今回は旧型オーナーとして新型ゴールドウィングに絡んだ6気筒エンジンについての雑感です。新型の機構的なことには全く言及してませんので、正直知識的には何の役にも立たないブログです。その点はご勘弁ください。

まず最初に一言。

「フルモデルチェンジにあたって新型が水平対向6気筒を採用してきたことを素直に喜びたい。」

モデルチェンジにあたって一番心配していたのは「新型が4気筒を載せてくること」でした。これは4気筒が悪いとか6気筒が良いということではなく、「6気筒を残してくれ!!」という私の純粋な願いからです。


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(現行型のゴールドウィング水平対向6気筒。昔マジンガーZのエンディングでZの透視図に萌えていた世代はこういうのにとにかく弱い。)

必要性だけで論じるとバイクに6気筒なんていらないんです。6気筒積んでいる車がほとんどない状況下で、なんで車より贅沢なエンジンをバイクに積む必要があるの?と言われると、「そんな必要は全くないですぅ・・」としか答えようがありません。4気筒マルチで十分。それどころか現状では4気筒ですら無駄で「3気筒、2気筒で十分でないの?環境に悪さをするエンジンなぞ無駄無駄無駄無駄ァ!!」というのが世の流れです。

しかしそんな時代だからこそ、かろうじて残ったBMWの直列6気筒とホンダの水平対向6気筒はずっと残って欲しいなぁと思ってます。なぜかというと、この2つのエンジンはピストンの爆発振動が常に相殺されるという内燃機関として理想の形だからです。しかし、車の世界では高度な電子制御技術により「エンジンそのものの素性をある程度ごまかすことができる」ようになり、完全バランスでなくても十分満足できる状況になりました。「すっぴん美人でなくたって、厚化粧で美人にしちゃえばいいじゃない!!」ってことです。でもどんなに化粧で美人にしても、やっぱりすっぴん美人のナチュラルな感じを出すのは至難の業で、ある領域で「ああ・・化粧だな」ってわかってしまうのが人間の感性の良いところでもあり悪いところでもある。

じゃあ今現在、日本ですっぴん美人のエンジンを購入しようとすればどうなるのか??車の世界では最低価格はこんな感じになります。

BMW M2 クーペ 直列6気筒ツインターボ    802万円
ポルシェカレラ    水平対向6気筒ツインターボ 1244万円

※V6は完全バランスではないので除外してます。

「なにこれ?クッソ高ぇ!!ふざけろ!!しかも全部ターボつきじゃね??」

そうなんです。国産はとっくに絶滅で、最後の砦ともいえたBMW3シリーズやボクスター、ケイマンが軒並み4気筒になっちゃったので、6気筒エンジンは上位モデルに移行し、価格が爆上げになってます。ターボエンジンの感覚的なマイナス部分を電子制御でごまかす制御技術も向上したので、効率良くパワーを出せるターボが「いらね!」と言ってももれなくついてきてしまう。

これに対しバイクはどうか?新型ゴールドウィングの価格は273万円、BMWの直6エンジンを乗せたK1600GTは309万円です。バイクとしては異常なくらい高いですが、6気筒エンジンとしては破格の値段といっていいでしょう。(そう思うと一時のF6Bの200万円割れはホンマ大バーゲンセールだったわけですね。)

メーカー間の競争が極めて激しい自家用車の世界では高級車がどんどん4気筒ターボになり、6気筒車の生き残り自体が極めて困難な状況ですので、もう完全バランスの自然吸気エンジンはバイクにしか残らないと思います。ではなぜ車において6気筒エンジンの生き残っていけないのか?それは衝突安全性や商品バリエーションにおいて尺が長い6気筒はめちゃくちゃ不利だからです。いくらエンジンが魅力的でも衝突安全性が低い車はさすがに高級車として成立しないし、数十万台単位で売らないとペイしない車の世界で「この車種だけの専用エンジンですぅー」などというシナジー効果ゼロのエンジン開発を株主様がお許しになるはずもない。そんな至極当然の事情で自家用車の世界では6気筒エンジンはみんな消えてしまったわけです。

そのような事情の中で新型ゴールドウィングは水平対向6気筒エンジンを維持して登場いたしました。エンジンマニアは泣いて喜ぶべき。

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(新型の6気筒エンジン。旧型からさらに余剰スペースを排除したようなみっしり感。衝突安全性に配慮するあまりスカスカになった四輪のボンネット下とは対照的。そのつまり具合は整備士が白目になるレベル。)

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(プロレスファンにはおなじみ永田の白目。私が新型を重整備しなければならない羽目になったら、まず間違いなくこんな風になる。)

先にも述べましたように、環境適応が難しいこの時代に少量生産の単一車種のために特別なエンジンを残すことは容易なことではない。ハーレーが販売不振により歴史に目をつぶってでもダイナとソフテイルを統合せざるを得なかったことからもわかるように、不合理な選択は経営体力のある企業が腹をくくらないとできないものです。多品種少量生産のバイク且つホンダがGLを別格扱いにしているからこそ許されるといってもいいでしょう。今はこのホンダの決断に心から「ありがとう」と言いたい気分です。

