新型ゴールドウィングについて、感じたままをつらつらと書いていく毒にも薬にもならないブログその3回目です。

今回はステアリング周りについて。なんせわたくし新型に試乗したわけじゃありませんから、図面や透視図、バイクの外観だけで感想書いてます。乗ってみたら「全然言ってることと違うじゃねーか!!」と言われちゃうかもしれないですが、そりゃもうしょうがない。辺境のゴミライダーが提供している無料ブログに多くを望んではなりません。本ブログのご利用に際しましては、「園児を慈しむような優しい目」でご対応頂きますようお願いいたします。

さて、新型の目玉の一つのフロント周りの大変更ですが、そもそもこの手の大型クルーザーはフロント周りにいろんな問題を抱えています。そして今回それに対するホンダの回答が新規採用されたダブルウィッシュボーンサスであるということは間違いないと思います。

ホンダが問題にした部分はおそらく「現行はカウルがデカいし車体も長い、車庫入らねぇし、これじゃ都心でユーザー増えないよ。どうすんのこれ?ねぇ?」ということと「バイク重すぎてテレスコピックサスではもう限界。これまで無理させてごめんね。」の2点だと考えます。イメージ 6
(ダブルウィッシュボーンの骨組み。とにかく剛性感高そう。ボールジョイントを駆使したステアリング機構もラジコンのサーボ機構のようで萌える。操作軸の径を変えれば滑車の理論でステアリング操作は軽くも重くもできる。ハンドル幅が狭いので、操作は400cc並に軽いのかもしれない。)

第1の「カウルがデカい」というのは巨大エンジンを積むメガクルーザーの宿命みたいなもの。「巨大カウルこそがメガクルーザーの心意気!!」という人もいらっしゃるでしょう。しかし、今や時代はエコ。菅原文太のトラック野郎やトランスフォーマーのコンボイ隊長のようなメガマシンの時代ではない。実際トランスフォーマーでもバンブルビーがコンボイ隊長を食っちまう勢いです。加えてフルカバードで車体が長いとスクーターと勘違いされたりする。

F6Bでツーリングしている時、パーキングエリアで観光バスから降りてきたおじいちゃんとこんな会話をしたことがあります。

「おっ!凄くデカいスクーターだねぇ。ワシも昔50ccのスクーター乗っとったんやよぉ。これ何cc?」

「250ccです。」(軽いジョークのつもり)

「ふわぁ、最近の250ccはとんでもなく大きいねぇ!」

(そんなわけないでしょーーーー!!)

このような哀しみを背負わないためにも、バイクらしいスタイリッシュな小顔デザインに移行し、きゅっと引き締めていきましょう。ということなんだと思います。では、なぜ現行はスクーターライクなデザインになっちゃったかというと、理由は簡単「エンジンがデカすぎる」からです。全てはここが元凶。

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(現行ゴールドウィングもおおらかで素敵なデザインですが、ごくたまにメガスクーターと間違われることも。ギア付きバイクとしては異形のスタイリングということでしょう。)

現行のカウルがなぜここまで大きいのかを「雨が降れば桶屋が儲かる」的に説明しますと、

①エンジンデカくて幅が広いんでライダーの足下窮屈ですね→
②ステップはエンジンの後ろにせざるをえんなぁ・・→
③となるとライダーはそのまた後ろになりますねぇ・・→
④これステアリング軸とライダーの距離が相当開いちまうがどうする?→
⑤ポジションの整合性をとるためにハンドルを思いっきり引きましょう→
⑥デカい車体を押さえ込むためハンドル幅もそれなりにとらなきゃならんだろう→
⑦何か耕うん機かトラクターみたいになってきましたね→
⑧耕うん機いうな!→
⑨目一杯プルバックしたせいでステアリングの可動範囲がかなり広くなりますが・→
⑩しょうがないだろ、、ドライビングポジション最優先でいく→
⑪隊長!ステアリングの可動範囲上のかなりの部分が、何も置けないデッドスペースになっちゃいました!→
⑫ぐぐ・っ、それじゃメーターパネルも遠くに配置かっ、苦境っ、圧倒的苦境!→
⑬カウルもえらく遠くなります・・→
⑭隊長!これでは並のカウルでは風が防げないです!!モロ当たりです!!→
⑮フフフ、じゃかましい!カウルをデカくすればいいんじゃ!!ん??バイクがデカくなる?なんぼのもんじゃい!こちとら1800cc6気筒やぞ?かまわん!巨大物理防御壁を最大展開じゃあああああ!!(ブチキレ)←いまココ

