もうとんでもない題名ではじまってしまった今回のブログ。「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のパクリですが、題名に違わず品性の欠片もない内容になっておりますので、読まれる方におかれましては、その点、ご理解と御協力をお願い申し上げます。

最近は急に寒くなり、夜だと9℃くらいの気温の日もでてきてますね。

台風以降、急激に気温が下がった感じがしますが、それまでが暖かすぎただけで、もう11月になるんですから当然といえば当然かも。

で、この時期の最大の関心事は

「寒さに耐えていつまでバイクに乗ってられるか?」

ってことでしょう。

寒さへの耐性は個人差や防寒装備にもよるでしょうが、人もバイクと同様、年を経ると基礎代謝の出力が落ちてくるわけです。たまに服を大量に重ね着し「ビバンダム君と化している」お年寄りがいますが、この歳になるとそれもわからなくもない。


私の場合、ネイキッドバイクでツーリングするなら、防寒用着衣はモンベルのももひき+ユニクロの防風ウォームパンツ、バンソンの冬用ナイロンジャケット+フリースで10℃くらいまでが安全圏かな?と思います。もう少し気温が低くても短時間なら大丈夫ですが、防寒については年寄りはライディング以上に安全マージンを沢山取っとかないと駄目なんです。

私が考えるバイク乗りの防寒はとにかく冷えないこと。徐々に冷えてくるという状態では、コンボのガード削りを壁際で食らってるのと同じで、いつかは我慢の限界を超えてしまう。バイクは登山やスキーと違って、激しく体を動かしての発熱はできませんから、冷え初めたら休憩を取って暖を取る位しか体温回復の手段はない。

シートの上で激しくグラインドしたり、グネってるバイク乗りなんて、見るに堪えない。だから普通は冷えたら冷えたままってことになるわけです。安西先生風に言うなら「冷えちゃったらそこでゲームセットですよ」ってことなんですよね。

でも悲しいかなバイクって冷える要素しかない。雨降ってくればモロに濡れるし、冷暖房は一切ない。スピード出せば出すほど風あたりが凄い。寒風はどんなに完璧に着込んでも、僅かの隙間からキッチリ体温を奪っていく難敵なんです。

じゃあガチガチにウェアを固めましょう、といってもそう簡単ではない。バイクにおけるライディングは極めて繊細な全身操作ですから、それに支障をきたすような厚着には限界がありますし、軽く動きやすい防寒着もあるにはありますが、そういうものはおしなべて高いんです。

中途半端な性能では焼け石に水なので、調べているうちにGOLDWINのユーロクラス(約10万円)くらいが欲しくなっちゃう。で、それ買ったから大丈夫かっていうと、そうでもなく、上半身、下半身が暖かくなると、今度は冷たいところに神経が集中して、手の指先や足の指先の冷えが気になってしょうがなくなったりするんですよ。

GSM22750

(ゴールドウィンのEUROロードマスター。ジャケットだけで18万超え。パンツも込みだと30万円。もう目ん玉が飛び出してオヤジ言葉を話しながら歩き出すくらいの衝撃価格。でも布である以上、革と違って一生保つわけではないんですな~。)

そうなると足先にとんがらし入れたり、グローブを厚手のモノしたり、ハンドルカバーがどうのこうのと際限がなくなってくる。高い防寒着買ってしまうと、それを腐らせるわけにもいかず「とにかく乗って元をとらなきゃ」というプレッシャーで後戻りできなくなり、迷走していくことになるわけです。

また、ウェアに依存する防寒にはもう一つ「認識のあやまち」という問題がある。「おおっ今日は暖けーなー。服もちょっと薄着でいいんじゃないかなー、その方が着ぶくれするよりスタイリッシュだよねっ」という緩んだ気持ちから生じる悪夢です。

ライディングにおいては認知判断操作を常に要求されるわけですが、この「認知」「判断」の重要性は防寒においても同じ。ここを読み違えてロンツーに出発すると、「冷凍マグロの気持ちを味わう数時間」が待っている。

これらの問題を解決策として、私が選択していたのが電熱ジャケットです。電熱ジャケットはバイクのバッテリー容量とジェネレーター出力さえあれば、高額な防寒ジャケットを着るのがアホらしくなるくらいの極楽さ。電熱ジャケット、電熱パンツ、電熱グローブの三点セットを装着したときの冬場の無敵感は凄いものがありましたね。

なんせ、「全身コタツに入りながら走っているようなもの」なので、自己の代謝出力が落ちてきた爺ライダーの防寒に関してはこれ以上のアイテムは考えられない。暑くなったら電源切っときゃ良いわけで、体温調節になんの心配もいらなくなる。

「この強まりきった『とある科学の超電熱砲』で俺は余生を生きていく!全ての防寒対策はココに終焉を向かえたのである!!今時布キレで体を守るなど、ボールでビグザムに挑むようなもの!!それはすでに形骸である!あえて言おう!カスであると!!!ぶっははははっはは!!」

