ハーレーのフロントサスセッティング「遙かなるオーリンズへの旅路その4」です。

前回は袋小路に入って「第100回を迎えても終わらないかも・・」と予防線を張りましたが、サスペンションを換装してからもう2ヶ月。サスセッティングは実はほとんど終わっていますっつーか終わってないと超ヤバい。ただ、「もうちょっと良くなるんではないか?」「まだ、いけるのではないか?」とプリロード1/4回転、減衰1ノッチの範囲内で微調整中という状況です。

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(手を入れ続けて9年。来年には通算10周年のアニバーサリーを迎えるダイナ。)

「貴様にそんな僅かな違いが理解できるのか?単なるプラシーボ効果なのではないか??」とのご指摘もあるでしょう。確かに、ギリギリの微調整になると、サスだけじゃなくて、そのときの気温や気候、僅かなタイヤの空気圧の差、自分の気分や体調なんてものも影響してくるような気もしますので、どこまで行っても結論がでないのかもしれない。よって、すべてが無駄という可能性もありますが、やるだけやってみるというガッツも後で後悔しないためには大事です。

まぁ大雑把に調整しているうちは、操縦性の多少のアラは「今のところこんなもんかにゃー。」と許容できるわけですが、調整が詰まってくれば詰まってくるほど些細な部分が問題になる。

「ある程度煮詰まってきたな・・」と感じたら、近場をくるくるとチョイ乗りするレベルから500㎞ほどの距離を走ったり、ダム通りの峠でシゴいたりするようになります。で、そういう段階になると「ちょっとの違和感」「ちょっとの不満」が増幅されていく事態になる。

チョイ乗りでは無視できるほどのステアリング周りの微振動も一日乗っていると「体の芯にくる不都合」になってくるし、峠でアベレージスピードが上がり高負荷状態になると、低負荷ではイマイチ感じなかった倒し込みや接地感、ブレーキ質感の違和感が出てきたりする。そして、そういう違和感が少しでもあると途端に「怖っわ・・」となって再調整。その繰り返しになっていくわけです。ちなみに違和感を感じたらその時点で調整するのが一番手っ取り早いので「14ミリのソケットつけたラチェット」(プリロード用)と、「3ミリの6角レンチ」(伸び圧減衰調整用)はいつもバイクに常備してあります。

バイクって命を乗せて走るわけですから、長く付き合おうとすれば、バイクと乗り手の信頼関係が一番大事になります。そんな中、ある部分でちょっとでも違和感を感じてしまうと、常に不安を抱えながら走ることになり、これは相当なストレスになっちゃう。結婚と同じようなもんで一緒にいてストレスを感じるようだと長くはもたないんです。

まぁ現状のセッティングでそういうストレスは感じないところにまでは来ているのですが、リプレイスサスは非常に緻密に調整できるので、やめられない止まらないという「かっぱえびせん状態」になっていくわけですね。

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(相変わらず下らないイラストで文章ばかりのブログを保たせるという暴挙。セッティングが出ず発狂するオーナーとその犠牲になるバイク達。バイクにまったく罪はない。

当初バイク店からやってきた時点でのサスの状態はプリロードを最も抜いた状態、(一番左まで回した状態。)減衰は圧、伸びとも最弱(限界まで緩めた状態)でした。とりあえず減衰を伸び圧共にセンターにして、プリロードは最も緩めた状態でそのまま乗ってみます。プリロードを抜いてるため、フロントが下がっており、バイクの挙動はフロントが切れ込み気味。乗り味は極めてクリアで曲がりやすいんですが、バンクしたときの挙動は重量級バイクとしてはナーバス過ぎるきらいがあります。あと、車高低いのでサスの中の空気の層が少ないからか、エンジン振動がかなり感じられますので、現実的な乗り味じゃないです。

ハーレーは振動の大きい大排気量Vツインエンジンですからフロントサスの調整いかんでステアリング振動もめちゃくちゃ変わってきます。フロントサスがエンジン振動の緩衝機能も兼ねているんですねぇ。だから、あんまりクリアでダイレクトなサス設定にしてしまうとステアリング振動もそれに比例してクリアでダイレクトになり、チョイ乗りでは「鼓動感が増した!楽しい!」と感じても、ロングツーリングでは、「俺は1日中アスファルトのハツリ工事でもしてたのかしら?」ってほど手がブルブル震える事態になってしまいます。