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(現行型ゴールドウィングのカウルレス側面図。いかにハンドルが操舵軸からプルバックしてるかがわかりますね。)

自分を守るために盾を持つ場合、盾を体に思いっきり近づければ小型の盾でも相当広い部分を防御できますが、遠くに置けば置くほど大型の盾じゃないと防御できなくなります。風防もそれと同じ。ライダーから遠くなればなるほど風を防ぐために高く広くしなくてはならない。これじゃ風の抵抗も増えるし、車庫には入らないし、巨顔になるし、スクーターライクな外見から抜けられない。

これを個性ととらえるか、欠点ととらえるか?そこら辺は難しいところですが、「優越感を得るにはデカくて目立つのがいい!」という意見はおいといて、バイクという乗り物にとっては小型軽量は大正義。「本来大きなものを小さく軽く作ることこそが技術の証明。」ともいえるわけで、今回ホンダはこれに挑戦してます。

第2の問題は剛性不足。現行はバイクでおなじみのテレスコピックサスです。そうバイクといえばテレスコ。テレスコは単純、簡単、高耐久、高信頼性で操舵感もダイレクト。バイクへのなじみ度、熟成度は比類なく、素晴らしい操舵装置です。しかし、この方式はフロントフォークが操舵、衝撃吸収、タイヤ保持の3つを一手に引き受けているため、高負荷の環境下で全てをベストバランスにするのは非常に難しい。

一つの機構に多くの役割を持たせた場合、ある特定の領域の性能を上げると他の領域が犠牲になったりします。例えばテレスコサスで高負荷に対応しようとすると、フォーク太くしたり、サスを固めなくてはならないんですが、これやっちゃうと低負荷時の軽快感がなくなったり、日常域でのしなやかさや乗り心地が悪化したりで、どうにもうまくいかない。

現行ゴールドウィングのテレスコは実に良い仕事をしてると思いますが、もっと軽いバイクでゴールドウィング以上にしっとりしっかりしたステアリングフィールのバイクもあるわけなので、フラッグシップとしては「もう少しなんとかならんのかいな?」と思うところもあったわけです。

これら2つの問題を解決するため、今回ホンダはフロントに「ダブルウィッシュボーンサスペンション」を搭載してきました。ダブルウィッシュボーンはクルマの世界ではメジャーなサスで、バイクではライバルであるBMWのK1600が「デュオレバー」という名称で採用してます。

クルマでいうと「サスの取り付け部をそのまま操舵軸に使う」のがストラットであり(これはバイクでいうとテレスコ式といってもいい)、そのワンランク上といわれているのがダブルウィッシュボーンですから、新型ゴールドウィングは「テレスコ式で無理があるなら、クルマと同様ダブルウィッシュボーンにしちゃえばいいじゃない!」って結論したってことです。発想は単純で実にわかりやすいですが、うーん、トンデモねぇ。

ひとこと断っておきますが、私はストラットやテレスコがダメといっているわけではありません。個人的には自動小銃のカラシニコフやT34中戦車のように「シンプルで十分以上に機能するものが大好き」です。決められた枠の中での高性能こそ見識がいるし、できたものにも味があると思ってます。バイクではハーレーなんかがこの感じ。何でもかんでも複雑にすればいいってもんじゃない。

