2018年度のハーレーのラインナップからダイナが落ちました。ミルウォーキーエイトを全てのビックツインモデルに採用するにあたりダイナフレームが消滅したわけです。

ミルウォーキーエイト登場とダイナフレームのラインナップ落ちは「ハーレーの一つの時代の終焉」だと思います。

私はメーカーの動向についてはある時期から諦観しているので、ダイナ消滅にさほどのショックはありませんでした。ハーレーのニューモデルが気にくわなければ「ハーレー以外の選択肢を探す」「程度の良い旧モデルの中古」でいいという割り切った考え方をしています。

「メーカーやブランドに自分なりの思い入れを抱き、一喜一憂する。」のがファン心理だと思いますが、私はメーカーと消費者は「根本のところで相容れない」ものだと考えています。

メーカーは「消費者のため」「従業員のため」「株主のため」「経営陣のポイント稼ぎのため」の究極のバランス点として「これが最善」と考えるプロダクトをデリバリーしてくるわけで、ユーザーオンリーではないという点で、そもそも見ている方向が少しずつずれてくる。

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(ハーレーはアメリカの道で育てられ、それに特化したことで強烈な個性と独善を手に入れた悪女でしたが、それがグローバル化の流れの中、気の効く良い妻に進化していく。いいのか悪いのかは個々のライダーの価値観によりけり。)

メーカーのプロダクトが正しいかどうか、それがユーザーにどう映るか?というのは、最終的にそのモデルが「売れるかどうか」「顧客に刺さるかどうか」で冷徹に評価される。顧客は常に審査員であり、製造過程の段階で口を出すのは経営者です。

そして経営者は株主から「ねぇねぇダイナってさー、全然売れてないしさー、利益出てないしさー、古くさいしさー、いつまで続けるつもり??」といわれてしまうと、それに対して明確な反論を用意しない限り、翌年度の株主総会を乗り切れないので、ある程度動きを拘束されてくる。そして、今のハーレーの収益状況で株主が経営陣にどんな注文をつけるかは、十分予測が可能です。

そんなメーカー側の事情はどうあれ、出てきたプロダクトを我々がどう受け止めどう評価するか?は顧客が持つ絶対の特権です。がんじがらめのメーカーの都合など知ったことか!バイク選びにあたっては、そんなものは真っ先にゴミ箱直行です。

こっちは汗水垂らして稼いだ金で自腹を切るわけですから、自分の趣味趣向、思想、財力を総動員して選ぶのみ。私は乗り換えが過ぎてこじれにこじれ、イマイチまっすぐプロダクトを見ることができない「邪眼ライダー」になってますので、私の目線や意見はメーカーや皆様の参考にはならないでしょうが、今回のラインナップ整理について、私なりの意見を述べたいと思います。(・・いつにも増して前置きが長い・・・)

今回のソフテイルを見て、最初に感じたのは「ハーレーはもうアメリカだけを走るバイクを作ればいいという会社ではないのですね」ということ。TCの開発当初、ハーレーは自国の道路事情をメインに考えてバイクを作ってれば良かった。しかし今はそうはいかない。ここ20年で世界各国に販売網ができ、これからも世界戦略を続けていく。そのためのバイクを作らなくてはならない。

販売店の声を聞き、各国の道路事情を考慮すれば、以前のように「ブレーキ性能そこそこ」「コーナーは多少癖があっても問題なし」「直進最高」というアメリカ情緒の濃いプロダクトでは戦線を維持できないと判断したのでしょう。

そこで、ハーレーはグローバル市場で戦えるようソフテイルの性能を全方位で大幅に底上げすることにしたのだと考えています。新しいソフテイルフレームはかなりまともな方向に進化している。リアのモノショック化によりハーレーの弱点だった後輪の接地性は大幅に改善しているはずですから、これだけでも相当安心して乗れる。フレームも剛性感が上がり、しっかり感が増しているはずですし、フロントの動きのマナーもいいんだろうなぁと想像してます。

