今回はミルウォーキーエイトを搭載したソフテイルの超個人的な感想、試乗インプレです。

前回のブログでは旧ダイナ・オーナーとしてダイナ消滅に対する感慨を綴ったわけですが、先ごろ新型のニューソフテイル・ストリートボブに試乗する機会がありましたのでそのインプレをしたいと思います。

まぁインプレと言ってもショップの試乗コースはほぼ決められており、試乗できるのもわずか15分程度。「それで一体何がわかるん?」といわれると「・・なんにもわからんです。」と正直に答えたい。ポジションに慣れた頃に試乗が終わるような距離を走ってインプレなど本来は片腹痛いことであります。

ハーレーみたいなバイクは一日借り出して、200キロか300キロ走ってようやく表面を撫でるくらいの評価ができる。そのバイクにつき10割に近い評価をしようとするとノーマル状態でじっくり1万キロくらいは乗らないと、信頼性や整備のしやすさなどもわからないし、隠れたアラも見えてこないので、どうにも評価は定まらないのではないでしょうか。

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(試乗車のストリートボブ。ほぼ黒一色。エンジンフレームを共用化するニューソフテイルファミリーの中では価格が安く、超お買い得。)

んでもって、インプレを書こうとしたとき、この新型ソフテイルは非常に書きやすい。とりあえず性能だけで言うなら何も考えず褒めておけば間違いない(笑)。ダイナに関しては実に久々のフレーム刷新で、軽くなってパワー&トルクが向上し、剛性も確保され、サスも良くなってるわけですから「体感や性能面の評価は上々」に決まってるわけです。機械はこの辺決して嘘をつきません。

まずは短距離試乗で私が感じたミルウォーキーソフテイルの「ココがいい」というところを箇条書きにしてみましょう。私ですらすぐに気がつくので誰でも一度乗れば体感できるのではないかと思います。

・足つきが非常にいいというか良すぎる位なので、立ちゴケする気がしない。
(ただ、乗り入れなどで腹打ちしないか、ちょっと心配です。)

・低く構えた車体にも関わらず、そこそこバンク角がある。

・重心が考慮されており、腰高感がなくて、以前のダイナより取り回しがしやすい。

・エンジンがキルスイッチONでかかるのが超便利。

・サスペンション、特にリアの接地感、安心感が違う。

・フロントサスの動きは国産バイクと比べても違和感のないレベル。

・リアサスの調整がエンジン後方のダイヤルで簡単にできるのが素晴らしい。

・エンジンは全領域においてスムーズ且つマナーが良くなり洗練された。

・交差点でもあまり熱いとは感じない。

・大排気量Vツインの良さは十分残っている。

とまぁいいところばかりですねー。おそらく雑誌の記事もこんなところを褒めるのでしょう。フレームの良さは低速街乗り15分程度では判断のしようがないのでノーインプレです。

昨年スポのロードスターを試乗した際にも思ったことですが、サスペンションは実に良くなりました。フロントもリアも以前のハーレーのプロダクトがなんだったの??ってほど節度をもって動いてます。(というか、リアはモノサスになったのでちゃんと動いて当たり前なんですが・・)私の購入した2009年式ダイナの「はぁん??この価格でこのサスかっ?いくら車重があって、アメリカ人握りゴケしやすいからって、柔らかくすりゃあいいってもんじゃないぞぉ!!」みたいな感想から「おお!!やればできたのか!!」というものになり、エンジンも排ガス規制のせいで薄すぎて2000回転以下で悶え苦しんでいたTC96エンジンとは違い、低速も高回転の延びも十分あるやないですか。ええ素敵です。

エンジンについてはTCと比較して細かい部分の違いを書こうとすればいくらでもかけるわけですが、進化したといっても「大排気量Vツイン」という枠組みそのものが変わったわけではありません。同じメーカーの同形式のエンジンですから、他のエンジン形式に乗り換えたほど強烈な印象の変化などあるはずがないのです。

例えば他メーカーのバイクに乗っていてハーレーのエンジンに特段の思い入れがない人であれば、「ああ・・全体的に良くなってブラッシュアップされましたよね。」くらいの感想ではないでしょうか?

カワサキの大排気量4気筒エンジンなども昔からずーっと進化し続けていて、搭載モデルによって、びっくりするほど味わいも性能も違うんですが、興味ない人は「ああ・・カワサキの4気筒だね。ふうん。」で終わるってのと同じ。

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(ストリートボブ正面。試乗車なんでしょうがないんでしょうが、この巨大エンジンガードはなんとかならんもんか・・)

バイクって2気筒だけでも、Vツイン、Lツイン、パラツイン、フラットツインなど、メーカーによってよりどりみどりで個性的なものがたくさん選べますので、雑誌の試乗記などではいろんなエンジン形式を乗り比べてインプレしています。そんな中にあって空冷Vツイン、しかも同メーカーという縛りをかけて、極めて狭い中で新旧の違いを指摘しても、それがどんだけ大きなものなのよ?という部分もあるわけです。