今回のダブルウィッシュボーンはテレスコをずっと煮詰めてきたゴールドウィングが、ダブルウィッシュボーンにステップアップしたから説得力があるわけで、雑サスのモンキーにまかり間違ってダブルウィッシュボーンが採用されちゃったらどうでしょう。それはもはや「バイキンマン退治にエヴァンゲリオン初号機を投入する」くらいのミスマッチであり、ネルフ解体まで視野に入る暴挙といえます。

このダブルウィッシュボーン方式の採用と共に「ステアリング軸を操舵軸と別に設けてボールジョイント付のアームを伸ばして操舵する」というラジコン好きに刺さりそうな操舵機構も採用。これによってステアリング軸を手前にグッとオフセット。これにつられてインパネがビックリするほど手前に来ました。これはすげぇぞ。もう中型バイク並みに近い。

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(私のF6Bのメーターパネル。大きくプルバックしたステアリングの可動範囲を確保するためメーターパネルを逃がした結果、かなりの距離が開いています。スイッチ類を手元に置けるスペースがないので、カウル横などにスイッチが集約されて操作しにくい。ただ、それが戦闘機みたいで萌える!という人もいる。)

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(新型ゴールドウィング。ハンドルからメーターパネルまでのクリアランスが一気に詰まってます。ステアリング軸を手前にオフセットしたため、ステアリングのプルバックは最小限。ステアリング周囲の空間に無駄な逃げは一切不要となりました。ステアリング軸上のスペースにもスイッチ類を置き放題なので、操作系の集約にも一役買ってます。)

新型はインパネを直接指でタッチする操作機能がありますが、前のゴールドウィングでは遠すぎて危ない。しかし新型なら楽勝で手が届くので、操作性が格段に上がってる。インパネが手前に来るということはウインドスクリーンも手前に寄せられるので小顔のカウルでも従来同様の風防効果が実現できる。うーむ。全てが論理的に噛み合っております。

サス形式の変更によりストローク部分がタイヤ保持から自由になりましたので、衝撃吸収はセンターに設置された一本サスが受け持ちます。旧型はツインショックで、新型はモノサス。リアサスの例を考えればわかりますが、より正確にかつ滑らかに路面に追従することが予想される。また、旧型のテレスコ式に比べフロント周りの剛性がメチャクチャ高くなっているのは「操舵軸とその支持部の鬼のような太さ」を見れば私のようなアホの子でも容易に理解できようというもの。

このように新型はダブルウィッシュボーンサスの採用により、これまでの問題点を一挙に解決してきました。高度な技術をぶち込んで、骨格から変える大整形。結果的に横寸法で4㎝、盾寸法で5.5㎝のダイエットです。重量配分は改善され、ホイールベースは全長が短くなったにもかかわらず5㎜伸びてる。しかもDCTぶち込んで機能満載フル装備の「ツアーモデル」がなーんにもついてない私の「F6Bよりなお軽い。」これってどういうこと??旧型乗りは一揆おこすぞ!

総括すると、新型ゴールドウィングは6気筒という強烈な武器を維持しながら、それを言い訳にせず、普通のバイクたらんとすることに全力を傾けた。「異形なる巨大エンジンを普通のバイクの形に押し込んでいく」という「極めて当たり前のこと」にありったけの技術を投入しているのです。これは非常に通好みであろうかと。

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(前回に引き続き新旧の側面スタイリング比較。新型がいかにバイクとして違和感ないバランスに近づいているかがよくわかりますね。でも旧型のウーパールーパー感も愛らしくて捨てがたい。)

バイクでは本来搭載すら困難な巨大エンジンを内包しつつも、まるでミドルクラスのようなシルエット。買い手には当たり前のように見えるかもしれませんが、それは普通の常識ではあり得ないこと。DCTや前後進機能が話題になってますが、このスタイリングバランスの実現こそ「新型ゴールドウィングの真の恐ろしさ」であり、ホンダの技術力がわかりやすく具現化したものといえるのではないか?と私は考えている次第であります。