などと、陽気に吠えつつ、ひたすら電熱アイテムに依存する日々を送っておりました。しかし、残念ながら、無敵に思えた電熱ジャケットには致命的欠点があったのです。

普段の防寒が完璧であるが故に、万一冬ツーリングの最中に動作不良が起こってしまった場合には、他に寒さに対する備えがない。そうなったら、私のこちらのブログ→【冬物語~地獄変~】のように「トラウマになるくらいの極寒地獄」を味わうことになります。

電熱ジャケットは無敵である一方、1度でもトラブルが起きると生命維持に支障をきたすくらいの深刻な事態に陥る、まさにバイクウェアの原子力発電所でした。メルトダウンしたときは、死を覚悟することになるので、一度凍死しかかった私的にちょっとオススメしずらいアイテムです。
ヤシマ作戦3
(ブログ本文だけでなくイラストにおいても、基本カビの生えたオタネタを連発していく以外の引き出しがない。人によっては全くネタがわからないかもしれませんが、深い意味はないので無視して下さい。)

このように悪戦苦闘を繰り返している過程で、ある日ふと気づく、極寒の中バイクに乗るのは「氷の女王様と行うハードSMプレイ」のようなもんなのではないだろうかと・・。真冬のバイクに防寒服を万全に着込んで挑んでいくというのは、「女王様の鞭が痛いからといって鎧を着込んでいく」ということと同義であり、そもそも無理があるんじゃないか?楽しいプレイをするために、我慢と重装備が必要っておかしくないのか?

「はぁぁああああ!!女王様の容赦ない洗礼で、私が如何に無力なライダーかようやく理解できました!!卑しい小型犬の分際で身の程もわきまえず、電熱ジャケットでイキッていた汚い面の皮に凍てつく波動をたたきつけ、人間椅子としてお使いいただきたくっっ!!!」


「おほぉおおおおおお!!!裸同然で外気に全身をさらすこの惨めさに魂が震えますっ!!罪深く生意気なワタクシめには凍死こそが至上の喜び!もう身も心も股間もカッチカチです!どうか容赦のない調教をぉおおおおお!!そう今すぐ即っっ!!!」

などと叫びつつ「寒さすら快感に変えていく冷感マゾヒスト」だけが、冬のバイク乗りにふさわしいのではないだろうか?と思うわけです。しかし残念ながら、私はマゾヒストでないし、そんな異常性癖倒錯者はこの世にそういないはずですので、結局のところ「寒くならないバイクを選ぶのが一番じゃね。」という結論に辿り着く。
これなら乗り手の認知や判断や意識、モラルなどと関係なく、バイク側で防寒を一手に担ってくれるので、安全安心、絶対確実なんですね。

6気筒という魅力にひかれてF6Bを購入した初年度に実感したのは、どんなに冷たい寒風でも「あたらなければどうということはない」という当たり前の事実でした。

F6Bのバイク離れした超巨大カウルは冬の風に対する絶対的な守りであり、手元から太ももから足から、全方位をカバーし、顔から下については寒風を完全にシャットアウトする。この完全にシャットアウトという部分が凄く大事。だから、路面凍結してる日以外は、アタマ空っぽにしてフツーに冬ツーリングにいけてしまうのです。

SC47系ゴールドウィングを「でかすぎる」と評する人も多いと思いますが、「だからこそ、このバイクは絶対的なのである!」と声を大にしていいたいわけです。


IMGP3898
(圧倒的な防風性能を誇るゴールドウィングのとんでもなくでかいフルカウル。ライダーの全面投影面積を完全に覆い隠すように展開されている。この絶対防御を味わってしまうと中途半端なカウルでは物足りなくなる。これと同レベルの防寒性能を有するのはハーレーのヤッコカウル系とロードグライド系くらいだと思います。)

F6Bの購入により、長らく続いた冬のハードSMプレイは終了し、私の防寒対策の旅はここで終わったのです。

「なんだ長々と書いてきた割には当たり前の結論だな!!」


と多くの方はガッカリされたかもしれません。所詮この世の真実なんて、ちょっと考えればハナからわかってるようなありふれたものばかり。でも、人は紆余曲折しないとその単純な真実を受け入れられない。あらゆる可能性を試してみて、「それ以外の方法がない」と納得できないと、それに従えない生き物なんです。

歳を取ってくると、「いつまでバイクに乗ってられるかな・・」などとしんみり考えたりする。残された時間は案外少ないかもしれない。そんな中、冬も気軽にバイクに乗れれば、バイクを楽しめる期間は大幅に増える。巨大カウルは敬遠する人が多いかもしれませんが、それを受け入れることにより素敵な冬の旅が約束される。

バイクとの付き合い方も防寒対策も、自分のバカさを知り、意地を張らず当たり前の選択に戻る。結局それが解決の一番の近道だったというわけです。