同形式のエンジンである以上、今の愛車から乗り換えを選択するほど劇的な違いがあるわけはないと感じる。雑誌のインプレを見るとナニカトンデモナイ差があるように感じたりするわけですが、TCエンジンだって、熟成に熟成を重ね、多くのライダーの支持があったから売れていたわけであって、ミルウォーキーが出たから「TCエンジン全否定」なんてコトになるわけがない。また、逆にハーレーのエンジニアが現代の技術を駆使して自信を持って送り出してきた「ミルウォーキーエンジン」が悪いわけもない。

ハーレーはよく雑誌の特集なんかでナックル、ショベル、TC、ミルウォーキー、歴代エンジンの中でどれを選ぶ?なんてのをやっているんですが、安定性や整備性を度外視して、エンジンの風味だけで選ぶのであれば「好きなのを選べばいいんでないか?」というのが私の正直な感想です。正常進化している同メーカー同形式のエンジン同士でああだこうだ言ってても、バイク業界全体を見渡せば「小さな集団の中で起こっている内ゲバ」みたいなもの。元中古バイク屋から見ればいささか不毛な議論です。

ちょっと目線を高くすれば同じ2気筒でも、モトグッチの横置き90度VツインやBMWのフラットツイン系、ドカのLツインなども予算内で選択肢に入ってくるし、さらに目線を上げれば、単気筒や3気筒、4気筒、6気筒のマルチエンジンなどもある。バイクってのは車と違って多彩なエンジン形式の宝庫ですので、V型2気筒にこだわる必要はなく、いろんな選択肢があるわけです。しかも、ハーレー買えるような人は財力的に何でも選べるわけですから・・・。

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(リアサスのプリロード調整は、この巨大つまみで。随分便利になってます。)

性能という基準軸で絶対評価を行うと、まったくもってTCダイナはミルウォーキーソフテイルに勝ち目がない。でもそれは「スポーツスターがヤマハのボルトにまったく勝ち目がない」というのと同じ構図。そんな中で現実にボルトを選ばず、スポーツスターを選ぶ人も相当数いるわけです。ではスポスタを選択した人はバイクを見る目がないのか?おそらくそれは違うでしょう。

クッソ速い国産リッターバイクを多数乗り継いできたライダー達がハーレーを選ぶのは、ハーレーに国産バイクにないスタイリングや価値観があるからです。そういう部分を重視したとき、パワーのあるなしよりも「広大な大地での長距離移動の歴史を持つアメリカの考え方や雰囲気、文化が色濃く出ていること」が大事なのではないでしょうか?

「ああ、、こんなセカイがあったのか・・確かに国産にはこういう味わいはなかったなぁ・・」と思わせる独特の世界観をハーレーはもっており、スピードに醒めたライダー達が、隠居がてら日本で乗るバイクの選択肢として、ダイナはそれなりにベターだったと思うわけです。

今回のニューソフテイルはいろんなところが親切になっていて、よく走るようになってます。ただ旧ダイナから乗り換えを真剣に考えるほど新しい価値観の提示は正直ないと感じる。細かいところは便利になってはいますが、バイクはもともと不便なもの。便利さがバイクに必要不可欠な価値か?といわれれば、それはバイクの核心部分ではない。

逆に「現代の信頼性」「いささか古めかしい設計とテイスト」が同居した旧ダイナが「自分の求めてるものに近いかな・・」というのが正直な感想です。実際今年でダイナに乗って8年目を迎えますが、飽きたとか食傷した感じは全然ない。満足してます。私は「新車で購入できる旧車的なもの」が好みなんでしょう。「いささか古くさいテイストが自分にとって大事なのだ」ということは以前ミルウォーキーエイト版ストリートグライドを試乗したときも感じ、ダイナのチューニングの過程でも気がついていたことです。

そういうことを踏まえた上でニューソフテイルはどんな人にお勧めか?について私見を申しますと、

①新ソフテイルに魅力を感じた人で、購入後バイクにいろいろ手を入れていくより「当初から完成度の高いものが欲しい」という方。

②旧ダイナのプロダクトに特段こだわりがない方。
「ローライダーは2本サス」とか「ダイナの歴史ががが・・」というような部分にこだわらなければ、横からのスタイリング自体はソフテイル・ローライダーも悪くないと思ってます。

逆に旧ダイナ乗りの方は、新しいプロダクトについて、じっくり考えて、何回も試乗して、自分が「ハーレーの何を重視するのか?」「ハーレーに何を求めているのか?」という点をよくよく判断してから決めた方が良いのではないか?と感じてます。「おっ、新しいプロダクトが出た!」というだけの理由で購入すると、性能や便利さに慣れてきた頃に「情緒的な面で旧ダイナが恋しくなる」可能性があります。

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(こちらはニューブレイクアウト。ストリートボブに対して価格が跳ね上がるだけあって、コストのかかるメッキ部分も多くなり、質感はいい。)

まぁ・・ここまで好き勝手書いてますが、私は公道事故9回のヘボライダーの成れの果てであって、しかもどのバイクメーカーも特段ひいきにしているわけでもない乾いた干物みたいなノンポリシーの奇人ですので、私と逆の価値観を持つ方も多数いるはず。

これを読んで頂いている皆様方と私が決して同じ感性であるはずがありません。特殊なのは多分私の方。ですから、一個人の見解として返す返すも参考程度に読み飛ばして頂ければと思います。