えー今回からしばらくの間、ご紹介していくのは「アリヌとSAIの工作部屋」から「水着フラン」です。結構前にこちらのブログで紹介したとおり、本年度2月の冬のワンフェスで購入したもの。その年に購入したものを、年度内に作るのは案外珍しいです。

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(水着フランのホワイトボディ。原型師さんのツイッターから。見るだけでパーツ同士のかみ合いに前途多難が予想される。)

私がガレージキットを作る順序についての基準ってほとんどない。新しいとか古いとか全く関係なく、作る気分になったものから作っていきます。たとえばバイクに乗ってる女の子のガレキを作るとレジンバイクのあまりの極悪さに「しばらくレジン製バイクは見るのも厭」という状況になりますから、ほとぼりが冷めるまで、それ以外のモデルを作ったりする。

バイク系の積みキットがあったとしても当面お蔵入り。10年以上前のものを、思い出したようにある日突然作ったり、新しいものが長期お蔵入りしたりで、脈絡がありません。それくらいガレージキット作りは私にとって気まぐれで作るのに情熱が必要な作業です。逆に言うと旬のキャラなんて全然考慮してないわけです。

「これあんまり気分じゃないけど、もう購入してかなり経つから作らなきゃなぁ・・」なんて曖昧な気持ちで作ると大体ロクなコトにならない。次に作りたいのはこれっ!という自分の心の声を優先することが大事です。

ちなみに年々購入するガレキは減ってきており、2018年はこの「水着フラン」のみ(まだ来週のトレフェスがあるのでわかりませんが・・)。夏のワンフェスで購入したガレキはなんとゼロ。ワンフェスでガレキを購入しなかったことなんてはじめてかもしれない。

夏のワンフェスの展示品を一通りチェックした後、とっておいた予算で購入したのはこれ。「アルトリア・オルタ&キュイラッセ」ちょうどワンフェスと同じ頃、注文受け付けをしてたんですよね。ガレキではなくてグッドスマイルカンパニーの完成品です。

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(グッスマさんのホームページから転載。私の愛好するfateからセイバーオルタ&キュイラッシェ。この躍動感、黒塗装のキュイラッシェとオルタのバランスの素晴らしさ。その姿はハカイダー2世か?現代版黒騎士か?コレは名作。間違いない。)

なんでこれを選択したか?それは私がガレキに求めているものがそこにあったからです。前回ワンフェスのことを書いたブログで「我々モデラーは与えられたものから作りたいものを作っていくだけ」と書きましたが、長年にわたってガレキを作ってきた私が求めているものが、今年の夏のワンフェスにはなく、塗装済み完成品の世界に存在している。

・・これが今のガレージキット業界の最大の問題点でありましょう。ガレージキットの世界が云々というよりも市販品が技術向上によりガレキを追い詰めているという構図でしょうか・・。

私は別に白いガレキの整形面をなで回し、そのなめらか且つしとやかな感触に浸るというフェチ系変態じゃないので、素晴らしい塗装済み完成品があればあっさりとそっちに転んでしまう。

私のようなヘタレ一般モデラーの目線でいえば、今のガレキには結構な逆風が吹いていると思います。10年以上前のガレキブームの頃はまだクォリティの高い塗装済み完成品はほとんどありませんでした。自分で塗った方が納得いくというレベルの市販品ばかりだった。

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(市販の塗装済完成品は、存在の重さでは一品ものガレキには勝てませんが、造形技術的にはもう並んでいると思います。)

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(これまたグッスマさんのホームページから。造形師は爆殺シューターさんという方らしい。この造形、素晴らしすぎる。ただキャラに忠実に寄せていくと、造形師の名前はそこからは浮かびにくい。)

しかし今や、このオルタ・キュイラッシェのように、高レベルの塗装済み完成品が2万円くらいで購入できてしまう。フィギュアは金になるというのが定着し、着色整形のレベルと塗装レベルが天井知らずに上がってしまったのです。

一方のガレージキットについては進化のしようがない。もともとが手作りで、妥協のないものを提供していたのです。造形師によってはデジタルモデリングを導入し、3Dプリンターなどを駆使することで、造形作業は楽になったかもしれませんが、人の発想をベースにしていることは何ら変わりない。

価格もほとんどが1万円から2万円台あたりに張り付いている。当然ですが、一切無塗装、未組み立て。そんな中、ガレージキットを購入し製作している人々のモチベーションって何から生まれているのだろうか?

