今回はナディアの顔の塗装です。

私の美少女フィギュア製作のメインになるのは顔描きです。

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(ピンセットの大きさで顔のサイズ感がわかりますね。)
イメージ 5(下書き。私のような素人はまず下絵の鉛筆書きが上手くいかなくては話にならない。)

人物を描くという点では、美少女フィギュアのカテゴリー違いでミリタリーモデルがあるわけですが、ミリタリーモデルのフィギュアと美少女フィギュアの最大の違いは「顔の質」です。ミリタリーでは小スケールでリアリズムのある顔が要求されるのに対して、美少女フィギュアではリアルなことは全く要求されていない。それよりも「いかに可愛いか、いかに萌えるか?」が要求されてます。

技術的にもミリタリーモデルの方が上とか、そういうことはまったくありません。汚し塗装がメインで総合的にうまく雰囲気が出ていればある程度見栄えがするミリタリー系に対し、「顔を僅かでも失敗すれば終了~」の感がある美少女フィギュアの方がいささかハードルは高いかもしれない。集団の中の個という印象のミリタリーモデルに対し、対象をなめ回すように見られるのが美少女系。ぶっちゃけ美少女フィギュアは模型というより漫画の立体版ともいえるように思います。

同じクォリティで作ったとしても「ルーラー=ジャンヌ・ダルク」のフィギュアはアホのように売れるけど、「キャスター=ジル・ド・レェ」のフィギュアは鼻毛ほども売れないというか発売もされない。(目を突いて遊ぶとか、ごくわずか刺さる人には刺さるかもしれませんが)多くの人が一顧だにしない「ムッハーでキモ系なオッサン」のフィギュア塗装に全力投球などもう基本的に「無駄すぎる」と感じる人も多いわけです。ミリタリー模型でたとえると「1/35のネコ車」を作るみたいなものかも。

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(模型と全く関係のないイラスト。fate/zeroからキャスター・ジル様。同じアルトリア顔のジャンヌダルクとアーサーペンドラゴンを人違い。敵国の王に「聖女ヨォォォ!!」と絶叫しながらガブリ寄っていく聖杯戦争版変質者。最後は聖剣光線で成敗。私は狂気の人物は嫌いではありませんし、描くのも好きですが、多くの人には刺さらない。ちなみにコレは鉛筆絵、アレンジはミリタリーモデルに近い。たまにはこういう絵を描くのも模型修行になります。)

ことほど左様にフィギュアの人気度は原型となったキャラクターの人気、萌え度に比例します。それが完成品フィギュアの注目度に大きく影響するのです。さらに美少女フィギュアはミリタリーよりその萌え度のふれ幅がかなり広い。ミリタリーで「ドイツ人のヒゲ面しか受けつけねェ」という人は少ないと思いますが、fateで「アルトリア顔しか受けつけない」という人は割といる(そもそもヒロインの多くがアルトリア顔なんですが・・)ような気がします。

結局フィギュアは完成品の技術単体だけで評価されるわけではない。作り手のフィギュア選択から吟味されるし、完成品の微妙な表情のニュアンスや塗装色の機微が受け手の評価に直結します。それがミリタリー・フィギュアと美少女フィギュアの全く異なるところだろうと思うのです。

技術的なことに目を移しますと、ガレージキットは漫画の立体版といっても、旧態依然とした職人の世界がなお残っています。漫画やイラストの世界では近年コンピューター上で絵を描くのが全盛となっていて、絵を描く技術がつたない人でも気に入った絵を「トレース」して、自分なりにアレンジすれば、かなりのレベルのものが描けてしまうという状況になってます。体なんて道行く人を写真に撮って、写真をトレースすればある程度カッコがつく。うまく描きたいんならそれで十分ともいえるでしょう。
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(ジル繋がりでジャンヌ・ダルク。言葉遣いは礼儀正しく聖女然としているものの、生前より旗で敵をシバキながら突撃するのが基本戦術の脳筋女子。ジルの目を突いてあげるのがコミュニケーション。それにしても、英国の王のアーサー・ペンドラゴンと、英国からフランスを救った救国の聖女の顔が同じってのはいかがなものか。武内が描き分けを面倒くさがったのがジルの悲劇?なお、これはペン入れ済の絵。アレンジは当然美少女フィギュア。)
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(鉛筆下絵。私はまず鉛筆で下絵を描いて、それをスキャニングしてパソコンに取り込んでペン入れをします。この下絵に他人の絵を引っ張ってきて、それをなぞって仕上げれば「トレース」ということになります。トレースはアレンジしたところで基本コピーです。練習で描く分にはいいですが、やはりトレースをオリジナルの絵として提示するのは避けたいところです。)

これに対してフィギュア製作には「トレース」という概念はありません。全てが模写になる。それでは、他人の絵を横に置きながら自分の手で模写するのと、元絵をパソコン上で透かしてトレースするのはどう違うんでしょうか?

トレースはいわゆる人の手によるコピー。コピー機が人に置き換わっただけともいえます。基本下絵を透かしてなぞるわけですから、かなりの確率でトレース元をほぼ正確に再現することができます。しかし模写はそんなに甘くない。

「似せて描いたとしても、そう簡単には似ないのが模写。」

何故似ないのか?理由は簡単。「トレースには技術はいらないけど、模写には技術と対象認識力がいるから」です。正直トレースしたものの方が出来がいいし、お手軽にしっかりとしたものが仕上がる。しかし、制作者の人物描画の技術レベルは「トレース絵ではわからない」のです。

トレースが不可能である美少女フィギュアの顔はごまかしがききません。デカールを貼り付けるという上級技がない限り、現物に筆で描いていくわけですからトレース絵のように「透かしてなぞる」なんていうことはできません。二次元の対象を認識し、それを立体化して、自分の目と認識力と美意識、筆力を全投入して描く真剣勝負なのです。そこには近道などなく、ただひたすら地道な精進があるのみです。

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(ガレキフィギュアや模型にトレースという概念はありません。つまり全てがその人の技術。腕一本のガチの世界です。)

なお、ある程度自分でイラストを描くようになると、「完全に模写するより、自分アレンジを加えた方が描きやすい。」ということがおきます。完全に模写してしまうと、他人の土俵で相撲を取るような状況になり、なんとなくうまくいかないし、自分の萌絵基準とも合致しなくなります。やがては模写すらやめてしまって、原型に直接、自分の美意識を投影するようになっていくわけです。

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(髪の毛や装飾品をつけてみてのバランスを確認はお約束。欠かすことはできません。)

まぁ、ことほど左様にフィギュアの顔というのは難しく、語り出すと果てのない世界であるわけですが、今回はここまで。ナディアの顔描きの報告でした。

次回はジャングルのベッドかな??

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