さて、ここまで現代における6気筒エンジンの肩身の狭さを語ってきました。では6気筒が最高なのか?というと、6気筒は必ずしもバイクに適したエンジン形式とはいえません。エンジンの横幅があり、軽量コンパクトとはほど遠く、フリクションが大きくてそれなりの排気量を要求するし、部品が多くてコスト高だし、クソみたいに重いので運動性の面でも悪さしかしない。調教も大変だし、乗るのはみんなベテランライダーで口ウルサイことこの上ないと思います。
 
しかし、こと商品力に関していえば「6気筒エンジン」というのは相当な破壊力があります。「人と違うモノが欲しい。」「人よりいいものが欲しい」という人間の特性により資本主義は動いています。このため高額を要求するフラッグシップは「量販バイクと明らかに違い、明らかに良いものだとわかる」特別なしつらえをする必要がある。

「スゲぇ・・これは普通じゃない・・」と買い手に思わせる「特別感」がないと高付加価値商品は成立しないわけです。そしていつの時代も顧客を最も簡単に納得させることができるのは単純な「数字のデカさ」。排気量がデカい、気筒数が多い。車体がデカい。トルクがデカい。これらの記号性が「最強厨」を惹きつける。

私のように中年になり、骨折やら打ち身やらで何度も痛い目を見てしまいますと、昔のようにギリギリまでバイクを寝かせて「滑りゴケ、握りゴケ上等じゃぁあぁああああ!」というようなジュラシックな走りをするなんて到底できません。もはや恥も外聞もなく、経験で身につけた操作技術でデカいバイクにヒタリと取りついて、樹上生活のコアラのように「無害に無難に穏やかに」一日を過ごしていく。ということになる。

しかし、そんなバイク版樹上生活者ですら「最強厨的スケベ心」だけは残っていて、「許されるなら風に激しく揺れる細い枝ではなくて、屋久杉のような巨木に取りつきたいものだ」と考えますし、「見たことのない変わった木に取りついてみたいわぁ・・」などとも思うわけです。

そう、枯れて変態度が高まり、普通以下の運動能力になってしまったロートルライダーかつスケベ心が捨てきれない私のような半端野郎には「普通じゃないバイク」が必要なのです。多少運動性へのマイナスがあっても、こっちの運動能力も十分衰えてるんだから問題ない(笑)。

水平対向6気筒など今やエンジン界の松茸か白トリュフか?というレベルの希少性なのですから、それと引き替えなら大概のデメリットは許していいかな?と思っちゃう。

じゃあ実際このエンジン「乗ってみるとどうなのよ?」といいますと、旧型GLの場合でいいますと、4気筒に比べ絹のように滑らかに回るか?というとそうでもない。これはゴールドウィングがどうのというより、今の4気筒マルチがスムーズすぎるのです。

ただし多気筒エンジンの特性によりアクセルの開け始めや閉じたときの挙動は4気筒より穏やかで品がある。単気筒なら一つのシリンダーに火が入ればその時点でパワーが出てくるのに対し、6気筒は6発全部に火が入ってから真のパワーが出てくる構造です。多気筒によるフリクションロスもそれなりにあるため、6発すべてがパワーを生み出すまでは少し鈍さと重さがあり、それが穏やかさにつながるわけです。

そして一度全てのシリンダーに火が入ると、シリンダーの爆発間隔が狭いのでトルク変動が少なく、パワー感は非常に緻密なものとなりますし、水平対向6気筒の構造上の特性により、一次振動、二次振動、偶力振動全てを打ち消し、高回転まできれいに回りきります。すっぴん美人の本領発揮というところでしょうか。

この湧き上がるような回転上昇感とトルクデリバリーの美しさが6気筒エンジンの美点です。一方で荒々しさには欠けるため、覇王色の覇気的なものを求める若い人にはなじまないかもしれません。要は強烈な個性やカドがない。「なんだつまらん」と思われるかもしれませんが、多くのバイクを経験すると、ごまかしのないその美しいフィーリングが望んでも極めて得がたいものであることがわかってくる。

このエンジンに乗るなら、ある程度多くのバイクに乗って達観してからの方が良いと思います。雑誌にあるような男臭い世界や、走りを追求する世界を通り過ぎて、もう「オレはオレでしかないやぁ・・」と無にかえった頃にゴールドウィングは刺さってくるんではないかと思ってます。

今回はゴールドウィングを通じて私の6気筒に関する思い入れを語ってみましたが、いつも申し上げているように、機械にとってプラスとマイナスは表裏一体。理想的な存在などは一種の幻想です。その点を理解しつつ自分がどの立ち位置で何を重視して選択するか?それを決めるのは購入者の権利でもあり責任でもあります。このブログやメディアを含め、ほぼ何の責任もとらない他人様の意見は参考程度にして、購入にあたっては自分が納得できるような選択をしていただきますようお願い申し上げます。

次回は新型ゴールドウィングの最大の売りであるフロントサスペンションについて少し書いてみたいかなーと思ってます。