とりあえずプリロード抜いた状態はわかりましたので、今度はこれ以上かけられない最強のところまでプリロードを締めてみました。フロントの車高が上がり、油面からの空気の層が増えたからかステアリングに伝わるエンジン振動はほとんどなくなって、操縦性もダルで立ちが強く曲がっていかない状態に。逆に言うと直進してるときのバイクの挙動はどっしり安定してますし、ブレーキングもコシがあっていい感じです。ただ、この状態では、昔のブラウン管テレビを見ているような、なんともぼんやりとした乗り味で全く楽しくないし、面白くもない。

次にプリロードをセンターにもってきてみました。ステアリング振動はまだちょっと気になるレベル。200㎞も乗ってるとバイク下りた後も腕に微振動が残ってハツリ工事まではいかないですが、「アル中のオヤジ感」凄い。あと切れ込むというほどではないですが、やはりちょっとオーバーステアな感じがあります。テレビで言うとシャープネスとコントラストがやや強めという感じ。

こういうものは最終的には運動性に振るか、直進性に振るか?の判断になっていくわけですが、300㎏あるハーレーを運動性に振っても限界は明らかですし、重いバイクほどまずはしっかり止まることが大事。そもそも、今回のサス変更はブレーキング時のフロントのノーズダイブを抑えることで、運動性が目的ではありません。振動対策もかねてハーレーに関してはプリロードは締め気味の方が私の目的にはあっていると判断しました。

というわけで走りながら少しずつ締め込んでいき、センターから2回転と2/3くらい締め込んだ設定で落ち着いています。2回転締めでフォーカスがキッチリあって「キマシタワー」的な感じになったのですが、フォーカスが完全にあった状態というのはやっぱりちょっと疲れるんです。クリアな状態より少しぼんやりしていた方が、優しくて疲れを感じないんですね。眼鏡と一緒で多少弱めの方が楽ということで、さらに2/3くらい締めました。

まぁいろいろと文書で書くとアレですが、実際乗ってみればその違いは明らかです。一番緩めた位置と一番締めた位置、そして中間位置の3つを乗り比べてみれば、ほとんどのライダーが自分の好みのプリロード位置はどこら辺かが大体理解できるはずです。後は好みになるように中間位置から右に左に少しずつ回していけばいいのですから、そんなに難しいことではない。ツーリングに出て道の駅ごとに少しずつ調整していけば、その日のうちに「うーむ、ここら辺だな・・」というところにたどり着けるのではないでしょうか。

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(この六角の部分をクルクル回してプリロードを調整します。プリロードは14㎜。減衰は3㎜の6角です。)

もしたどり着けなかったり、とっちらかったりする場合は、それは自分が「求めるもの」がはっきりしていなかったり「感覚にイマイチ自信がない」ということかもしれません。そんなときはとりあえずセンター位置で乗っときゃいいのです。そもそも人様のバイクのセッティング出してるんじゃないのですから別に評論されるわけじゃない。センター位置でしばらく乗ってみて、「やっぱちとナーバスだな」とふと思ったら、左に1回転。「もっとどっしりした感じがいいなぁ」と感じたら右に1回転ばかし回してみればいい。根詰めるのが面倒なら、そんな気楽な感じでも良いサスは十分機能します。

余談ですが、このFKSフロントサスペンションのスプリングはオーリンズらしく乗り手の体重でスプリングレートを変えてくれており、私の体重68㎏を伝えると、それにあわせたスプリングレートをメーカーが選択してくれるようです。注文前にメカさんに「へっちまんさん、固めがいいですよね?」と問われたので、間髪入れず「普通にして下さい。というか逆に柔らかいまである。」と答えました。

「え、へっちまんさんの走り方だと固めがいいんじゃ・・」

「なんで?。前もフォークオイル固いのいやだっていったでしょ。」

「あれぇー??そうですかぁ???」

どうもこのメカさんには私は「飛ばす人」だと思われているようです。ショップツーリングでも全然飛ばしてないのに、そういう風に思われているのはちょっと心外・・。