まぁ、正直、それはモデラーによって様々でありましょう。私が代表して断言することなど、おこがましくて到底できません。しかし、多くのモデラーが「市販品に決してないもの」をガレージキットに求めていることは間違いないのです。

結局ガレキと市販品の狭間には何があるのか?それは、商業主義に染まらない姿勢と作家の個性、大量生産では困難な造形などではないかと思うのです。

そういえば先月ヤフオクでVispo片桐さんの中期の名作、綾波RQが出品されていましたが、なんと競りに競ったり92,000円越え。ガレージキットって価格的にも、製作の手間的にも廃人の世界なんですね。こんなんもう美術品の価格です。

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(Vispoさんのホームページから転載。綾波レーシングクィーンバージョン。バイクといいフィギュアといい、魅力爆発の造形。オリジナルの痛レーサーにレースクィーン姿の綾波自身が乗っているという、バイク乗りには夢の世界。腰のくびれと鋭い目線に片桐造形だと一発でわかる個性がある。これが10年の時を経てモデラーを惹きつけるんだと思います。ちなみにAmazonでは35万とかで出品されてて笑う。麻薬並みの末端価格か!)

発売から10年以上経ったモデルにこれだけの札が入る。今時、これだけの金を出せば、どんなガレキでも買えるでしょう。しかし、モデラーは心に秘めたモデルを1点買いします。

当時の片桐作品には市販モデルでは到達できないセンスと作家性があったから、時を経ても「これを絶対作っておきたい」というガレキモデラーが出てくるのだと思います。

私はこれからの美少女フィギュア系ガレージキットは「個性があって、無機物と人が複雑に絡み合う系」の路線が強く支持されていくんじゃないかなぁ・・なんて思ってます。複雑であればあるほどモデラーは作りがいを感じるし、見た目のインパクトもデカい。とはいっても、ポージングについては、ありとあらゆるものがほぼ出尽くした感じがあって、人体単独で差別化するのは難しい。

個性を出すには強烈な香気を体つきや表情などから発するくらいしかないですが、作家の個性を出し過ぎるとアクが強くなってキャラから離れるし、エロティックな香気を放つ肉体造形になると非常にハイセンスなアートの域に入ってくる。(2007年から2010年頃までのVispoさんの一連のバイクモチーフは、片桐造形を感じさせつつ、キャラ離れすることもなく、セクシャルな造形とコミカルなデカール、ガチのメカニックで、微エロ、センス、ギャグ、ストイックと全てを織り交ぜた素晴らしい作品群でした。作るの地獄だけど・・)

作り手の個性は、小物やデカールのセンスなどでも表現することができますし、メカなどの金属表現は未だエアブラシ塗装に一日の長がある。完全な金属質感やパーツの重量感を樹脂のPVCで出すことは困難です。真の金属感を出すにはぱりっとしたエッジ処理と、コストのかかった顔料の多重塗膜が必要になるからです。

とにもかくにもガレージキットの美少女フィギュアは造形師とモデラーの共同作業です。「市販モデルとの棲み分け」を余儀なくされたこの時代においては、造形師の方々には「ガレキ市場を支えてるモデラー達が喜ぶものってなんだろう?」という視点も持っていただけたらなぁと思ってます。

と、今回はフィギュア紹介に先駆けて、僭越ながら今年のワンフェスの総括をさせていただきました。次回から、いよいよ水着フランの紹介をしていきます。

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(なんとか完成した水着フラン。ゴールドのこの輝きは市販完成品では出ない。次回以降はこのフィギュアの製作記になります。)