。全体的にマットなパステル調の発色が要求されるので、色を作るのがちょっと面倒そう。ガレージキットとしての難易度は私が作った中で一番難しかった、VispoさんのアスカRを10とすると、6くらい?・・な感じです。
 
今回はパーツ洗浄と仮組まで書く予定だったんですが、長くなっちゃったのでこれはまた次回に・・。