そして、その結果「スポーツ専用モデルとして、ダイナを差別化する必要はなくなった。」ということなんでしょう。モデル整理はコストダウンにもなりますし。

ですから、正しく申しますとこれは「ダイナ消滅」ではなく、「ダイナとソフテイルの統合」というべきなのだと思います。

しかし、そのような事情を考慮したとしても「ダイナモデルの名称をソフテイルに移行したのはいかがなものか。」と言わざるを得ない。

理論的にどう説明をつけようが、こんなもんは最後に「顧客が納得するかどうか」です。ソフテイルにダイナのモデル名をつけてしまったら、ダイナのオーナーはどう思うか?ダイナ乗りはこれまでソフテイルとはそのあり方を明確に線引きしてきたはずですし、ソフテイルのオーナーもダイナに対してそうであったと思います。

でも来年からはみんな仲良くソフテイル。ニューソフテイルのオーナーの方々に「おっローライダーですねっ!僕もなんですよっ!!」って気さくに声かけられたりする可能性がある。そしたら気の弱い私は「そ・・そうですねぇ~。えへへぇ~」とへらへら笑いながら、くるりと背を向け目を細めつつ「・・ナニカチガウ・・」とつぶやくことになる。

ソフテイルのオーナーはオーナーで統合されたダイナモデルに「このニワカ・ソフテイルが・・」という気分になっちゃうのではないだろーか・・。

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(ハーレー2018年モデル。ソフテイル・ローライダー。ぶっちゃけバンク角を確保してローライダーのアイコンを乗せたソフテイル。でもそれでローライダー乗りは納得できるのだろうか?)

ソフテイル・ローライダーという名称を聞くにつけ、「ハーレーにとってローライダーのアイデンティティって何?」と疑問を感じる。「ソフテイルだけどローライダー風味ならローライダーなんです。ヘッドライトバイザーついてるし。タコメーターもあるでしょ。」という理屈も立たんではないですが、ハーレーが認識してるローライダーの定義って「そこなのかー!」と、連続秘孔打ちしたくなる。

オーナーにとってはダイナの廃止ですらショックなのに、「はい今日からソフテイル❤」なんてダブルショックもいいとこです。しかも実質、同じフレーム、同じエンジンで着せ替えだだけなんて雑すぎる。やがてはワイドグライドあたりもソフテイルで出てくるんでしょうが、既存ダイナ乗りにこのままで受け入れられるか?というのは分の悪い博打なのではないでしょうか。

メーカーにとっては一商品でも、オーナーにとってはバイクは分身のようなもの。気持ちや思い入れは重い。長年続いたダイナブランドを消し去った上、出自違いの別モデルにその名を乗っけるということがダイナ乗りに理解されるかというと、ちょっとむずかしいんではないかと。

今回のモデルチェンジによってハーレーは既存オーナーから「空冷メカニズムなどのレガシーにこだわっている割には、モデルの歴史や成り立ちにはエラく無頓着でないか?」というツッコミを受けてもしょうがない。こういうのはプロダクトの出来と全く関係ない概念的なものですので、メカニズムで乗り越えることができません。「たとえ水冷4気筒を積んだとしてもハーレーが作ってるんならハーレーである」と考える人もいれば、「それは既にハーレーじゃない。」という人もいる。それと同じです。

まぁフォローしとくと、こういうことはハーレーに限っておきていることではありません。私はいろんな業界で同様のケースを数多く見せられてきました。その都度愛好家は振り回され、苦悩する。それをみてきたために「ある一定規模の営利企業が作り出すものに過度に思い入れや期待を抱かない」という人になっちゃったのかもしれません。

でもその一方で、メーカーがどんな判断をしたところで私が今所有しているバイクへの思いが冷めることも特段ない。メーカーと私の考えが違うのは当たり前ですし、こんなブログでいろいろ書いても、業界人と私では発言力にズワイガニとロイヤルカリブ位の差がある。故に、そんなことを気に病むことなく、その時々で気に入ったバイクと気楽にお付き合いをしています。

まぁいろいろ書きましたが、いち邪眼持ちライダーのくだらないつぶやきに過ぎませんので読み流して頂ければ幸いです。